第1話 ある女学生の登校。あるいは...
田舎町の朝は早い。
単に寒いからというのもあるが、とにかく移動に時間が掛かるので早くに起きなければならない。
私はいつものように早く起き、気だるい体を動かして朝の支度をし、セーラ服に身を通す。
身だしなみを整えて家を出ると、自転車に跨り道を駆ける。
登校中、下り坂で叩きつけるような風が当たる。前日の雨でできた水溜りも邪魔に感じる。
猫背になり前髪を垂らして風に対抗したが、気休めにしかならない。
できればお腹は冷やしたくないけれど、仕方がないことだ。
吹き付ける向かい風に耐え、学校の裏門につくと、自転車を下りて手押しで進む。
後から入る人の為に駐輪場の奥に自転車を進めていると、校舎裏の方、駐輪場の先に普段は無い異物があった。
倒れたカカシにも見えるシルエットは、昨日の雨でぐっしょりと濡れている。
一旦自転車を止めて近づいていくと、ソレは徐々にハッキリとした輪郭を露にする。
校舎裏の日陰に差し掛かった頃、それが何であるかを否応なく理解させられてしまった。
それは死体だった。
同じ学校の学ランを着ている彼は頭から血を垂らしており、服も乾いた血と共にこびりついた汚れでボロボロだった。
服の覆っていない手や顔は酷い擦り傷で、背丈以上のことは何もわからない。
ちらりと見えた顔は――。
私は咄嗟に目を逸らし空を仰ぎ見ると、ちょうど屋上が視界に入った。
昨日の寝不足が祟ったのか、屋上に誰かが立っているように見えた。
私を見下ろすように。
「……ううっ」
吐き気がする。
私はここから逃げたい一心で、校舎に駆け出していた。