37 ワトロ家にくだされた顛末
まるで罪人への処罰のようだとリズは思った。もしもフランソワーズの策謀が成功していれば、まさにヴォクス家もリズも危機に陥っていたのだから、当然の報いではあった。
しかしヴォクス家の使用人達のなかには、まだ優しいほうだとする者もいるにはいたが。
「リーゼロッテ様も、やはり生温い処遇だとお思いですか?」
「え……いえ……そんなことは……」
「エリザベス様のお言葉をお借りするならば、『斬首刑も考慮してはいたのだけれど、それだとリーゼロッテさんの心が傷つくと思ったから。フランソワーズの策謀は確かに悪辣だけれど、幸い未遂に終わりましたからね』とのことでした」
「……わたしが傷つく……」
「リーゼロッテ様も被害者の一人ではございますが、フランソワーズ様の件にリーゼロッテ様が深く関わっているのも確かでございますから。自らのせいで人が死ぬことになってしまったとリーゼロッテ様が後悔しないように、エリザベス様はフランソワーズ様に温情をお与えになったのです」
「…………」
もしも昨日、放課後の学園の正門でリズがホースに写真だけ渡して帰ってしまっていたならば……その結末は少しだけ変わっていたかもしれない。
フランソワーズに処罰が下されること自体には変わりはないが、追放ではなく斬首刑に処せられていたかもしれない。ギロチンの前にワトロ家の首が転がっていたかもしれないのだった。
依然、額に陰を差しているリズにホースが言う。それは彼なりの励ましの言葉だったのかもしれない。
「逆に考えるならば、こう考えることもできます。本来、斬首刑を免れ得なかったはずのフランソワーズ様を、リーゼロッテ様の存在がお救いしたのだと。リーゼロッテ様は人の命をお救いしたのだと」
「…………、……ホースさん……」
「……いえ、過ぎた言葉でした。フランソワーズ様はリーゼロッテ様の身を脅かしたのですから。いまの言葉はお忘れください」
「…………」
はっきりとした理由は分からない……なぜそうなったのかは分からないが、なぜか、リズの心に渦巻き、黒雲のように重く垂れ込めていた感覚が、少しだけ、ほんの少しだけ軽くなった気がした。
話題を元に戻すように、ホースが口を開く。
「フランソワーズ様の策謀について、フランソワーズ様のご家族や使用人のほとんどは知らされていなかったようでした。そのためエリザベス様は、処罰をフランソワーズ様と、策謀を知りながら加担していた近衛の使用人のみにくだしました。あくまでフランソワーズ様ご自身の責任であり、事情を知らない者まで巻き込む必要はないと」
「……そうですか……」
「しかし、フランソワーズ様のご家族は娘を一人、僻地に飛ばすことはできないとして、ともに転居することにしたそうです。このまま王都に残っても、ヴォクス家を陥れようとした家柄として、他の貴族家につまはじきにされることを恐れて……という理由もあると思いますが」
「…………」
「以上がフランソワーズ様とワトロ家にくだされた顛末となります。とりあえずのところ、今回の件はこれにて終結を迎えました。リーゼロッテ様のご不安になるようなことは、もうありません」
「…………、……ありがとう……ございます……」
ホースと目を合わせることができず、視線をそらしたままではあったが、リズはお礼の言葉を口にするのだった。




