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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第二章 白熱! おもてなしカレー対決

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改・東城交流の会

 放課後の二年一組の教室では、いつものように「東城交流の会」のメンバーが揃っていた。

 ただいつもと違うのは、そこに奏と琉歌と裕貴がいること。


 それはつまり、この場には元々の同好会メンバーである凪と彰人と桜と顧問の美麗以外に、新入部員として加入予定の奏と裕貴、それにイレギュラーな存在の琉歌も加えた七人の人物がいるということ。


 副会長の凪がすっと無言で手を上げると、会長の彰人が「なんだね、遠山氏」と凪に発言を促した。

 凪は力弱くうなずいてから、全員に向けて力強く発言した。


「昨日の時点で、ぼくは北埜さんと裕貴さんが新入部員として加わることを知ってたよ、うん。だけど、今日ここにみんなで集まって、ぼくはびっくりしたんだ。……なぜだか分かる?」

「うーん、なんでだろう……ギブアップ!」


 そう叫んだのは、凪の話を聞いていた一人の人物。

 ビシッ、と凪はその人物――琉歌を指差した。


「琉歌さん……きみが同好会メンバーの一人として、当たり前のようにいるからだよ」

「……凪くん、犯人を指摘するようなムードを作るのはよくないよ。マイナス三十点」


 マイナス評価を与えられた凪は、シュンとなる。

 と、そのとき、なんの前触れもなく、彰人が机を拳で叩いたかと思えば、大声で吠える。


「なぜだ……何も意味が分からぬ、分からぬ!

 なぜっ、どうしてっ、我が同好会の活動する神聖な場に、おつむの弱い北埜氏や訳の分からない転入生二人がいるというのか」

「ギャバ―! まさに同感……珍しくお前と意見が合ったな、黒原」


 お馴染みの奇声を上げながら、そのように発言したのは美麗。

 彼女は我慢の限界といったように、手のひらで机を二度叩く。


「もっとも、あたしはすでに朝から混乱している……分かるか、この気持ち!

 朝学校に来てみれば、教え子は二人も増えているし、校長が愛でていた観葉植物は毛虫によって食われるし、あたしが顧問を担当する同好会には、北埜をはじめとした三人のイカれた入部希望者がいるし……このとき、あたしは二年一組のクラス担任を受け持ったこと、同好会の顧問を担当した事実を呪った」


 あはは、と面白そうに笑う人物がいた。

 そんないかにも空気の読めない人物とは、机に頬杖をついた桜だ。


「呪っただなんて……そんな大げさですってば、竹原っち~」

「大げさなどではないっ!」


 ギャッ、と驚いたように悲鳴を上げながら、桜は万歳した。

 笑ってはいけないような場面だろうに、桜と同じように裕貴はククッと笑う。


「まったくもって、不愉快なまでに愉快な子どもたちだ。――ステキな生徒たちに囲まれて、あなたは幸せ者ですな、竹原さん」


 美麗は皮肉を言う裕貴に顔をしかめると、彼を恫喝。


「うるさいぞ、そこのニヒルな男。まだ皮肉を言うつもりなら、ありもしないことをされたことにして、貴様を退学処分にしてやるから、覚悟しておけ」

「まあそう怒りなさんな、竹原さん。まずは落ち着くことですな」


 裕貴の隣の席で、奏はうんうんとうなずく。

 美麗は舌打ちすると、「何をうなずいている、北埜」と不快そうに指で机を叩いた。

 奏はニヤリと笑うと、人差し指を立てながら、美麗を冷やかした。


「それだから、竹原教諭は婚活がうまくいかないのだよ。ふふっ、失敗から学ぼうとしなければ、あなたはいつまでも独身のままさ」

「……今なら呪いで人を呪い殺せそうだ」


 美麗はとびっきりの仏頂面で、そう声を震わせた。

 そのとき、えへんえへんと彰人がわざとらしい咳払いをした。


「それぞれ自己紹介は済んだようで、何よりだ」

「……一応言うけど、彰人くん。たぶん島崎さんは転入生の二人が誰なのか、なんにも知らないよ。どころか、転入生の二人も島崎さんのことを知らないはず」


 すかさず凪が彰人に教えると、彼は手をポンと打ち、それぞれのことを雑に紹介した。


「島崎氏、紹介しよう。こちらのお二方こそ、我が東城高校を滅ばすために招かれた天使様と悪魔様だ。

 して、天使様と悪魔様、紹介しよう。こちらはおれに復讐しようとしている将来が絶望の生意気な女だ。

 ……それぞれ、手と手を取り合って仲良くするように」


 沈黙。


「彰人くん彰人くん、滑ってるよ」

「余計なお世話だ、遠山氏っ」


 と。

 ひと悶着ありはしたが、凪と彰人と桜が持参した茶菓子や飲み物が振舞われ、しばらく凪たちは雑談に興じていた。


 普段行われる「東城交流の会」の活動内容とは、まさにこのような談笑の場を指す。


 普段以上の盛り上がりを見せた部活動で、凪は楽しいひと時を過ごした。

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