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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第二章 白熱! おもてなしカレー対決

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大成功の歓迎会

 鍋で野菜を炒める凪を見て、彰人はドヤ顔で一言。


「おれの出番、か」

「うん、分かった。炒めたいのなら、どうぞどうぞ」

「任せろ。……確か、玉ねぎがキツネ色になるまで“焦がす”のだったな?」

「惜しい。とまあ、玉ねぎがキツネ色になるまで“炒めて”ね」

「ふん。すべては炒めようとするおれの勝手だ。どうか好きにさせてくれ、遠山氏」

「頼むから、わざと焦がすのはやめてね……?」


 不安を抱きながらも、凪はフライ返しを彰人に渡した。

 彰人は舌なめずりをし、「なんだろうな、右手がうずくぞ」と言って、鮮やかに野菜を炒め始めた。


 これなら大丈夫そうだ、と凪はひとまず安心した。


 彰人の料理姿を見ていた桜は「お~、案外上手いじゃないですか、黒原さん」と意外そうに目を丸くした。

 叶夢も「おお、人は見かけによらないものっスね」と彰人が野菜を炒める姿を見て、感嘆の声を上げた。


 そのとき、審査員席のほうからどよめきの声が聞こえた。

 何事かと凪は審査員席を見てみると、そこには三人の審査員に交じり、カレールウのパッケージを持った奏がいた。


 凪は審査員席のほうに近づくと、パッケージを見せびらかしている奏に声をかけた。


「やあ、北埜さん」

「やあ、遠山くん」

「なんだろう、どうかしたの?」

「どうかしたから、こうなっているのだよ」

「言われてみれば、確かにそのとおりだ」


「では訊くが、きみの目にはこれがどう映る?」

「……審査員の三人がカレールウのパッケージに目を奪われているように見えるかな」

「ピンポンピンポン! ……正解だよ、遠山くん。

 さあさあ、正解を当てたきみにも見せてあげよう、このカレールウの“賞味期限”を!」

「賞味期限……どれどれ」


 賞味期限、一九九九年八月――。


「……一体誰だ。こんな食中毒確定カレールウを持ってきた、新時代の大バカ者は」


 そのとき、颯爽と裕貴が現れた。


「わたしだが? カレー小僧め、このわたしに何か文句があるのかね」

「二人とも~、もしかしてさ……サボッテルウ?」


 かと思えば、殺気立った琉歌が奏と裕貴を調理実習台に連れ戻し、二人にカレールウを買いに行くよう、半ば脅すように命令した。


「……そんでもって、二人は竹原先生にどやされると」

「俗に言う、お約束といったところか」

「あっ、彰人くん」

「まさかとは思うが、遠山氏……さぼりか?」

「……きみの目にはどう映る?」

「さぼりだ、この愚か者めが」


 凪は彰人から頭にゲンコツを食らい、そのまま自分たちの調理実習台に連れ戻される。


「まったく、さぼりとはいかんな」


「黒原さ~ん。次はわたし、何をすればいいですかね?」

「会長さん、指示をくださいっス」


「ああ、分かっているとも。しばし待て、お前たち」


「……あれ?」


 そのときになって、凪は気づいた。

 いつの間にか、凪に代わって彰人が料理の司令塔になっていることに。


「島崎氏は鍋にホールトマトをぶちこむがいい。その後、馬場氏がホールトマトを木べらでつぶしながら炒めるのだ。

 して、ホールトマトをあらかたつぶし終えたら、おれにバトンタッチを」

「はいっ」

「うっす!」


 桜と叶夢は元気よく返事をする。


 凪は小さな声で「……あのう、ぼくは?」と彰人の指示を求めた。

 彰人は凪を一瞥。

 彼は凪の顔も見ずに「お前は炊飯器のスイッチを入れるがいい。そのあとは皿洗いだ、遠山氏」と顎をしゃくった。


 凪は彰人から顎をしゃくられたことで涙目になるが、今の司令塔は彼だということを思い出し、素直に「了解です」と一礼。

 各々、自分の持ち場につく凪たち。


 それから一時間半以上、時間が経過した。

 ホストチームのスパイスチキンカレー、ゲストチームの変人カレイカレー……ともに出来上がった。

 それぞれのカレーは審査員が審査することになっていたが、言葉にしなくとも、それは野暮だということに凪たち十人は気づいていた。


 凪たちは二種類のカレーを食べながら話に花を咲かせ、ワイワイと盛り上がる。


 それぞれが完食したあとは、ゲストチームを除く全員のサプライズによって、奏と琉歌と裕貴には歓迎のためのクラッカーが鳴らされた。


 驚きは喜びに。

 喜びは楽しさに。

 楽しさは笑いに。

 笑いは幸せに。


「東城交流の会」会長主催の歓迎会――「おもてなしカレー対決」は、こうして幕を閉じた。

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