12 紹介
三人の婚約者達へと挨拶を終えたリズに、御者が言葉を続ける。
「お座りください、リーゼロッテ様」
「あ、はい」
リズが再び座るのを待ってから、御者が言う。今度は三人の婚約者に向けて。
「それでは次に、リーゼロッテ様にお三方のご紹介をさせていただきます。リーゼロッテ様から見て右側の椅子に座っていらっしゃるのが、アスト侯爵家のご令嬢であらせられる、シャーロット=アスト様でいらっしゃいます」
「…………」
手にしていた本をそばの小テーブルに置いて、シャーロットが静かに立ち上がり、リズ達へとしずしずと頭を下げる。それからまた音も立てずに椅子へと腰を下ろしていく。
その所作以外はなにも言葉を発しない彼女に代わって、御者が簡単な紹介をした。
「シャーロット様は、スクエア様が最初に見初められた女性であり、現在は王都の大学に通っておられます。学年は違いますが、学生という点ではリーゼロッテ様と同じでございますね」
同じ学生ということもあって、リズはつい親近感を覚えそうになって彼女を見る。しかしシャーロットはリズの視線には気づいた様子もなく、むしろそれどころか、その場の誰とも目を合わせようとはせずに伏し目がちに自分の膝を見つめているだけだった。
御者が言葉を続けていく。
「次に、リーゼロッテ様から見て左の壁際にいらっしゃるのが、カンド男爵家のご令嬢であらせられる、リリアンナ=カンド様でございます」
「おう、ヨロシク、お嬢ちゃん」
リリアンナが片手を上げて、はつらつとした雰囲気で挨拶した。半袖の服から垣間見える彼女の上腕には、鍛え上げて隆々とした力こぶが盛り上がっていた。彼女の挨拶に、思わずリズも頭を下げてしまう。
「よ、よろしくお願いします」
「ははっ、お嬢ちゃんはさっきもう挨拶しただろうが。二回もしなくていいって」
「あ、はい、そう、ですね……」
「そんなことよりさ、あんた、どんくらい強いんだい?」
「へ……?」
リリアンナの質問に、リズは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてしまった。
「だからさ、強さだよ、強さ。学園の体育とか魔法の授業とか、試験とかで実力を測ることくらいあるだろう? どんくらいの強さなんだい?」
「え、えーっと……」
もしかしたら、彼女はそういう、戦うことや鍛えることが好きな女性なのかもしれない。
ちなみにリズの身体能力や魔法の実力は並程度であり、もしリリアンナと模擬戦や組手をすることになっても、すぐに負けてしまうだろう。




