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第22話 強襲②

 侵入者は三名。

以前に見た白銀の艶やかな光沢を放つフルアーマー。


玄関から入ってきた一人目に向かい家具を蹴り飛ばし、その勢いで体をひねって窓からの侵入者に接近、三人目は腕から網をこちらに射出する。

網に向かって接触した二人目を突き飛ばす。


逮捕命令を受けているのなら少しはやりやすくなった。

あのヘルメットの視界はあまりよくない。

死角に滑り込み、以前見た短剣の収納から先にこっちが抜いてアーマーの隙間に突き刺す。


良く出来たアーマーで隙間からでは致命傷を与えられない。

そこで窓から下へ投げ落とした。


玄関で足止めした一人目は、リーンを捕えようとして熱湯をぶっかけられていた。

ネリーは怯えながらも拳銃を抜き、一人目に射撃するがヘルメットと胸甲で全て弾かれる。


熱湯で一瞬怯みはしたが、短剣を抜いて二人に襲いかかろうとした所でトレバーはぎりぎり援護に間に合い短剣同士がぶつかって大きな火花が散る。

短剣をスライドさせて指の一部を切り飛ばし、横に回り腰の噴射装置のスイッチを強制的に入れると一人目は凄い勢いで天井に激突した。


「オラァ!」


天井に突き刺さったそいつの足を掴んで引き下ろし、網に絡まったまま立ち上がってきた二人目に叩きつける。


「どんな腕力よ」

「うっせ」


もがく二人に短剣で冷徹に装甲の薄い所から止めを刺す。

そこで少し油断してしまい、屋外から大きな針の射出攻撃を受けて腕に刺さってしまった。


「旦那様、隣の建物に」


後退しながら針を抜き、射線から逃げた。


「ちっ、まだかなりいるな」


下に投げ落とした奴、屋外の建物にいる奴、恐らく建物の1Fの出入り口やネリーが乗ってきた馬車を抑えてる奴もいるだろう。


自分一人ならともかく女性二人、特にリーンを守り切れる自信が無い。


「旦那様、お手当を」

「ああ」


リーンの治療ですぐに傷は癒えるも、状況は厳しい。


「都合よくガンビーノとかパララヴァとかお前の部下とかが救援に来たりしないかな」

「無いでしょ」


特殊部隊に関する情報はその筋では広まったが、誰も装甲を貫ける武器を持ってない。


「彼らも自分達も取り締まりの対象になると思ってる頃でしょうけど、抵抗手段も無いし夜逃げに動いていると思う」

「くそ、もうちょっと手数が欲しいな」


逮捕を最優先にしているようだから、自分一人だけ飛び出せば二人はすぐには殺されないだろうが、一対一に持ち込めればともかくそうはいくとは思えない。

トレバーも二人以上を敵に回した場合、かなり難しいと考えた。


「あいつら生かして囮にすればよかった」

「なるほど、さすが旦那様。いいお考えです」

「ん?」

「少し役に立って貰いましょう」


ネリーが何かしたのか確かに止めを刺した筈の二人の神聖隊がよろよろと起き上がってきた。


「うお!?」


”ヒュス、タス、たすけ・・・て”


起き上がろうとしては倒れ、二人は助けを求めた。

すると屋外で警戒していた敵が噴射装置を使って飛び込んできて二人を助けようとした。


トレバーが短剣を構えて相対したが、その必要は無く起き上がった神聖隊二人が飛び掛かり、短剣で喉を差して殺害した。


「なんだ?」

「旦那様、片付きました。まだいますか?」

「ん、ああ。たぶんいるはずだ」

「わかりました。もう少し頑張ってくださいね」


リーンは明らかに二人の神聖隊に話しかけている。


”も・・・う、やだ、くらい・・・よ”

”解放して・・・してくれ。つめたい。いたい”


「あとちょっとですから頑張って」


ネリーの励ましに応えて二人、いや、今死んだ三人目も起き上がり屋外に出ていく。

そして外の神聖隊と同士討ちが始まった。


”やめてやめ・・・て”

”どうして・・・兄さん・・・どうして・・・剣を向けるの?”

”愛して・・・る。殺させ・・・ないで。殺して・・・”


神聖隊の男は泣きながら愛人を殺す。

彼らは泣き叫びながら同士討ちをし、死者は死者を増やした。


「あら、困りましたね。逃げてしまいます」


ドアを開けこっそり様子を伺うと逃げ始める者が出てきた。


「よし、体制を整えて戻ってくる前に俺達も逃げよう。ネリー。立て、いくぞ」


怯えて腰が抜けていたネリーは手を掴まれ助け起こされる。


「な、なんで落ち着いてるのよ。あの人、死んでたよね?泣いてたよね?」


魂の叫びが辺りに木霊し、念話が聞こえない野次馬さえ怯えさせていた。


「そうだな」

「リーンさんが何かしたんでしょ?そうでしょ?」

「まあ、そうだろうな」

「おかしいと思わないの!?」

「別に?俺の愛しい嫁さんだ。今も俺とお前を助けてくれた。それが今わかる全てだ」


ネリーが怯えるのは分かるが異常な人間は山ほど見てきた。

リーンの異常性は自分達には向いてない。


「さすが旦那様です。さぁ共に参りましょう」


リーンは怖くありませんよ?と微笑みながらネリーの腕も取り、一緒に館を後にした。


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