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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第三章 お見合い大作戦

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ゲシュタルト崩壊

 昼休み。

 凪たち二年一組の教室に桜がやってきた。


 彼女は例のごとく凪の席まで来ると、凪に絡んだ。


「タコ野郎、こんにちは~。調子はいかがですか?」

「ぼくはタコ野郎じゃないけど、調子はいいよ。っと、島崎さんのほうは調子どう?」

「わたしですか~? ……同好会の合宿、両親の都合で行けなくなってですね、そりゃあもう気分最悪ですよ」

「あちゃー」


 凪は両手を合わせ、合掌。


 ここぞとばかり、彰人はスマートフォンを使って、お経を流し始めた。


「……黒原さん、あなたには人の心がないんですか。お経を流すの、やめてください」

「何を言うかと思えば……このおれのジョークを理解できないとは、なんとも情けない」

「そんな低レベルなジョーク、いっそのこと黒原さんごと東京湾に沈めちゃいましょう」


 なんておっかない、と凪は桜の言動にギョッとした。


 彰人はブルッと身体を震わせた。


「脅しには屈せぬ!」

「やだな、言ったじゃないですか、黒原っち~。……ガチめで復讐するって、言ったじゃないですか」

「ブクブク……」

「そのブクブクって……まさか東京湾に沈められた際のブクブクですか?」

「…………」

「あっ、ついに亡くなった系ですか?」


「ジョークも程々にね、島崎さん……?」


 凪は桜の頭にチョップし、彼女を叱った。

 桜はヘラヘラと笑い、「分かってますよ~」と一組の教室から立ち去った。


 凪はため息をついたあと、ブスッとした様子の彰人を見ながら苦笑した。


「まったく、荒らすだけ荒らしてくれたね、あの愉快な後輩は」

「おのれ、島崎氏め……今度、目に物見せてくれよう」


 怒りに打ち震える彰人を見て、凪の表情が固まる。


「頼むから、事件だけは起こさないでね……?」

「承知した。事件にはならないよう、加減して仕返しをするとしよう」


 それはいかん、と凪は彰人を思わず二度見した。


「前言撤回! ……お願いだから、かわいい後輩に仕返しはしないでよ」

「むっ……? 今のはジョークだが」


 凪は天を仰いだ。


「きみのジョークほど、怖いものはないね」

「いいや、遠山氏……東京湾に沈められるジョークのほうがよっぽど怖いぞ」


 本気で怖がる彰人を見て、心底あきれる凪。


「でもそれジョークだから、ぶっちゃけ怖くないよね」

「……ジョークとは、一体なんなのか」

「まさにゲシュタルト崩壊だね」


 凪はカラカラと笑った。


 彰人は「ゲシュタルト……」とつぶやくと、不意に手を打った。


「ゲシュなどというものはどうだっていい。そんなことよりも、おれはタルトが食いたい」

「ゲシュ……タルト?」

「ゲシュタルト崩壊とは、まさにこのこと」

「そうかもしれない」


 そう会話してから、凪と彰人は二人して仲良く笑った。

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