26 ステータス
「え、エリザベス様からの命令を無視したら、わたしがこの学園にいられなくなるってことですかっ?」
「私も御者としての仕事をクビになります」
「……っ」
「ですので、どうか帰りのお迎えだけでもお乗りください」
「……はぁ……」
リズはがっくりとうなだれて、溜め息をこぼしてしまった。権力者の言うことに逆らえない自分が恨めしくなる。
励ましたり慰めたりしているつもりなのだろうか、ホースがリズに言ってくる。
「……朝のお迎えについては、明るいし人も多いので大丈夫だろうとのことでした」
「……? よく分かりませんけど、とにかく朝は来ないんですねっ?」
「私としては朝もお迎えにあがりたかったのですが……」
「大丈夫ですっ」
リズは断固拒否するのだった。
(朝まで恥ずかしい思いしたくないしっ)
そう思いながら、ついつい口から愚痴が漏れてしまう。
「……はぁ……ホースさんといると、ほんとにろくなことがない……。今日の朝だって……」
「何かあったのですか?」
「昨日のホースさんとの買い物を写真に撮られて、あろうことかホースさんと恋人だなんて疑いをかけられたんですよっ。ほんとっ、いいめーわくですっ」
「…………」
言ってから、ホースの神妙そうな顔を見て、リズははっとしてしまう。ホースの気持ちを傷つけたと思ってしまったのだ。
「あ、いえ、ホースさんは良い人なんですよっ。でもちょっと年が離れすぎてるというか、せめて二十歳くらいじゃないと恋愛対象として見れないっていうか……あと世間知らずなのも困るので、もっと庶民の暮らしのことを知ってもらわないと恥ずかしいというか……」
両手を振りながらリズは言うが、ホースは神妙な顔を崩さない。
……もしかして怒らせちゃったかな? リズが少し不安になったとき、ようやくのことでホースは口を開いた。
「写真を撮られたと仰いましたね? その写真はいまどこに?」
「あ、それならわたしが回収して、ポケットに……」
朝に回収したあと、授業を受けている間にすっかり忘れてしまっていたのを、リズはいま思い出した。上着のポケットからその写真を取り出して、ホースへと見せる。
「お借りしてもよろしいですか?」
「べつにいいですよ。わたしが持っていても仕方ないですし」
写真を撮って貶めようとしてきた者はすでに分かっている。これ以上なにかをしてくれば、さすがにリズとしてもなにかしらの『対応』を考えなければならなくはなるが……。
リズから写真を受け取ると、ホースはその写真に片手のひらをかざしながら言った。
「『ログアップ』」
写真の少し上の空間に窓のようなものが出現する。リズが少しびっくりした声を漏らした。
「わ、それ、ステータスってやつですか?」
リズが転生する前の世界において、ゲームやアニメ作品などで登場したものに酷似しているとリズは思った。そのステータスに人や物のいろいろな情報が記されているのだ。
ホースは落ち着いた声で答える。
「厳密には異なりますが、そのような認識でよろしいかと。いまこの写真に記録されている情報を読み取っているところです」




