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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第三章 お見合い大作戦

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メモ騒動

 タイミングを合わせ、凪はメモ帳サイズの紙をキャッチ。


「なんだ、これ……?」


 紙にはこう書かれていた。


 これを拾った者には、あたしとお見合いをする権利を与える。世にも艶めかしい美人教師、竹原美麗、二十四歳――。


「ははっ、まさか!」


 笑い声を上げたものの、急に恐ろしくなった凪は、紙を胸に抱えたまま、人にぶつかるのも構わず、全力疾走で「グランド」からの脱出を図る。


「兄上、どこに行かれる? 兄上!」

「ちょま、いきなりどうしたんスか、タコさん?」


 あわてたような悠奈と叶夢の声にも振り向かず、一心不乱に凪は「グランド」から出ることだけを考えた。

「グランド」から外に出た凪は、一刻も早くこの紙を誰かに渡さなければ自分は死ぬとばかり、曲がり角からやってきた黒服の男性に「落とし物です!」とパニックになりながらも、一方的に紙を渡した。


 呪いともいえる紙を渡し終えてから、今さらのように凪は黒服の男性の顔を見た。

 その顔を見て、凪は「あぁ!」と叫び声を上げた。


「裕貴、さん……?」

「そうだが。しかし小僧、これはなんのつもりだ? それにこの妙な紙はなんだね。……むっ?」


 そのとき、裕貴は紙に書かれている内容を見て、片眉を上げた。

 とっさに、凪は謝った。


「ごめんなさい。急にそれが頭上から落ちてきて、思わず受け取ったら、パニックになったんです」

「そうか……まあいいだろう、これはわたしが預かっておく。きみはこのことを忘れ、さっさと日常に戻ることをオススメするが、さて、どうだろうか」

「色々と大丈夫ですか……?」


 凪が反省した顔で裕貴を見ると、彼は紙を胸ポケットに仕舞うなり、無言で親指を突き出した。


「裕貴さん……!」


 しかし、その突き出された親指は逆さまになる。


「地獄へ落ちろ、小僧」

「……裕貴さん!」

「グッドラック」


 裕貴は今来た道を戻った。

 凪は恐る恐る曲がり角を曲がって、裕貴の様子をうかがうと、彼は自転車でここまで来たらしく、駐輪場から自転車を引き抜いている最中だった。


 ちょうど裕貴が「グランド」の敷地内から出てから間もなくして、悠奈と叶夢が凪に追いついた。

 二人は肩で息をしながら、どこか不安げに凪を見つめていた。


 凪は静かな口調で、彼女たちに向かって言った。


「夏っていうもんはね、汗をかくのが大事なんだ。……二人とも、今のぼくらが何をするべきか、分かるかな」

「それはつまり……なんスかね?」

「夏の鬼ごっこだよ、叶夢さん……?」

「ほう、鬼ごっことな!」

「ねえ悠奈、あと十秒数えたら、恐怖の鬼ごっこ、始まるよ……?」


 不気味な声で凪が数字を数え始めると、二人は賑やかな悲鳴を上げ、一緒になって逃げ始めた。


 十秒数えた凪は「おお~ん!」という恐ろしく滑稽な叫び声を上げながら、二人を追いかけ、先ほどの紙の一件を忘れるよう、無邪気にはしゃぐのだった。

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