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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第三章 お見合い大作戦

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G騒動

 学校が終わり、凪が自宅に帰ると、遠山家ではゴキブリ騒動が起きていた。


 凪はリビングのソファに腰かけながら、「とうとう出たの? G」と防護服姿の亜季に尋ねた。

 食卓の近くにいた亜季は何度もうなずき、「ええ、そうよ。凪、あんたも気をつけなさい。“奴”は急に現れる……そう、唐突に」と意味もなく殺虫剤を宙に向かって噴射した。


 当然、亜季の近くにいた勇蔵は口に手を当て、苦しそうに咳きこんだ。


「おいおい、母さん……おれはゴキブリじゃないぞー。――せっかく急遽仕事を早退してきたんだ、そうナーバスになりなさんな」

「お黙り、ミスターサティー」

「ミスター……なんだって?」

「あたしはミセスドローヌ……私語はおやめ」

「死後……? なんだ、亜季、お前死ぬのか?」

「ミスターサティー!」

「はいぃ、ドローヌ様……!」


 勇蔵は亜季の威圧に屈し、彼女とともに茶番を始めた。


「この世界で……一番勇敢なのは?」

「それはわたくし、ミスターサティーめでございます、ドローヌ様」

「よしっ! やっておしまい、ミスターサティー!」

「はいぃ」


 勇蔵は亜季から殺虫剤を受け取るなり、自分が咳きこむのもお構いなしに、無差別に殺虫剤を振りまいた。

 とうとうソファに座っていた凪と悠奈も、これにはゴホゴホと咳きこむ。


「むむっ、なんという思わぬ被害……最低、それに最悪じゃ!」

「同意見だよ、悠奈……Gよりも、まずはあの二人の息の根を止めないと、こっちが持たない」

「同感……!」


 そうして凪と悠奈はリビングから脱出すると、二人して殺虫剤のない外に出た。

 外はすぐに汗をかいてしまう暑さだったが、それでも背に腹はかえられない、そう凪は腹をくくった。


 額の汗を拭きながら、悠奈は凪に尋ねた。


「さて、これからどうする、兄上」


 凪はスラックスのポケットから財布を取り出すと、中にあるお金を数える。


「……うん、これだったらショッピングモールで何か買える、か」

「ショッピングモール『グランド』であるな」


 凪は悠奈を見ると、ニコッと笑った。


「うん。ちょっとそこで買い物してから、『グランド』内のカフェに寄ろう」

「ほう、メイドカフェとな」

「ただのカフェだよ……?」


 凪は悠奈のボケに引きながらも、ちゃんとツッコんだ。


「そうか、猫カフェであるか……それは楽しみであるぞ」

「……もしかして悠奈、メイドカフェと猫カフェ、行きたいの?」

「うむ!」

「そっか、今度一緒に行こうね。――あっ、でもメイドカフェはちょっと敷居が……」

「えっ、ほんと? お兄ちゃん、ありがとう~」


 急に素に戻る悠奈。

 凪はクスリと笑うと、「うん、そのどちらにも行こうね」と言いかけた言葉はどこかに押しやり、大きくうなずいた。


 そんな凪たち兄弟の日常を、夏の太陽は愛おしく見守っていた。

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