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22/25

・夜のモクレンを二人で過ごした

 夕過ぎになると、コムギと大衆レストランで食事にした。

 食いしん坊のコムギはメニュー表とにらみ合って、迷いに迷った後に『ツナのバターソテー』を頼んだ。


 それは癖のない魚料理で、コムギはそれをパンに挟んで美味しそうに食べた。


「う、美味いな……っ、もうちょっとくれ!」

「じゃあホリンのもちょうだい」


 俺はコートレットを頼んだ。

 手間のかかる料理で、まだ俺のテーブルには届いていない。


「ホリン、頼んだ料理の正体知ってるの?」

「知ってるぜ、ロランさんのオススメだからな!」


「ああ……。仲がいいことで」

「おう、俺たちは最高の師匠と弟子だからな!」


 コムギは俺に呆れていた。

 ロランさんと俺は信頼で結ばれている。関係を誇らしいと思って何が悪い。


 ロランさんについての話が盛り上がると、給仕の女の子がコートレットと追加のパンを運んでてくれた。

 コートレットは牛肉の揚げ焼きだ。


 薄切りの肉にパンクズをまぶして、バターで焼いた料理だ。


「う、美味い……。俺、モクレンにきてよかった……。お前にもやるよ!」


 もちろんコムギにも食べさせてやった。

 てか元を正せば、これってコムギが宝箱から稼いだ金で注文した食べ物だしな……。


「ホリンッ、これパンにはさむともっと美味しいよっ!」

「本当かよっ!?」


 コムギのまねをして食べてみると、確かにありだった。


 ザラザラとしたコートレットがやわらかなパンに包まれて、触感が複雑になるところがいい。

 パンと揚げ物の相性も最高だ。


「んん~っ、これはこれでありかもな……! これ、アッシュヒルに戻ったら作ってみてくれよ、コートレットサンド!」

「うん、あたしも同じこと考えてた! ……手間、だいぶかかりそうだけど」


 楽しい夕ご飯だった。

 サイドメニューのフルーツオレは、コムギと同じのを頼んだのを後悔する甘さだったけどな……。


「あ、甘過ぎるだろ、これ……」

「え、そう? だったらちょうだいっ」


「え、あ、おう……」


 純粋なくせに、こういうことは気にしないんだよな、コイツ……。

 レストランでの楽しいひとときを過ごすと、いちいち店の人に美味しかったとお礼を言うコムギと一緒に、夜の町に出た。


 店の人から教わった高台から、夜の海をコムギと眺めた。

 真っ黒な海に月光が微かに反射して美しかった。通りにそって灯火が浮かぶモクレンの夜景も。


 宿に戻るのが惜しいくらいだった。

 だから俺たちは、眠くなるまでその高台で粘った。


「また明日ね、ホリン……」

「ちゃんと鍵閉めろよ? ここで見てるからな?」


「わかってるよ。それよりホリンこそ1人で寝れるの?」

「もう眠い……。おやすみだ、コムギ」


「あたしも同じ。おやすみ、ホリン……」


 俺たちは宿に戻り、部屋の鍵を閉めて、別々のベッドで眠った。

 明日は町で買い物をして、爺ちゃんやロランさんを心配させる前にアッシュヒルに帰ろう。


 そう決めて、俺は寂しさと物足りなさを覚えながらも寂しい部屋で眠った。


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