・石の町ブラッカに行くことになった
コムギと隣町のブラッカに行くことになった。
コムギはブラッカにあるお宝が欲しいんだそうだ。
一緒にきて欲しいって誘われて、俺は喜んでそれに乗った。
「じゃ、行ってくるぜ、爺ちゃん!」
「うむ、しっかりとムギちゃんをお守りせよ……。だがムギちゃんに何かあったら、わかっておるな、孫よ……?」
「へいへい」
「くぉりゃぁっっ!! 何かあったら、二度とこの村の敷地を踏ませんから覚悟しておれよーっ!!」
俺は支度を済ませると、爺ちゃんに呆れながら家を出た。
もうちょっと孫の俺をひいきしてくれてもいいのに、爺ちゃんは相変わらずのコムギのファンだった。
集合場所は村の西門。
山を下りるまでは、ロランさんが同行してくれることになっている。
って……ロランさんがもういるっ!?
俺は西門前のロランさんの前に駆け込んだ!
「す、すみませんロランさんっ、お待たせしてしまってっ!」
「ホリン」
ロランさんはオレンジブロンドがよく目立つ超イケメンだ。
40過ぎって話だけど、とてもそうは見えない。せいぜい20代後半くらいの容姿だった。
「は、はいっ!」
「私は待ってなどいないですよ。ただ今日のことがとても楽しみで、予定よりもだいぶ早くきてしまっただけです」
「よかった……。俺っ、次はもっと早くきますからっ!」
俺はロランさんを尊敬している。
この人は素晴らしい人だ。
うちの爺ちゃんだって、ロランさんのことを高く買っていた。
「ところで、コムギさんに挨拶はしないのですか?」
「え、コムギ? あ、居たのか、お前」
よくみたらコムギのやつも隣にいた。
今のは失言だったみたいで、コムギはぷりぷりと腰に手を当てて怒り出した。
「居ましたしーっ! ちょっとっ、この扱いの差露骨過ぎないっ!?」
「だってそうだろ、ロランさんは超すげー騎士で、超つえーんだぞ!」
「そんなのあたしだって知ってますからーっ!」
「ホリン」
「はい、なんですか、ロランさんっ!」
「女の子にはやさしくしなさい」
憧れのロランさんに、至極当然のことを言われてしまった。
だけど相手はコムギだ。
コムギと俺はなんていうか、こういうのが自然体っていうか……。
「これから貴方は町に行くのですよ? 町には貴方のような田舎者よりも、魅力的な若者がいっぱいです」
「だ、だから、なんですか……?」
「うかうかしていると、他の男に横取りされますよ」
え。コムギが、町の男に……?
よく考えてみたら、それは……あ、あり得なくもないことだった……。
コムギのやつ、世間知らずだし、人を疑うことを知らないし、誰かに騙されるかもしれない。
超イケメンに声をかけられても、コムギはそいつに付いていったりしないよな……?
「おい、コムギ」
「何よ?」
「都会の男に声をかけられても、ほいほい付いてくんじゃねーぞ。都会の男はなっ、あぶねーんだからなーっ!」
お、俺は何を言っているんだ……?
これじゃ逆効果だし、まるで空想の男に嫉妬してるみたいじゃないか……。
コムギは俺をニヤニヤのご機嫌の顔で見ている。
俺は、一瞬で嫉妬を見抜かれていた……。
「しょうがないなぁ~? ロランさんも注意しろって言ってくれたし、うん、そうするねっ!」
「そ、そうか……。はぁ……っ、ならいいぞっ」
話をうやむやにして西門を率先して出ると、ブラッカ行きの旅が始まった。
俺とコムギは生まれ育ったアッシュヒルに何度も振り返りつつ、不安を抱えながら山道を下りていった。
俺がコムギを守らないと。
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