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第5話 領主代理

 毎日毎日厄介ごとがやってくる。

ある日、殺人事件が起きた。

パララヴァ一家とガンビーノ一家のどちらでもない土地で起きた殺人事件。

もぐりの娼婦が客を殺害したらしい。


通報を受けて部下と共に現場に行くと、被害者の遺体は街灯に吊るされていた。

スラムの込み入った場所にあり、子供らがゴミをぶつけて遊んでいる。


「こら!現場を荒らすな!」


部下に命じて子供を散らした。

近づくと凄まじい悪臭と夥しい数の羽虫がたかっていた。


「レドラム、記録を」

「はいお嬢様」


警察権、裁判権を聖王家から認められている為、事件が起きた時は自力で解決しなければならない。司法改革で上告する権利が市民に与えられた為、領主の審判に不満があれば市民達は州政府の裁判所に持ち込むことが出来る。


「ダルトン暦1790年3月15日ネリー・トレイドール・ラ・ヴァル・レンヌ・ディヴォーがアレスト通りの街灯に吊るされた遺体を確認」

「記載しました」

「それで第一発見者は?」


レドラムは常に自分の側にて報告を聞いていないので街中を担当している衛視に尋ねる。


「存じません」

「通報したのは?」

「通行人がいい加減なんとかしてくれと苦情を言って来ました」

「その者は何処に?」

「さあ」


部下達はやる気が無い。

自警団の勢力はどんどん拡大し、犯罪を取り締まれず、父上は出陣中で多少なりとも忠誠心があり任務に忠実な者は出て行ってしまっている。


「私は聞き込みをしてくる。お前達は梯子を調達して降ろしなさい」

「はいお嬢様」


 ◇◆◇


通行人A「いつからアレがあそこにあったかって?さあ・・・昨日か一週間か二週間か一ヶ月前かなあ」

ネリー「昨日な訳が無いでしょう」

通行人A「そりゃあどうして?」

ネリー「昨日死んだ者があんなに腐っている訳が無い」

通行人A「そうか?うちの親父なんて生きてる頃からあんくらい悪臭が酷かったもんだ」


ただの酔っ払いでまるで参考にならなかったので聞き込みを続ける。


通行人B「死体?死体なんてどこにある?」

ネリー「あれが見えないのか?」

通行人B「あいつまだ動いてるじゃんよぉ死んでねえよ。ちょっと高い所が好きなだけさ」

ネリー「風で揺れているだけだ」

通行人B「風なんか吹いてねーよ。あんたラリってるのか?」


工場から立ち昇る煙を見ればわかる通り、かなりの勢いで風が吹いている。

このハーブ中毒者はげらげら笑って話にならなかった。


住人A「ああ、ようやく来てくれたのかい?区長が一週間前に通報した筈なんだけどね。今まで何してたのさ」

ネリー「申し訳ありません、事務手続きに問題があったようです」

住人A「アレがぶら下がり始めたのは二週間前くらいかしらね」

子供A「そんなに前だっけ?」

ネリー「正確にはいつです?」

住人A「そんな細かい事なんて覚えちゃいないよ。しょっちゅう酔っ払いがよじ登ってぶら下がってたりしてるんだから」

ネリー「明らかに首を吊るされてますよ」

住人A「みせしめでぶら下げるくらいよくあることだろ。知らないよ」

ネリー「ガンビーノやパララヴァから通報するなと脅されていた訳では無いんですよね?」

住人A「ここらはトレバーさんがいるからそんな脅しはされないよ」


そういえばトレバーの家が近かった。


ネリー「娼婦が客を殺したと聞きましたが」

住人A「さあ、知らないね」

ネリー「娼婦は何処に?」

住人A「知らないったら」

ネリー「遺体を吊るす所をみた人間はいませんか。何時頃吊るされたのか」

住人A「夜中じゃないかね。なんだか騒がしかったような気がしないでもないけど、酔っ払いが騒ぐのはいつものことだから気にしちゃいなかった」

ネリー「わかりました。何か思い出したことがあればお知らせください」


時間が経ちすぎて住人の記憶はあまりアテにならない。

娼婦と客が揉めたという証人が欲しい。

娼婦は何処にいるのだろうか。

娼婦に大柄な男を吊るすほどの力があるとは思えないから娼婦を働かせていた男が吊るしたのだろう。もぐりの娼婦という通報が確かならばガンビーノかパララヴァが娼婦を連れ去ったか。


住人B「娼婦?ああ、確かにそうかも。俺も買った事があるがそんなにおおっぴらにやってた訳じゃない」

ネリー「当事者の女性をご存じですか?」

住人B「アレストダイナーの給仕だよ。たまに金に余裕がある奴を見繕って遊んでた」

ネリー「娼婦は副業ということですか」

住人B「そうだ。だから平気だと思ったんだろうな。この界隈じゃファンも多くてな、吊るしたのはファンの誰かだろう」

ネリー「彼女の名前と自宅はご存じですか?」

住人B「名前はジュティス。家はすぐそこだから連れてってやるよ」

ネリー「お願いします」


何十人に聞き込みをしてようやくシラフでまともな男に会うことが出来た。

無駄なようでもやり続けるしかないということだ。


 ◇◆◇


「なんだ、ようやく確認に来たのか」

「トレバー。こんなに現場近くに住んでいるのなら通報くらいしてくれたっていいだろうに」


部下二人に現場の封鎖作業をやらせているとトレバーが出てきた。


「したよ、したって!お前らが来るのが遅すぎるんだって」

「そうなのか?」

「一昨日出張から帰ってきたら死体がぶら下がっててご近所さんにあれはなんだ?って聞いたら娼婦と揉めたらしいって聞いてな。もう区長が通報してるらしいって聞いたが昨日もまだぶら下がってるからどうなってんだ?って通報してやったんだぜ」

「そうか・・・。悪かった」

「おう」


そういえばここ一ヶ月くらいガンビーノの護衛で隣国まで出張して先日戻ってきたばかり。

となると彼は詳しい状況を知らないのか。

頼りにならないな。


「被害者の女性の事は知っているか?」

「被害者は男じゃないのか?」


そういえばそうだった。


「もぐりの娼婦ジュティスという女性は何処にいる」


先ほどの住人に案内して貰って住居を確認したがベッドの上は血痕が残っていた。


「知らねえなあ」

「ガンビーノが連れ去ったわけじゃないの・・・か?」


部下が近くにいるのでちゃんと仕事用の態度を取り繕わないといけない。


「ボスは俺とずっと出張中なんだから知らねえよ。副業娼婦の事なんかいちいち構ったりもしてない」

「副業だってことは知ってるんだな?」

「まあ、な」


たぶんトレバーも買った事があるんだろう。

ちょくちょく女を連れ込んでいると聞いている。


「現場検証を行う。お前も手伝ってくれ」

「なんで俺が・・・」

「この後遺体の確認も行う。死因の分析も手伝え」

「えええ。俺は仕事が終わったばかりでこれから寝る所なんだぞ?」

「知らない。これくらいして手伝って欲しい」


トレバーは渋々ながら手伝ってくれた。


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