28 過去の画像
いままでで初めての体験に、ホースは何度もページをぱらぱらとしていく。その度に驚いたり感心したりしているわけだが……そんなホースにリズが声をかけた。
「あの……そろそろいいですか?」
「あ……はい、すみません、ついうっかり……」
ぱらぱら漫画に夢中になっていたホースを見ているとき、リズはまるで子供みたいだなと、つい微笑ましくなってしまっていたのだが……それはリズだけが知る秘密である。
それはともかく、リズは言葉を続ける。
「これが映像の原理ってことでして……ホースさんのその『記録』を読み取る魔法でも、これと同じことができないかなと思ったんですけど……」
リズ自身は詳しいことは知らなかったものの、彼女が元いた世界ではこのような手法で様々なアニメーション作品を作っていた。ただしリズが死ぬ直前の最新のアニメのなかには、CGを使用したものもいくつか作られていたが。
ホースはうーむと神妙な面持ちになる。
「なるほど、これが『えいぞう』というものですか……いわば私達がこの目で見ているものを、可能な限りそのままのように動きをつけて見せるということですね……」
「まあそういうことです」
「このような概念は初めて知りましたが……やれるか分かりませんが、試しにやってみます」
概念といわれるほど大げさなものかなとリズは思ったが、初めて映像を見たのなら仕方がないのかもしれないとも思い直した。考えてみれば、前世の記憶を取り戻す前のリズもまた、映像などという事柄自体思いつかなかったのだから。
ホースが空中に浮かんでいたウィンドウに手をかざす。それまで表記されていた文章が姿を消して、写真のような一つの画像が写し出されていく。
「まずこれが、この写真が記録している過去の画像となります」
そこはどこかの建物のなからしく、豪華な調度品や絵画や彫像や剥製などが置いてあった。そこにあの男女の不良学生が立っていて、二人の前のソファに一人の人物が優雅な雰囲気を醸しながら座っていた。
「この人って……⁉」
リズがびっくりした声を出す。あらかたの学生はもう下校してしまったのだろう、周囲には他に人の姿はなく、彼女の声を聞いたのはホースだけだった。
「フランソワーズさん……⁉」
「……そのようですね」
空中の画像に映し出されていたのは、スクエアの三人目の婚約者である理知的な女性……出会った直後にリズに唐辛子入りの紅茶を飲ませようとした、あのフランソワーズだった。
「なんでフランソワーズさんが……?」
「……少し前から見てみましょう。今度はエイゾウとして」




