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変人少女は青春の嵐を引き起こす  作者: 最上優矢
第二章 白熱! おもてなしカレー対決

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19/43

逃走失敗

 心休まる昼休み。

 そんな至福の時を、凪は裕貴という転入生に邪魔される。


「そこの小僧、きみの弁当の卵焼きは実に美味しそうだが……どうだろう、この北海道のお土産の温泉まんじゅうを一個やるから、その卵焼きを全部よこせ」

「……んんっ」


 裕貴警報と弁当避難情報が出たため、すぐさま凪は弁当の蓋を閉じ、箸もケースに仕舞った。

 弁当箱などを両手に抱え、席から立った。


「どこに行くのだね?」


 裕貴は猫なで声で凪に尋ねた。


「ちょっと風に呼ばれたので、そこまで行ってきます」

「風とな」

「風です」


 秒で考えた嘘をつきながら、凪は教室から出るために、バレバレの逃走を図った。

 もし逃走が成功したのなら、そのときは桜のいる一年一組の教室で弁当を食べよう、とまで考えていた。


 しかし、現実はそうも簡単にうまくいかなかった。

 凪の逃走を遮ったのは誰であろう、琉歌だった。


 琉歌は教室の引き戸から出ようとするのを引き止めると、引き戸付近で立ち話を始めた。


「そういえば、これ知ってた? この東城高校には期待のルーキーの情報屋がいるってこと……知ってた?」

「情報屋? ……何それ、聞いたことない」

「まだルーキーと言われて日が浅いから、無理もないよ。彼女、この春に一年生になったばかりだもの」


「……どうしてそんなぼくさえも知り得ない情報、琉歌さんが知ってるわけ?」

「ちょっとね、色々あって」

「この一年ちょっとのあいだに、きみの身に一体何が起きたんだ……?」

「話せば長くなるかな。――そんなことより、そろそろ行くよ」

「……どこへ?」


 早速教室の引き戸を開けた琉歌を見て、凪は恐る恐る聞いた。

 彼女は後ろを振り返ることなく、凪には「期待のルーキーの元へ」とだけ伝え、迷いのない足取りで廊下に出てしまった。


 また始まったか、と凪は苦笑すると、自分の席に弁当箱一式を置いてから、琉歌を追いかけた。


 教室を出るときに自分の席を見たら、ハイエナのように裕貴が凪の弁当箱の蓋を開けては手で卵焼きを食べていた。

 あとで美麗に報告しよう、と凪は心に固く決めると、裕貴のことをすっかり忘れた。


 ようやく凪は廊下に出るが、すでにこの三階の廊下に琉歌はいないようだった。

 どうやら彼女は期待のルーキーの情報屋に会いに行くことで頭がいっぱいで、凪の案内も受けることをせず、さっさと一人で行動してしまったらしい。


 琉歌の行き先を考えれば、一年生の教室がある二階だろう。

 しかし、彼女は一年生の教室が二階にあると知っているのだろうか。


 それでも何も動かないわけにはいかないので、とりあえず凪は一年生の教室を目指した。


 凪は階段で二階に下り、まずは桜のいる一年一組の教室を覗くと……そこに琉歌はいた。

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