27 ぱらぱら
数秒待っていると、窓枠のようなもの……ウィンドウに文字の羅列が表示され始めた。その文字列に視線を動かしながらホースが口を開く。
「なるほど、この写真を撮った者の名前はジャックといい、開発されたばかりの小型携帯式カメラで撮影されたようです。他には……」
「…………」
リズはピンと閃いた。
「あの、ウィンドウの文章をいちいち読むのって大変じゃないですか? この写真みたいに、画像や映像として出力することってできたりします?」
「画像……写真のように二次元媒体として写し出すということですか?」
「そうですそうです」
リズはこくこくとうなずいた。ホースが答える。
「魔力消費はより多くなりますが、確かにそのほうが分かりやすいですし、リーゼロッテ様も見ることができますね。しかし、画像は分かりますが、えいぞうとは……?」
この異世界では、ようやく写真が登場して、貴族や金持ちの間で普及し始めているのだ。『映像』という概念を知らないのも無理はなかった。
リズは説明を試みる。
「えーっとですね、簡単に言うと、写真や画像を何枚も重ねたり並べたりして、高速で動かして、写真や画像のなかのものが動いているように見えることです」
「……はぁ……?」
「ちょっと待ってくださいね」
リズは鞄から一冊のノートを取り出す。授業で使っているノートであり、そのページの端には小さな絵が描かれていた。不真面目にも、授業中に描いていた絵だった。
「この絵の部分を見ててください」
「…………」
小さなイルカの絵であり、上手いなとホースは思った。まさかリズが授業中に描いているとは、彼は気づいてはいないようだったが。
そしてホースが見つめるなか、リズはページの端をぱらぱらとめくっていく。それぞれのページの端に、微妙に異なるポーズをした小さなイルカの絵が描かれているわけだが……ホースの目線からは、まるでその小イルカが元気に動き回っているように見えた。
「……っ……⁉ ⁉⁉⁉⁉」
ホースが目を丸くして、愕然とした表情を浮かべた。小イルカの絵とリズを何度も交互に見て、心底驚いた声を上げる。
「凄い……! リーゼロッテ様は絵の動物に生命を与える魔法が使えるのですか……⁉」
「えっ⁉ いえっ、違いますけど……⁉」
ホースがあまりにも驚いた顔をしたので、逆にリズのほうも驚いてしまった。まさかこんなに驚かれるとは思わなかったのだ。
「これはそういう、絵が動いて見えるようにする手法?方法?なんです。微妙に違うポーズの絵を描いて、それを高速で動かすと、絵が動いて見えるんですよ。目の錯覚?みたいなものです」
「…………」
リズから手渡されたノートの端を、ホースも慣れない手つきながらぱらぱらとめくっていく。やはり小さなイルカが元気に動き回っているように見えて……それを自分の手で再現していることに、ホースはよりいっそう驚きの表情を濃くするのだった。




