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第10話 領主代理③

第10話 領主代理③


戦いは終わった。

神聖隊はパララヴァ一家を10名ほど虐殺し、被害も無く立ち去った。

トレバーも体をあちこち切り裂かれて大怪我をしていた。


「ハーマン、彼に手当をしてやってくれ」

「まあ、仕方ねえな」


ハーマン達だけでは一人も倒せずに殲滅される寸前だった。

こちらの銃器は一切通じなかった。


「くそ、あんな邪魔な鎧着てくるんじゃなかった」


フルプレートは防御の役に立たず、動きを阻害するだけだった。


「悪い、こんなに大怪我をさせるつもりじゃなかったんだ」

「ふん、そのうちこの貸しは返してもらうぜ」

「わかってる。なんでも言ってくれ」


ハーマンが呼んだ闇医者が来るまでの間に鎧を脱がせて傷口を洗い流すくらいはしてやった。


「にしてもとんでもねえ連中だったな。あれが軍の特殊装備なのか?」


ハーマンはどうにかしてあれを入手できないか算段を巡らせていた。


「軍とは違う。神殿勢力が搔き集めた金で開発してる装備だ」


革命家達は宗教勢力も敵視しているので彼らも彼らなりに軍事力を必要としている。


「開発というか古い装備を持ち出して改良したって感じだな」


トレバーが内容を修正する。


「そうなのか?」

「そうだ。装甲は単純に特殊合金製で硬いがさらに神聖な力とやらで覆われてるから通常弾や普通の武器じゃ傷もつけられない」

「トレバー、そいつを入手する方法は?」

「俺があんたに教えてやる義理はねえ」


ハーマンは舌打ちする。


「まあ、今回はよくやってくれた。お嬢様の護衛で来たんだからガンビーノとは無関係ってことでいいんだよな」

「別に恩に着せる気はねえが、俺の家の近くで娼婦に仕事をさせたな?協定違反だぜ」


今回厄介事を招いたのはパララヴァ一家の不始末である。


「わかったわかった。撤収させるよ。つっても俺も知らなかったんだがな」


もぐりの娼婦をみつけた部下が暴走して脅して緩衝地帯で働かせて巻き上げていたらしい。

その辺の事情も聞くためにハーマンは娼婦も攫って確認していた。


「変なハーブをばら撒くのも止めろ。聞き込みで随分中毒者に遭遇したぞ。まともに会話も出来ないほどイカれた奴が多かった」


ネリーも注文をつけた。


「そうか?調べておくよ。俺だって客が増えるのは歓迎だが使い物にならんクズが増えちゃ困る」


領主が彼らを容認するのも一定以上の犯罪、衛生状態の悪化は防ぐ努力をしているからだ。


「腐乱死体を街中に放置するのもナシだ」

「わかったって。俺だってな病気が蔓延しちゃ困る」


これ以上責めると逆上しそうなのでここまでにしておいた。

傷の手当てが済んだトレバーはそのまま出勤しに出て行くという。


「今日くらい休んだら?」

「休むと給料減るんだよ」

「お金に困ってるの?」

「燃料代も馬鹿にならんしなあ」

「しょうがないな。足りないならいいなさい。今回のお礼に振り込んでおくから」

「おう、いつもすまねえな」


別に働かなくてもいいと言ったのに、結局小銭を稼ぎに出勤していった。


 ◇◆◇


「まったくとんでもない損失だぜ」


死体だらけのハーマンのアジトを引き払い、彼のごくごく個人的な自宅に連れ込まれた。


「でも不幸中の幸いだったんじゃない?あいつらは何か捜査でもしに来てたわけ?」


監禁した男から得た情報をこちらも知っておきたい。


「そう思う。神聖隊ってのは捜査活動でもしてるのか?」

「私も詳しくは知らない。拷問でそれらしきことを言ってた?」

「俺らは神聖隊なんてもの自体知らなかった。見せしめの為にいたぶっただけで別に何か聞き出そうとしたわけじゃない」


なら好都合だ。

回収した隊員を彼らは詰問し、ただのくだらないトラブルだと判明するだろう。


「女は?」

「単に客を取っただけだ。男はラリってたらしい」

「神聖隊は宗教的トランス状態になる為に薬物中毒者が多いって聞くからそのせいかしらね」


同性愛者が薬物でおかしくなって女性でも役に立つかふざけて暴行を加えたら反撃された、これまでに集めた情報からそういう筋書きとなった。


「女は例の商売に関わってた?」

「ん?さあ、どうだろう」


末端のやっている事までボスは詳しくは知らない。


「調べて。私たちの商売が王家に露見したら全員縛り首になってしまうし」

「神聖隊とやらはその為に来たってのか?」

「さあ、国境付近の貴族はもともと警戒されている。特に根拠があって来たわけじゃないかもしれない。今回の件で逆に不祥事を掴んだ以上、こちらが大人しくしていれば向こうも他所に注意を向けると思う」

「そう願いたいね。さあ、お堅い話はやめて楽しもうぜ。服を脱げよ」

「こんな血生臭い日にまで?」

「そういう時の方が興奮してるだろ。焦らすなよ。どうせガンビーノにも体を売ってるんだろ」


焦らすなといいつつ、自分から迫っては来ない。

彼らは屈服させ、自分の意志でやらせるのが好きなのだ。

自分の意志で何度も繰り返させ抵抗のハードルを下げていく。


「今度はもっと色気のある格好で来て貰いたいね」

「こういう女を屈服させる方が好みでしょうに」


少しだけ言葉を柔らかくする。


「違いない。言いなりになったら飽きて捨てるだろうな」


といいつつも最後まで抵抗すれば不機嫌になる男。

もう一線から退いた大親分で暴力も部下にやらせるだけ。


こんな男達を父はいつまで飼い続けるのだろうか。

そのうち密輸も取引も彼らのミスで嗅ぎつけられるかもしれない。


父はいずれ穏健派の主張でも連合は物足りず、ここまで手を回してくると想定していた。

先んじて手を打ったがそれは国ごと売り渡すようなものだ。

彼が安全に暮らせる土地を守る為にもまだこの男達を必要としている。


しばらくはガンビーノとパララヴァ一家にはあまり派手に商売をせずに協力して貰わねばならない。


 ◇◆◇


 その後父の留守を守り、領主の仕事に専念していたある日、トレバーが領主館を訪れた。


「よ、実は結婚したんだ。彼女に市民権をやってくれ」


ネリーさんの苦難はまだまだ続く

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