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第7話 トレバーの眠たい一日

「ちょっと手伝ってトレバー」


リーンと結婚するちょっと前にネリーがやってきた。

近所の事件の調査にちょっと協力して家に帰って眠ったばかりだったのに、また手伝えという。


「もう手伝わねえって言ったろ!」

「うちの部下は頼りにならないの。それにもう三時間くらいは寝たでしょ」

「うるせえ!」


寝てる途中で起こすような奴は誰だろうと許さん。

扉を閉めて追い出した。


「ねえ、お願いだからさ。部下に聞き込みをさせたらやっぱりパララヴァの連中が連れ去ったみたい。それに被害者の男はジュティスを買った男とは別人だった」

「聞いてねえ!寝る!」


ドアの向こうでまだ何か言ってる。


「たぶんきっと抗争になる。その前に止めたいんだ。被害者の男の検死をやって欲しい。それと仲間の捜索も」

「うるせえええええ!」


かなり深く眠っていた所を無理やり起こされて非常に気分が悪い。

家の鍵をもってやがるから非常にタチが悪い。

追い出したのにまた鍵を開けて入って来やがった。


「ねえ、お願い。パララヴァにはうちの部下を完全に舐められてるの」


布団を被っている俺の上に飛び乗ってきてゆさゆさ揺さぶられた。


「くっそ、もう眠いんだって。徹夜で仕事してるんだぞ。こっちは!」

「ねえ。この街で頼れる男はあんただけなんだってば」


さっきの偉そうな態度と違って今度はしおらしくお願いされた。

ベッドの上で馬乗りになって懇願してくる女をみるとつい絆されてしまう。


「しょうがねえな」

「やってくれる?」


喜色満面になるネリー。


「報酬は前払いな」


さっと体勢を入れ替えて押し倒した。


「ちょっと!駄目。今は駄目なんだってば」

「何言ってんだ。いつもみたいに可愛らしく振舞ってみろって」

「ほ、ほんとに今は困るんだって!」

「別にパララヴァも死体も逃げやしねーよ」

「そういうんじゃなくて!」

「うるせえ、俺に手伝って欲しけりゃ大人しくしろ」

「あ、あんたね。外道過ぎない?」

「命がけの仕事に巻き込もうとする奴が何言ってんだ。大人しく天井のシミでも数えてろ」


ふざけてちょっと下品な笑みを浮かべて見せる。

まあいつものことだ。

今日の彼女はいつもより興奮していたようだが事件で盛り上がってたんだろうか。


 ◇◆◇


「よーし、じゃあ俺に任せとけ。パララヴァをぶっ殺してくればいいんだな。領主の命令とあらば仕方ねえ」

「違う!」


せっかくテンションが上がってきたのに暗殺は中止された。


「なあ、パララヴァの所についていくとガンビーノに面倒かけるしやっぱり止めないか?」

「お、お前やるだけやっておいてそれか」

「んじゃあ、顔を隠せるような面頬付きの兜と全身金属鎧を着るとか」


フルプレートアーマーの男がいれば所詮自警団のパララヴァに威圧感を与えるだろう。


「分かった。貸してやるからそれでもいい。まずは検死だ」

「へいへい」


ネリーと共に遺体安置所に行くと男は多少マシな状態に整えられていた。

一応医者も呼ばれているが、この街の医者の質は低い。


「記録簿を寄こせ」

「ああ」


ネリーが確認した物をこちらでもチェックしながら遺体を確認する。


姓名:不明

国籍:不明

人種:イレス人

体格:頑健、高身長

身長:1.9トルメ

体重:腐敗し液体化している部分も多く不明

状態:服を着用しておらず下着と装飾品のブレスレットのみ

死因:窒息死


「遺体をひっくり返してもいいか?」

「必要なら構わないが、腹が潰れるぞ」


腐敗してお腹がガスで大きく盛り上がっている。


「そうだな。少し起こしてみるだけにしよう」


背中を見ると死斑に混じって刺青が確認出来る。


「刺青は確認したか?」

「いや・・・気付かなかった」

「拾った性器を出してくれ」

「あ、ああ」


もう腐敗で溶け始めてわかりづらいがこちらにも刺青がある。


「ほれ比べて見ろ。同じものがある。部分的にしか残っていないが円の一部とそれを囲む小さな三角形」

「これが何だ?」

「完全な構図はたぶんこうだ」


記録簿に想像図を描いた。


「分かるか?太陽と男根を象徴化した神聖隊の刺青だ」

「じゃあ、こいつは聖王家の部隊か」

「そうだ。彼らは同性愛者の部隊で結束が固い。娼婦を買ったとは信じられない」

「しかし現に娼婦の家でトラブルが起きている」

「ろくな証拠品が残ってないのが惜しいな。悪ガキ共が何処に売り払ったのか調べて出来る限り押収した方がいい」


神聖隊が何故ここに来ているのか、目的は何か、何故娼婦を買ったのか。

何もわからない。


「入市の記録は?」

「調べさせているが神聖隊とは隠しているだろう」

「だろうな。神聖隊の男は愛人同士二人一組で行動する。お前聖王家に睨まれるような心当たりはあるか?」

「そりゃまあな。お前も知ってるだろう」


彼女の親父さんは議会派であり神殿、王党派、貴族の権力を制限する派閥に入っているので敵対している。


「だが穏健派だし聖王家とは直接敵対してないだろう」


実権は議会と市民に譲り渡すが、聖王家は象徴として宗教界の為にも残そうとしている。

他の過激派をさしおいてわざわざ敵対する必要は無い。


「まあ、そうなんだが向こうが何を考えているかなんてわからない」

「とりあえず性器を千切られた奴を探そう。もしパララヴァが何も知らずに監禁していたら不味い」

「他の神聖隊が探しに来るか?」

「そりゃ来るだろうな。そして報復に動く。チンピラ共じゃ銃を持ち出したって本気になった連中には勝てないぞ」


トレバーとしてはパララヴァ一家を潰すんなら潰して貰っても構わない。


「近くに部隊の仲間がいたらもう市内に潜入しているだろうか」

「たぶんな。遺体を出来るだけ清めて連中に引き渡す準備をした方がいい。性器も証拠品として厳重に保管するんだ。娼婦を買った神聖隊ってのは連中にとって大ダメージになる。お前はそれを取引材料にして身を守れ」

「わかった、ありがとう」


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