39 放課後
やはり自分の足で走るよりも馬車は早く、いつもよりも時間が押していたのにもかかわらず、あっという間に学園の正門前へと到着していた。
……が、無論、馬車で来てしまったがためにリズは周囲の学生の注目を集めてしまったのであるが。
「そ、それじゃあわたしはこれでっ。乗せていただいてありがとうございますっ」
ドアから飛び出すと同時に別れとお礼の言葉を言うと、リズはそのままばっと学園の正面玄関へと駆けていった。あまりにも恥ずかしくてリズは後ろを振り返ることができなかったのだが、数秒してから馬車の去る音が聞こえてきていた。
その後……リズが教室に入ったとき、後ろのほうの席が二つ空いているのが視界に入った。あの二人の不良学生の席だ。おはよーとリズに近寄ってきた友達に尋ねると、
「ああ、あの人達? なんかよく分かんないけど、遠い学校に急に転校したとか、うわさになってるよ」
「転校……遠い学校に……」
「まあいいじゃん、べつに。あの人達、感じ悪かったし」
「…………」
リズには彼らが転校していった理由に察しがついた。フランソワーズと同じく、ヴォクス家の力が働いたのだろう。
「それよりさー、聞いてよー」
話しかけてくる友達に、リズは空白になった席が気になりながらも相槌を返すのだった。
そうしていつも通りの学園の日常が過ぎていき、放課後になる。リズが正門前に行くと、案の定ホースが運転する馬車が迎えに来ていた。
「お迎えに上がりました、リーゼロッテ様」
「…………」
毎度のことではあるが、リズはがくりと肩を落としてしまう。周囲を通りすぎる学生達の視線やひそひそ声もいつも通りだ。悪く言われているわけではないのだが、やはりリズは恥ずかしさでいっぱいだった。
「大丈夫でございますか、リーゼロッテ様? お顔が悪いように見えますが……?」
「い、いえ、大丈夫です、体調が悪いとかではなくて……」
いつものようにリズが答えようとしたとき、馬車のドアがバッと開いて、見聞きしたことのある姿と声がリズの視界に入ってきた。
「おおっ、リーゼロッテさんっ、今日もお美しいですなあっ」
両手を広げて大仰に振る舞うのは、二日前にリズに婚約を申し込んだスクエア本人だった。いつもは遊び回っているのに、どういう風の吹き回しか、今日はリズへと会いに来たらしい。
その当のリズはというと、いきなり現れたスクエアにぎょっとびっくりしてしまっていた。てっきりホースだけかと思っていたからだ。




