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帝都初恋剣戟譚  作者: 新免ムニムニ斎筆達/岳兎佐助
帝都初恋剣戟譚 呪剣編
91/278

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「——奇妙な、大将戦でしたね」


 大体育室の周囲上階にある、観客席。


 その一箇所に、その二人組(・・・)は隣り合わせに座っていた。


 一人は、(よわい)十三か十四そこらの少年だった。

 その年代の平均くらいの背丈であったが、細身であり、なおかつ半袖から伸びる両腕の素肌は色白である。座り姿勢は驚くほど整っていた。

 背中の半ばほどにまで達した美しい黒髪は、太い三つ編み一束になっている。

 常に雅な微笑みを絶やさない、静かな華やかさを持った美貌。

 国民的人気を誇る特撮ヒーロー「宇宙(うちゅう)遊侠伝(ゆうきょうでん)ライトベクター」のマスクをモチーフにしたキャップに、同じくライトベクターもののTシャツ、紺色のジーンズ、丸い眼鏡……その辺の子供にありがちな格好こそしていたが、少年が醸し出す浮世離れした雰囲気は隠しきれていなかった。


 もう一人は、四十代前半くらいの男だった。

 少年に負けぬほどに整然とした姿勢。背は180センチほどに高い。黒いスーツに身を包んだその体つきは一見すると細身に見えるが、ひ弱な感じはいっさいしない。

 坊主頭の一歩手前の短さにまで切られた髪。厳めしくはないが柔らかくもない、静謐(せいひつ)な気骨を秘めたような造作の細面。

 少年とは真逆で、近寄りがたい、油断ならない武張(ぶば)った雰囲気を発していた。

 ——まるで、少年に何者さえも寄せ付けぬように。


 ……先ほどの言葉の主は、後者の男であった。


 少年はそれに対し、雅な微笑を崩さぬまま答えた。


「ええ。ですが、きっと私達の知らない因縁がお有りなのでしょう。確かに葦野(よしの)の方は何やら錯乱していたようですが、それでも私はあの試合はとても良きものであったと思っております」


「……これはまだ予選です。わざわざ足を運んでご覧になるほどのものではないのでは」


 少年は、優美な笑みのまま、からかうような口調で言った。


「予選だから取るに足りない戦い、という考えは少し勿体が無い気がします。帝都のどこに名勝負が隠れているのか分かりませんよ。……それに春川(はるかわ)さんだって、気になる試合があったから、私の我儘(わがまま)に付き合ってくださったのでしょう?」


「……ええ。まあ」


 沈着冷静な男の顔つきに、若干のバツの悪さが浮かんだ。

 

 少年は、大体育室をなおも俯瞰(ふかん)する。


 大将戦を終え、試合開始位置で向かい合って一礼している二人のうち、勝者(・・)へ視線を集中させた。

 

「あの人……秋津(あきつ)光一郎(こういちろう)さん」


 少年の静けさのあるその美貌が、またも笑みを浮かべた。


 常に人前で崩さない雅な微笑とは、性質が違っていた。


 初めて気の合う友達が出来たような、瑞々しい嬉しさを秘めた、年相応のものだった。


「——彼から、私にとてもよく似た「気」を、感じたのです」


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― 新着の感想 ―
[一言] 光一郎のだけは「これから至る剣」なので、遊びなく速攻で決め切る相手だと道半ばなので発動もしないという……。ある意味、戦場でやられる前にやらなきゃいけなかった望月先生の至剣とは真逆の性質になっ…
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