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第3話 とある女学生の一日そのニ


その後、月島先生から死んだのが葛西哲平(かさいてっぺい)であることを言いふらさないようにという言葉でホームルームが終わった。

ホームルームが終わるとすぐに授業が始まったが、集中できた生徒は一人もいなかった。


ヒソヒソと事件についての話が教室の端々(はしばし)から聞こえ、教師が黒板に板書をする度に生徒がり向く。数度すうど、教師からの注意が入っても一向いっこうに収まらず、口を開いての話がノートに書いてのやり取りに変わるだけだった。


授業途中、顔色の悪い鈴野さんが口を押えてトイレに行くなどのトラブルがあったがこれについては教師も同情的どうじょうてきに対応していた。

彼女はここのところお腹が冷えてよくトイレに行っている。


普段でさえそうなのに今朝は死体も見てしまって可哀想かわいそうだとクラスも同情の目線を送っており、彼女を見送る瞬間は張りつめていた空気が一瞬和らいだ。


しかし、一限が終わるとクラスはまた憶測おくそく困惑こんわくうずつつまれた。

その中でも一部の生徒の注目は死んだ葛西哲平の彼女、今田美海(いまだみう)の話に集まった。

彼女の周囲だけ会話の声量が一段下がり、隙間を縫うように恵美の耳にもくだんの会話が聞こえてきた。


「ねね、昨日哲平どうだった。なんか変なこととかあった?」


「別に普通だったけど、そもそも昨日私は放課後に哲平と会ってないから詳しくは知らない。塾があったし、哲平も部活があったから私より部活が一緒の人の方が昨日の哲平について知ってると思う」


「そっかー。哲平って確か野球部だったよね。うちのクラスで野球部の人は何か知ってる?」


女子が辺りを見回すと1人の男子が近づいて話し出した。


「俺野球部だけど、ここ最近の哲平はあまり夜遅くまで残って練習してなくて、昨日も帰ったのは6時過ぎくらいだった。わざわざ学ランに着替えてたから何か予定があったんじゃねーかって思うけど」


話が終わると美海は苛立った様子で野球部部員の生徒に聞き返した。


「予定って...夜に?なんで?」


「そこまでは...知らない」


「・・・はぁ、いつから哲平は早く帰るようになったの?」


「うーん。二か月くらい前からだな」


そこまで話すと別のクラスメイトが割って入ってきた。


「あ、俺もこの前の夜に哲平見た事あるよ。夜の9時近くとかだったかな。学校の方に自転車で走ってた。」


「それ家に帰ってるところじゃね。哲平家が学校と近いから」


「ほら、バイトとかじゃね? 駅前はお店もいっぱいあるし」


クラスの予想大会は過熱かねつする一方だったが、美海の一言で一気に静まり返った。


「・・・私、哲平から何も聞いてないんですけど」


美海は腹立たしいとばかりに机を指で叩いていた。


「っていうか彼女に内緒ないしょで出かけるって浮気しかなくない? バイトしてたならフツー教えるでしょ、彼女に!!」


そこで、2限目の授業開始を告げるチャイムが鳴った。


静かになるのなら浮気話うわきばなしの方が歓迎かんげいだったのだが、私の期待とは裏腹うらはらに次の休み時間からクラスメイトの話は転落死と哲平の浮気疑惑に二分にぶんされ、クラスはより一層まとまりがつかなくなっていた。


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