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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第三章 お見合い大作戦

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お見合い

 午後三時ちょうど。


 東城駅付近のカフェ――木目調の壁紙、木の床材のナチュラルカフェ「ツリー」にて、美麗と裕貴のお見合いがスタートした。


 美麗は店内をグルリと見回し、「……な、なかなかリラックスできるカフェだな」とぎこちない笑み(緊張のためだろう、と凪はすぐに察した)のまま、カフェについての感想を述べた。


 凪と美麗の対面に座る裕貴はというと、美味そうにタバコを一度吸ってから、「同感ですな。ここはお見合いにもってこいの場所だ」とガチガチに緊張している美麗を見た。


「それに席で喫煙できるカフェというものは、我々喫煙者にはありがたい存在でもある」

「だろうな」


「……ところで。どうしてこの場に、凪くんがいるのだね」


 裕貴は凪に視線を向け、いぶかしむ。


 話題に上がったため、凪はギクリと身体を強張らせた。


 裕貴の質問には、美麗が答えた。


「遠山はな、あたしたちの“恋のキューピット”だ」

「ほう」

「あまりキューピットのことは気にするな、喜多」

「了解した」


 美麗と裕貴の会話を聞いていた凪は、ホッと胸を撫で下ろした。


 美麗はこほんと咳払いをしてから、まだ緊張した面持ちではあったが、ニコリとほほ笑んだ。


「お前のプロフィールはしっかり読んだぞ、喜多。……趣味はドライブだそうだな」


 裕貴は指先を使って、タバコの灰を灰皿に何度か落とす。


「ああ、そうだが」

「そこでひとつ、あたしから提案がある」

「提案? なんだね、それは」

「そ、それはだな……それはだな」

「ふむ」


 凪は眉をひそめた。

 なぜなら、作戦通りの展開ではなかったからだ。


 嫌な予感がし、凪は美麗の顔をチラリと見て――戦慄。


 そう、彼女は極度の緊張のためか、いつの間にか白目になっていたのだ。


「竹原先生……!」


 凪は声を抑えて叫んだ。


 それが合図となったかのように、美麗は「グフフ」と魔物のような笑い声を上げると、裕貴に“ある提案”をした。


「あたしが新婚旅行先に考えたのは、地底人の住まう地底国なんだが、そこに行くには、当然穴掘りが必要だ。

 だがまあ、安心しろ。穴掘りはあたしが全力でするから。

 そんでもって、地底国にたどり着いたら、喜多はあたしを助手席に乗せて、好きなだけドライブを楽しんでもらいたいんだが……どうだ、喜多」


「どうだ、とは」


「あたしと結婚でも、してみないか……?」

「…………」


「このあたしがパートナーになるんだから、悪くない話だろう……?」

「…………」


「喜多、お前の気持ちはよぉく分かるぞ。

 ……心優しいお前のことだから、許嫁である北埜との婚約を断ることに、罪悪感を抱いているのだろう? 大丈夫だ、まったく問題ない」

「…………」


「なぜなら、あたしと喜多が結ばれることは、最初から決まっていたのだから……!」

「…………」


 裕貴は白目をむいた美麗のとんちんかんな言葉に対し、沈黙を貫いていた。


 これはアウト、それもスリーアウトだ、と凪は暴走中の美麗と沈黙したままの裕貴を交互に見てから、ため息をついた。


 美麗が婚活で上手くいかない原因とは、まさに“これ”なのだと、このとき凪は理解した。


 灰皿に置かれたタバコが、ほとんど灰になりかけたとき――とうとう裕貴は沈黙を破った、


「それはそうと、竹原さん……あなたは読書が趣味だそうだが、何かオススメの本はあるかね」


 その瞬間――白目だった美麗の目が、元通りになった。


「おお、もちろんだとも」

「そうか。ぜひとも、何冊でも薦めてほしいのだが、どうだろう」

「あ、ああ……! 喜んで薦めるともっ」


 美麗と裕貴は本について話し合い、それをそばで聞いていた凪は次第に眠くなり、とうとう革製の椅子に座ったまま、気持ちよく寝てしまった。

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