45 看破
早くこの場から立ち去りたいといわんばかりにドアへと向かうスクエアに、ホースが声をかけた。
「スクエア様、でしたらいま馬車を用意しますので……」
「いや、お前はここに残って母さんとリーゼロッテさんの給仕をしてろ。馬車はお前ではなく他の者に出させる」
「……かしこまりました」
スクエアは明言しなかったが、その言葉の裏には、愚鈍なお前に私の世話を任せられるわけがないという意味が込められていた。
そうしてスクエアは部屋を出ていき、リズ達はその背中を見送るのだった。
ヴォクス夫人が小さな溜め息混じりに口を開く。
「……やれやれ、また女性のところに行きましたね」
振り返るリズに、ヴォクス夫人が言った。
「友人と会食に行くと言っていましたが、男性とは限りませんからね。女性の友人も、友人と言えます」
「……ですね」
リズは同意の声をこぼす。どうせそんなことだろうと、半ばくらいは予想してはいたのだった。確証がないだけで。
改めてリズを見ながら、ヴォクス夫人が口を開いた。
「それにしても、リーゼロッテさんには少し驚きました。昨日までよりも、大胆な振る舞いをするようになりましたね」
「あ……」
婚約破棄されるために嫌われる決意をしたものの、こうして改めて面と向かって言われると、やはりリズは恥ずかしくなってしまった。とはいえ、やめる気はないのだが。
「……わたし、決めたんです。普段のわたしのしていることをしようって。相手が貴族だからって、変に取り繕わないようにしようって」
婚約破棄されるために……と、そんなことを明言しては、ヴォクス夫人なら破棄しなくなってしまうだろうから、うまく言葉を選んで誤魔化したが。しかしヴォクス夫人はというと、冷静な目つきで応じるのだった。
「普段の取り繕わない自分を出す、ですか……まるで私やスクエアに嫌われようとしているみたいですね」
「……っ⁉」
「おや、図星ですか?」
「い、いえ、まさか……っ」
即座に否定したが、リズの声は若干裏返ってしまっていた。
(まさか、もう見抜かれちゃったの……⁉)
動揺を顔に出さないようにするのがやっとだったが、手や背中には冷や汗が吹き出してしまっていた。ヴォクス夫人は聡明な人だとは思っていたが、まさかこんなすぐに看破されてしまうとは……と。
「そうですか、違いますか、私はてっきり、私達に嫌われれば婚約を破棄できるかもしれないと貴女が思って、敢えてそうしたのだと思いましたが」
「……っ」




