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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第三章 お見合い大作戦

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ダジャレ大爆発

 土曜日。

 凪は美麗とともに東城駅近くの回転寿司「寿司天国」で、少し早めの昼食を摂っていた。

 ただの会食ではなく、お見合い前の打ち合わせも兼ねているため、これでもかというほどに場はピリピリとしていた。


「――とまあ、以上がぼくからのアドバイスです。……どうですかね」


 凪が言葉を言い終えると、美麗はちょうど二十貫目となる真イカを咀嚼、飲み込んでから、血走った目を凪に向けた。


「アドバイス、ありがとう、遠山。必ず、必ず! あたしはこの血戦に勝利してみせるぞ」

「そうですか」


 凪は両手で包み込んだ湯呑みを口まで運ぶと、その中身である緑茶をすすった。


「まあ、がんばってくださいな」


 美麗は大きくうなずいてから、「それはそうと、遠山」と何やら話題を変えた。


「なんですか」

「今日のお見合いがうまくいけば、お前は晴れて自由の身だ」

「自由の身……?」

「とまあ、お見合いが上手くいかなかった場合だが……そのとき、あたしはお前をあたしの家まで連行する」

「なっ?」

「そんでもって、遠山には朝まであたしの話に付き合ってもらうから、そこらへん覚悟していろ」


 開いた口が塞がらないとは、まさにこのこと、と凪は美麗の言葉にあきれ返っていた。


「そんな悲劇は嫌です」

「無論、あたしだって嫌だ」

「百歩譲って、ぼくは夕食までは竹原先生に付き合いますから、どうかそれで勘弁してください」

「さっきも言ったが、お見合いは夕方までだ。となると、お前がお見合いに同席するのはそれまでということになる」

「うん……?」


 話がかみ合っていないことに気づき、凪は首をかしげた。


 しばらく二人は沈黙。


「そういえば、竹原先生」

「なんだ?」

「真イカ、お好きなんですね。さっきから、そのネタしか食べていませんし」

「いや、大して好きではないが」

「えっ、そうなんですか? でも、もう十皿目ですよ、それ」

「どうして真イカだけを食べているか、気になるか?」


 なんだか嫌な予感がしたが、結局凪は「ええ、気になります」と素直にうなずくことにした。


「それはだな」

「はい」

「お見合いがうまくいかなくても、『まあ、いいか』って思えるようにするためだ」

「…………」

「どうだ、イカしてるだろう?」

「とっても」


 くだらないことに興味を持ってしまった、と凪は後悔する一方、くだらないダジャレを二度もかませた美麗が正気かどうか、本気で心配した。


「ところで、遠山」

「なんでしょう」


 そこで美麗はいやらしそうにニヤリと笑った。


「お前、北埜のこと、恋愛的に好きだろう?」

「ごふっ」


 凪は緑茶を噴き出し、しばらくのあいだ、むせていた、


 凪が苦しそうにむせているあいだも、美麗はニヤニヤと笑っていた。


「ど、どうしてぼくが北埜さんのことを好きなことが、先生に分かったんです?」

「ん? それはあれだ、女の勘だ」

「女の勘……」

「それで分かることは、まだまだあるぞ? お前、北埜の前は青柳のことが好きだっただろう?」


 驚きのあまり、凪は目を見開いた。


「正解、です」


 だろうな、と美麗は得意げにうなずいたかと思えば、彼女はいきなり真顔になり、「なあ、お前は北埜のどこを好きになったんだ?」と核心部分をついてきた。


 答えに窮することなく、凪は美麗からの真剣な質問に答えた。


「彼女の“変人”部分が、ぼくには魅力に映りました」


 腕組みをした美麗は、低い声で「そうか」と言葉を返すと、十一皿目の真イカもペロリと平らげた。


「っと、あと四皿、真イカを注文しないとな」

「……真イカ、よく食べますね」

「食べすぎか? ……まあ、いいか」


 凪は澄ました顔で湯呑みに粉末緑茶を入れ、お湯を注いだ。


 ダジャレを言っても凪が無反応なことを気にしたのか、四皿の真イカをテーブルに置いた美麗は「いかん、急に腹が膨れてきたぞ。お腹いっぱいだが、まあ、いかに真イカを美味しく食べられるかが、何よりも肝心だな」とダジャレを連発させた。


 美麗のしょうもないダジャレを聞き流した凪は、オーダータブレットでデザートを注文するのだった。

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