19 ねびき
「なるほど。これがねびきですか。何割引きと書かれたシールが、お客様の目に留まりやすいように、目立つように配色されて貼られているのですね」
「そ、そうですね……」
至って真面目な顔でしきりにうなずくホースだったが、とにかくリズは恥ずかしくてたまらなかった。冷静に分析されることが余計に恥ずかしさを助長させていた。
まるでだじゃれやギャグを見ても笑わずに、冷静にどのようなだじゃれやギャグかを分析されているような気分になってしまった。
「それで、これらを全て買えばよろしいのですね?」
「い、いえ、そんなお金はありませんし、他の人も買うでしょうし、必要な分だけで……」
「なるほど。良いものはみんなに分配しようという精神ですね」
「そ、そんな大仰なものじゃありません……っ」
「……?」
おそらく、普段仕えているスクエアなどは、気に入ったものを値段も気にせず好きなだけ買っているのだろう。しかしリズにそんな大胆な買い方はできず、そしてだからこそ、そんな貴族と自分のギャップにさらに恥ずかしさを覚えてしまうのだった。
「と、とにかく、早く買って出ましょうっ」
「はい」
リズはそそくさと手近にあった惣菜パンや菓子パンの入った袋を手に取り、近くにあった買い物かごにそれらを入れる。それから惣菜コーナーへと向かい、やはり手近にあったものをかごに入れていく。
普段ならもっと値段や内容量を比べて、少しでもお得になるように選んで買うのだが……ホースがいる前でそれをするのは、恥ずかしすぎてできなかったのだった。
「なるほど。それらのパンを透明な袋に入れているのは、お客様が中身を見やすくするためですね。お総菜も、それで中身が見えるようにパック詰めされているのですね」
「い、いちいち口に出さなくていいですからっ」
リズは値引き品以外の、牛乳や豆腐や野菜や魚などといったものも、家にある残りが少なくなっていたので買いたかったのではあるが……とにかくいまはさっさと買い物を切り上げたかったので、すぐさま会計カウンターに向かった。不思議そうな顔をしながらホースがついてくる。
「どちらへ行かれるのですか? 入口は向こうですよ?」
「りょ、料金を会計するんですっ」
普段のスクエアの買い物はその場では料金を支払わずに、品物を持ってすぐに店を出ていくのだろう。さすが貴族とリズは思う反面、そうではない自分にやはり恥ずかしさが増してしまう。
「……皆様並んでおられますね」
「じゅ、順番が来るまで待つんです。こればっかりは仕方ありません」
「なるほど。己に課された順番を守り、騒がずにルールを守る精神ですね」
「お、大仰に言わなくていいですからっ」
……もう二度とホースさんとは来たくない……っ。
そう思うリズであった。
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