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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第三章 お見合い大作戦

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女同士のバトル

 ショッピングモール「グランド」には、バスを使って向かった。


 広めの出入り口を通り、そこから「グランド」に入る凪と悠奈。

「グランド」は一階から四階まで吹き抜け空間になっており、様々なテナントが入居していた。

 まだオープンしてからそんなに日が経っていないので、店内は傷や汚れなどといったものは少なく、開店の頃と同じようにキレイだった。


 凪はキョロキョロと見回す悠奈の肩を叩くと、「どこに行きたい?」と訊いてみた。

 悠奈は振り向くなり、「カフェ!」と上機嫌に叫んだ。

 凪はうなり声を上げる。


「カフェは……うーん、それは最後にしようか」

「正気か」

「カフェは最後に寄るものだと相場が決まっているからね」

「誰が決めたのじゃ?」

「わしじゃよ」

「なんと……!」


 凪はカラカラと笑うと、まだ笑みが残った表情で「……で、どこに行きたいの?」と尋ねた。

 悠奈は満面の笑みで答える。


「メイドカフェ!」

 と。


 凪は深呼吸をし、心を落ち着かせる。

 そして悠奈にこう告げた。


「メイドカフェはね、悠奈……ここにはないんだよ」

「なんと!」

「それはこっちのセリフだよ。メイドカフェは、ここにはないんだ、残念ながら」

「それは……悲しいであるな」

「うん、ぼくはそんな無邪気な悠奈と一緒に『グランド』に行けて、本当に嬉しいよ」


 凪は照れを隠すように、顔をそらしながら心の底を打ち明けた。


「ほう……それは大いに結構」


 今度の悠奈は素に戻らなかったが、それでも嬉しそうにはにかんでいた。

 凪は満足げにほほ笑むと、「さて……どこに行きたい?」と先ほども言った内容を繰り返した。

 悠奈は答える。


「魔界ショップへ」


 まさかの変化球。

 思わず凪は咳きこんだ。

 そしてこのような結論を出す。


「よし、とりあえずファンシーショップへ行こう」

「うむ!」


 ようやくその場から動き出した凪と悠奈。

 そんなときだった。


「あっ、タコさんじゃないっスか」


 ばったりと――凪たちは叶夢に出会った。


 凪は「あらま、叶夢さん」と気まずく声を上げた。

 悠奈は「おお、赤髪姫!」と愉快そうに叶夢に手を振った。

 叶夢は「んんっ、このイタイ女は誰っスか?」と悠奈を凝視。


 凪は苦笑すると、叶夢に悠奈のことを教えた。


「ぼくの妹だけど、何か?」


 叶夢は見るからに驚き、「妹……? ははっ、まさかね」とバカにしたように悠奈を見る。

 そのとき、その瞬間――悠奈と叶夢、その女同士のバトルが始まった。


「ふむ、そなたは育ちが悪いとみた」

「それはお互い様っスよ、イタイさん」

「自己紹介、ご苦労であった。そしてネーミングセンスが絶望的であるな、非常に哀れみを抱く」

「哀れみっスか……それ、風燐中学校の制服っスよね?」

「そうであるが?」

「なんスか、その飾り。そんなファッションセンス、ドブにでも捨てたらどうっスかね。めっちゃ哀れっス」

「そういう人を傷つけることしか言えないそなたには、このファッションセンスの良さには気づけまい」

「何はともあれ、そんなファッションセンスの良さは分かりたくないっスね」

「ふむ……!」

「うっす」

「闇の魔王から授かりし闇の眼銃がんじゅうでも食らうか?」

「受けて立つっスよ。この『赤髪のクック』こと、馬場叶夢の死のパンチでも食らうっス……!」


 凪はえへんえへんと咳払いをする。


「暴言、それに中二病はそれまでにしようか、二人とも……きみたちはたった一学年しか違うんだから、仲良くしようね」


 悠奈と叶夢、それぞれ目を丸くし、互いに顔を見合わせる。


「一学年……?」

「たった一学年しか違うのに、余よりもこんなに情けなく幼稚、だと……?」

「いやいや、どこで道を踏み外したら、こんなふざけた中学生になるんスか」

「うーむ、なんて将来が絶望的な……これでは将来、道を踏み外すに違いないではないか」

「かわいそうに」

「哀れな」

「潰す」

「倒す」


 凪は大慌てで二人の手を取ると、無理やり握手をさせた。


「仲良くね……? 潰さないし、倒さない」

「絶対に潰すっス……!」

「必ず倒そうではないか……!」


 凪は目を閉じると、それからフッと笑った。


「さて、カフェにでも行くか」


 凪は悠奈と叶夢に構わず、エスカレーターに向かって歩き出す。

 途端に、悠奈はショックを受けたように「兄上!」と叫んだ。

 凪はピタリと足を止めると、苦笑しながら後ろを振り返った。


「余を置いていくな、余は兄上とともにある……いざ、ファンシーショップへ!」


 叶夢は「ファンシーショップ?」と目を輝かせた。


「あたいも行くっスよ、ファンシーショップ!」


 悠奈はギョッとする。


「何ゆえ!」

「えっ? いや……行きたいから行くだけっスよ。それが何か?」

「そなたは行くな、そなたはメリケンサックでも買うがよい」

「間に合ってるっス」

「なんと、それはおっかない」


 悠奈は身を震わせ、さりげなく凪のほうに近寄った。

 ついに凪は声をイラつかせ、「で? ファンシーショップに行くの? 行かないの? どっち」と選択を迫った。

 悠奈と叶夢は同時に叫んだ。


「行く!」

「行くっス!」

「なら、行こう。すぐ行こう」


 凪は悠奈と叶夢を引き連れて、三階にあるファンシーショップへと向かおうとした、そのとき。

 凪の頭上から、一枚の小さな紙がヒラヒラと落ちてきた。

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