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帝都初恋剣戟譚  作者: 新免ムニムニ斎筆達
帝都初恋剣戟譚 呪剣編
153/237

天覧比剣——二回戦第二試合 先鋒戦

 八月二日。


 天覧比剣は早くも二日目を迎えた。


 とはいえ、僕らのようなシード校にとっては、今日からが天覧比剣の始まりであると言えたりする。


 開幕戦に勝利した学校と、今日の二回戦にて戦うことになっているからだ。


 二回戦の第二試合が、僕らの初戦である。


 ……余談だが、今日も試合開始前に、大武道場にて螢さんと寂尊の「開幕演武」が行われた。


 その内容も昨日と同じ『生々流転』。

 天覧比剣初日だけでなく、二日目にまでやるということは、決勝戦の日まで毎日やるということなのだろうか? 

 例年に無いという「開幕演武」という催しには、いったいどのような意図が込められているのか?  

 これも、アメリカ大統領が見に来ていることと、関係があったりするのだろうか?

 気になったので、全てが終わった後、螢さんに是非とも訊こうと思った。

 ……決して、あの二人の『生々流転』の息ピッタリぶりにヤキモチを焼いたからではない。決して。


 ——閑話休題。


 相手は、茨城県代表の潮来(いたこ)(ひがし)中学校撃剣部。


「茨城じゃ指折りの強豪よ。毎年の予選で、鹿嶋第一中学校卜伝隊(ぼくでんたい)と優勝争いをする図式が定番化しつつあるわ」


 というのは、峰子の弁である。


 無論である。そもそもこの天覧比剣まで勝ち上がっている時点で、どの学校も警戒に値する。


 神奈川代表と新潟代表による第一試合が行われている間、僕はその試合がずっと続いていて欲しいと内心思ってしまった。僕に心の準備期間を無限に与えて欲しいと思ってしまった。


 しかし、そんなものはない。いかなる時間の用途であっても、限りある時を持った人に無限の時間が与えられることはない。


 神奈川代表の勝利とともに、第二試合がとうとうやってきてしまった。


 しかし、その時が来たら来たで、覚悟も自然に決まるものだ。


 どういう心境であれ、結局、戦う以外の選択肢は存在しないからである。




 そうして————東京都代表(富武中学校)茨城県代表(潮来東中学校)による、二回戦第二試合が始まった。














 峰子に聞いた話だと、茨城県潮来市は、淡水湖の北浦(きたうら)を挟んで、鹿島神宮のある鹿嶋市と向かい合わせに存在するという。


 現在では、潮来と鹿嶋の両岸を横一文字に結ぶ鉄道橋が北浦にできているらしく、潮来沿岸と鹿島神宮前の間を気軽に四分くらいで行き来できるそう。それによって人の往来も活発となった。


 そのため、剣聖・塚原卜伝(つかはらぼくでん)の聖地であり、その卜伝の創始した鹿島(かしま)新当流(しんとうりゅう)の本場である鹿嶋市へと、潮来市から剣を習いに通えるようになったそうだ。


 潮来沿岸近くにあるという潮来東中学校撃剣部には、その関係からか、鹿島新当流の使い手が多い。


 さらに実力的にも名を挙げたものだから、新当流の本場に住み、同じく新当流使いの多い鹿嶋第一中学校撃剣部は危機感を抱いたらしい。


 ゆえに本場としての矜持(プライド)を守るべく、撃剣部から「卜伝隊」という露骨な名前に変え、毎年の予選で潮来東中学と張り合っている。ある意味、天覧比剣よりも重要視しているらしい。


 ——今年の勝者は、潮来東中学だった模様。


 まあそんな地元の事情から、潮来東中学校のレギュラーは、三人とも鹿島新当流の使い手。


 使い手である峰子から、改めて鹿島新当流についてのおさらいをした。

 宮本武蔵と並んで有名な剣豪、塚原卜伝が創始した剣術。

 甲冑の敵を想定した戦国期の(おもむき)を濃く感じる剣術で、甲冑の急所狙いの技が多い。主に小手とか。

 大きく迅速な体捌きで相手の太刀をギリギリでいなしながら斬るという、いわゆる「肉を切らせて骨を断つ」ような大胆な剣技が主な特徴だ。


 新当流がどういう剣術なのかは、その使い手である峰子の剣を近くで見てきたから分かっている。


 だけど剣術というのは人間が使うモノだ。

 そして人間は、決められたパターンの動きだけをする機械ではない。

 その人の個性によって、振るい方がどうしても違ってくる。

 だからこそ剣術は、神道流(しんとうりゅう)陰流(かげりゅう)念流(ねんりゅう)というたった三派から、数多の流派へと枝分かれしていったのだ。


 結局、絶対安全な戦法は無い。その時その時で対応するしかない。


 そういうわけで始まった——先鋒戦。


 西半分を使った第一会場から聞こえてくる竹刀の音を他人事のように聴きながら、僕は東半分の第二会場の中央に立っていた。


 対面している僕の試合相手は、僕よりも小柄な女子だった。


 名前は、櫛田(くしだ)(いね)というらしい。


 僕はその櫛田さんに一礼。彼女も慌てた様子で素早く一礼。……なんというか、動きがちょこちょこしているというか、見ていて放っておけない感じの子だなぁ。


「——おコメちゃーん! 緊張すんなー! あんたなら大丈夫だから! 納豆みたいに粘り強くなー!」


 会場の端にいる潮来東中の次鋒の女の子が、そのように励ましてくる。


 櫛田さんはそれにピクッと反応して、その次鋒の子に小さく一礼。


 なるほど、「稲」だから「おコメちゃん」か……僕は思わず微笑ましく感じ、口元が緩む。


 しかしそこで僕はハッと我に返り、己の油断を戒める。昨日の開幕戦で、潮来東中の強さは目の当たりにしているはずだ。警戒を厳とせよ。


 僕は「正眼の構え」を取る。

 中段に真っ直ぐ構えられた剣尖の向こうにいる櫛田さんは、体を左に開いた半身の体勢で、竹刀を中段に構えていた。鹿島新当流の「清眼(せいがん)の構え」といったか。


 面金の向こうに見える気弱そうだが大きな瞳が、強い気を帯びる。


 それを剣尖越しに浴びた僕は、風のような圧力を錯覚した。しかし裸足の指で床と地球を掴んで、この場に己の存在を固着させる。


「一本目——始めっ!!」


 審判の鋭い開始の一声とともに、


 僕の小手に、竹刀の剣尖が一瞬で迫った。


「っ!」


 僕は小手を後方へ逃しながら足腰を鋭く切り、その勢いで竹刀を震わせ、櫛田さんの竹刀を横へ弾いた。その防御からほぼ間を作らず瞬時に反撃の刺突へと繋げる。至剣流『鴫震(しぎぶるい)』。


 櫛田さんは僕の刺突を小さく避けながら、竹刀に竹刀を被せる(・・・)。そこからさらに鋭く進み出ながら被せる圧力を強めていく。確かこれは『(ばく)ノ太刀(のたち)』といったか。このままだと僕の竹刀が押さえ込まれてガラ空きになる。


 それより前に、僕は我が身を踊るように捻り、竹刀ごと逃れ、櫛田さんの左側面を取りながら円弧軌道の太刀を発した。


 僕の『颶風(ぐふう)』にも、櫛田さんは稲妻のごとく反応した。竹刀の鍔付近で受けたかと思ったら、僕の左を迅速にすれ違いざま面を狙ってきた。攻防の転換が早い!


 が、身長が僕より低いせいで斜め上へ竹刀を振らざるを得なかったため、僕は軽く体を傾けるだけでそれをどうにか避けることができた。だが櫛田さんは避けられるやすぐに振り返りざま、竹刀を右手だけで振り放ってきた。狙いは胴。片腕だけで振っている分リーチが長めで余裕に届く距離。


「っの!」


 僕は間一髪で防御が間に合い、竹刀の鍔付近でその一太刀を受けた。


 その受けた剣に吸い寄せられるように櫛田さんが急迫。竹刀を両手持ちに変え、鍔迫り合いとなった拍子に全体重をぶち当ててきた。


「ぐ——」


 どんっ! という小柄な体には不釣り合いなインパクトに、僕は咳き込みそうなショックを覚えながら後方へ弾かれた。


「——小手あり(・・・・)!! 一本!!」


 …………え?


 厳しく発せられた審判の宣言に、僕はたたらを踏みながら唖然とする。


 どういうことだ? 小手? いったい、いつ打たれて——


(……そうか。体当たりで僕を突き飛ばして、離れた瞬間に(・・・・・・)小手を打った(・・・・・・)のか)


 体当たりの衝撃の方が僕には大きく感じられたから、小手を打たれたことを感知することがうまく出来なかったのか。


 競技撃剣は面・小手・胴のいずれかに竹刀が触れるだけで(・・・・・・)勝つ。可能な限りの男女平等の追求と、持っているモノが刀であると想定してのルールだ。そこをまんまと利用されたわけである。


 加えて、強い衝撃を当てることによって一瞬だが判断力を奪い、小手打ちへの対応をしずらくする工夫。


 ——見事だ。


 一本取られたというのに、悔しさじゃなくて嬉しさが湧いてくる。


 こんな面白い戦い方をする剣士に会えるなんて、やはり天覧比剣は帝国剣士にとっての最高の舞台なのだ。


(今度は——僕の番だ)


 開始位置へ戻ると、僕は右足を引き、右こめかみの隣で竹刀を並行に構えた。

 至剣流では鉄壁の防御の構えと言われている「稲魂(いなだま)の構え」である。


 対し、櫛田さんが見せたのは鹿島新当流の「(しゃ)の構え」。右足を引いて腰を落とし、左肘を前へ張り出した構えだ。その左肘の裏側に、竹刀の姿が隠れる。

 

「二本目——始めっ!!」


 今度は一本目のような迅速さは見せず、じっくりとこちらの出方を伺ってくる櫛田さん。


 僕が近づけば退き、退けば近づく。


 だがそう長く続くはずも無く、櫛田さんが前へ出た。肘にブラインドされていた竹刀が瞬時に斜めの軌道を描いて、なおも上段で並行になった僕の竹刀まで迫る。まずは竹刀を弾いて、打ち込む隙を作ろうという算段だろう。


「トゥッ!!」


 そうなる前に、僕は火花が散るような気合を交え、櫛田さんとの間合いの中に剣を放った。電光石火で宙を駆け、やってきた櫛田さんの竹刀をしたたかに弾き返した「く」の字の太刀筋は『電光(でんこう)』である。


 僕の『電光』の衝撃で、櫛田さんの小さな体が浮き上がった。仰向けに倒れる。


 それを隙とみなして追いかけようとした僕だが、途中で「おかしい」と判断してやめた。

 

 案の定、櫛田さんは素早く後転して受け身を取り、しゃがみの体勢になった拍子に中取(なかど)り(両手で剣の両端を持った状態)の持ち方に竹刀を構えて切っ尖を僕に向けた。おそらく、僕が近づいてきたら、あの構えで受けながら小手を打つつもりだったのだろう。


 櫛田さんが再び俊敏に迫る。中段にある僕の竹刀に己の竹刀を被せて押さえようとしてくる。


 僕は左足ごと竹刀を引っ込めて彼女の竹刀をさばきながら、左耳隣に垂直に竹刀を構えた「陽の構え」へ移行。次の瞬間には引っ込めた左足と竹刀を鋭く体の中心に戻し、その勢いを得た切っ尖を鞭のごとく発した。至剣流『雁翅(がんし)』。


 だが、流される。剣尖を下にして右上段で構えられた櫛田さんの竹刀が、僕の一太刀に擦れ、後方へ受け流した。さらに次の瞬間には櫛田さんの竹刀が瞬時に(ひるがえ)り、僕の面へ迫る。


 僕は退歩しながらその一太刀を(まる)く受け、同時に切っ尖を櫛田さんへ向けて威嚇する。だが『綿中針(めんちゅうしん)』の用法通りの反撃には移らず、さらにもう一歩退がる。

 

 が、あろうことか、櫛田さんは己の面を、僕の切っ尖へ向かって自ら近づけてきた。


 何のつもりだ、当たるぞ——僕が戸惑っている間に、すでに竹刀は櫛田さんの面金の薄皮一枚の距離まで近づいていた。


 ええいもう突いてやると切っ尖を突き出したその刹那、櫛田さんの姿が竹刀の延長線上から(かすみ)のように消え、僕の左懐に来た。同時に僕の左小手へ彼女の一太刀が迫る。……やっぱり面は囮。けれどよほどの胆力と身のこなしの速さが無ければ逆に打たれかねないギリギリの間合いだった。


「っ、と!」


 僕はどうにか防御が間に合った。「陽の構え」を取り、櫛田さんの一太刀を受ける。


 さらに僕は大きく進みながら、すれ違いざま櫛田さんの面を横一線に打ちかかる。だが屈んで避けられる。


 接近し、打ちかかる櫛田さん。だがすでに「稲魂の構え」となっていた僕は、『電光』の太刀でそれを弾く。


 そこからさらに突きを出す僕。だが櫛田さんはそれとタイミングを被せるような形で素早く半身となり突きを紙一重で回避し、同時に右手だけで竹刀を立円(りつえん)軌道に放ってきた。……確かこれは『鴫羽返(しぎのはがえし)』といったか。


 僕は全身を逃しながら旋回し、その一太刀を防御。同時に櫛田さんの左隣へ移動し、面の側頭部を狙って剣に弧を描かせた。『颶風』である。


 一瞬で「避けられない」と悟った櫛田さんが、面を警戒してすぐさま竹刀で守る。


 両者の竹刀がぶつかり合う直前に——僕の竹刀が縮んだ(・・・)。面を打つべく大きく伸ばしていた腕を一気に引っ込めて、リーチを短くしたのだ。


 結果どうなったか?


 面の左側頭部を守る竹刀には届かず、その竹刀を持った小手に切っ尖が当たった。


「——小手あり!! 一本!!」


 審判が瞬時に僕の一本を悟り、それを威勢よく宣言。


 取り返した。これでお互いに、あと一本取られたら負けだ。


 双方、再び開始位置へ戻り、構える。


「三本目——始めっ!!」


 審判が「め」と口にした時点で、僕はすでに櫛田さんの面に「金の蜻蛉(トンボ)」を見ていた。その「金の蜻蛉」を剣尖で捕えんと刺突を繰り出す。……『劣化(れっか)蜻蛉剣(せいれいけん)』。体力の消耗が激しい半至剣(・・・)。だが最後の一戦であるため出し惜しみはしない。


 だが、僕の刺突が当たるよりも微かに早く、剣に宿る「一瞬の必勝」が消えたようだ。

 彼女はその小さな頭を軽く傾げて左側頭部の横を素通りさせ、さらに僕の竹刀を右へ強く弾いて急迫してきた。

 僕の左をすれ違いざまに放ってきた、鋭角三角形を水平に描くような太刀筋は『地ノ(ちの)角切(かくぎり)』という技だ。狙いは胴。


 間合いに入ったら避けるのが非常に難しいその一太刀を、しかし僕はどうにか避けられた。弾かれた竹刀のちょうど少し先に「金の蜻蛉」が現れたので、そこへ向かって剣尖を思いっきり伸ばした結果、僕はバランスを崩して右へ横倒しとなり、それによって『地ノ角切』を避けるに至った。


 倒れてから迅速に受け身を取って立ち上がり、構え直す。「正眼の構え」。


 櫛田さんも迂闊に攻めることはせず、構えを作って僕の出方を警戒していた。右足を引き、右耳隣で剣を立てたその構えは至剣流の「陰の構え」に似ていたが、ソレよりもやや腰が低く、剣尖も少しだけ後傾している。同音異字の「(いん)の構え」だ。


 お互い、少しずつ近づいていく。


 間合いが触れ合いそうになったらまた退がり、角度を変えてからまた近づけてまた退がって……といった具合のやり取りを続ける。駆け引きと、体力の回復のためだ。


 やがて、僕が先んじて動き出した。全身に刀を巻きつけるように振る渦上の太刀筋。『旋風』。太刀筋を密に纏う攻防一体の技。


 対し、櫛田さんは僕の竹刀が振り抜かれる絶妙のタイミングを突く形で小手を狙ってきた。


 僕はそこで『旋風』の動きから、『颶風』の動きへ移行。踊るように移動して小手打ちを回避し、面を狙った一太刀を発した。これら二つの型は基軸となっている体捌きや手の内が共通しているので、簡単に繋げられるのだ。


 櫛田さんは瞬時に一歩退き、僕の竹刀を受け止めて切り結んだ。先ほどの一本のようなやり口はもうさせない、そんな意思が見えた。


 そこからも、幾度も剣を交えた。

 櫛田さんの剣は、その小柄な体を活かした俊敏な剣だ。スピードだけで言えば、峰子以上である。

 ゆえに、こちらも迅速な判断が求められる。

 少しでも判断が遅れたり、もしくはその判断が間違えば、あっという間に斬り刻まれるだろう。

 結果的に、先の先を読むほどの余裕が無く、場当たり的な対応を強いられる。

 

 だが——こういうスピード重視の剣は、僕の『劣化・蜻蛉剣』と非常に相性が良い。


 『劣化・蜻蛉剣』は、『蜻蛉剣』の持つ「必勝の軌道」の一部である「必勝の一点」を見せてくれる。

 その「必勝」の効力はほんの一瞬(・・)だけ。中途半端な半至剣。

 だが、一瞬一瞬(・・・・)に的確な判断を強いられる「速い剣」の対応に、これほど適した技は無い。

 辛い戦いだったが、神速の太刀筋を誇ったミーチャの『径剣流(けいけんりゅう)』に打ち勝つことが出来たのは、その「神速」と『劣化・蜻蛉剣』との相性が非常に良かったからに他ならない。

 

 つまり——全てを出し切れば、勝ち目は大いにある。


 そして、お互い後が無くなった今が「その時」だ。


 僕は『劣化・蜻蛉剣』を惜しみなく使った。

 迅速に連発される櫛田さんの剣を、僕の剣に宿る「一瞬の必勝」が防ぐ。

 さらに次の一撃にも「一瞬の必勝」を宿した剣で防ぎ、同時に次の攻撃を事前に潰す。

 櫛田さんはさらに速度を上げて、必死で食らいついてくる。攻撃は最大の防御とばかりに、僕が防戦一方になるような連撃の嵐を仕掛けてくる。

 が、僕にだけ視える「金の蜻蛉」は、その怒涛の連撃の中にも「必勝の一点」を見出す。

 僕は竹刀の剣尖をそこに添えるだけでいい。

 勝つまでそれを繰り返せばいい。


 やがて、


「胴あり!! 一本!! ——勝負あり!!」


 勝敗が決した。


 その頃にはすでに、僕は今にも倒れそうなくらいヘトヘトに消耗していた。


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