第9話 解決そのニ
私は話を続ける。
「そうすると一つ謎が解けたのよ。何故両手首を縛る必要があったのかについて。こう考えれば納得するわ。1回目の転落は学校とは別の場所だった。そして学校へ葛西くんを移動させるために拘束をした。と」
犯人は青ざめた顔のまま黙って聞いていた。
「つい昨日、学校の駐輪場には犯行に使われたと思われる自転車があったの。見つけたのは私。荷台に血の跡があって、それは犯人が葛西くんを学校まで運ぶ時に一緒に持ってきたと考えられる。じゃあ、自転車を使って葛西くんを拘束し、違和感なく運べる方法はどんな方法かしら」
質問の体で話しているがこれは半ば尋問だ。
しばらく待ったが、犯人が答える気がないのを見て私は話を続けた。
「それは二人乗りよ。といっても犯人がやったのは少し特殊な方法。まず犯人は葛西くんの両手首を縛った。
そして自分の首に引っ掛けて無理やりおんぶしてサドルに座り葛西くんを荷台に座らせる。
そして葛西くんの腕の中に自分の腕を通して、葛西くんの腕がお腹を包むような姿勢で固定する。
するとあら不思議、二人乗りの完成ね。この二人乗りなら雨の中違和感なく葛西くんを学校まで運ぶことができる。
でもね、この二人乗りが目撃されていたのよ。聞いた話によると二人乗りをしていたのは学生だったそうだわ。これで犯人が少し絞られたわね。
ちなみに二人乗りが目撃された場所は住宅街で時間は8時前だったそうよ。
つまり、そこから葛西くんを連れて学校に到着した時間は学校の巡回戸締りのある8時以前だと予想できるわね」
そこで犯人がやっと口を開いた。
たどたどしいものだったが、犯人が学校にいたのなら8時の戸締りのための巡回で見つかるはずだと言った。
分かってるくせにと思いつつ口を開く。これ以上言い逃れをさせないために。
「あるじゃない。警備員さんが巡回しない場所が」
犯人がごくりと息を飲む。
「それは屋上付近よ。屋上は先生が管理しているから巡回の範囲外。そして、その屋上に繋がる扉の前も見ない。犯人は死角になったその場所で警備員をやり過ごし、職員室の電気が消えるのを待った。そして、誰もが帰った後に葛西くんを窓から落とした」
犯人の顔色がどんどん悪くなっていくが、私の話はまだ続く。
「後は学校から出るだけね。犯人は二階の窓から駐輪場にある雨避けの上に降りてそのまま裏門をよじ登って脱出した。そして朝早くに登校し何食わぬ顔で脱出する時に開けた窓の鍵を閉めれば証拠隠滅ね。でも、その日は私が窓を閉めていた。」
ここまで来てようやく、私は犯人の名前を呼んだ。
「さて、私の次に朝早く学校に来ていた学生は誰だったかしら。鈴野さん」




