【プロローグのみ】黄昏の落日に落ちたる神
作中に出てくる作品は、架空のものです。
実際には無いはずだし参考にした作品もありませんので、〇〇と似てるとご指摘を下さっても困ります。
えー、皆様。
【黄昏の落日】と言う作品をご存知だろうか?
とある素人小説投稿サイトへ投稿された作品のタイトルである。
黄昏=夕暮れ時=太陽が沈みかけ→お国のピンチ
落日=日が落ちる場面→お国のピンチ
はい。
どっちも似た意味で使われる単語だ。
この作品が投稿されてから、感想欄で定期的に「タイトルの再考を」と言われるくらいに頭の悪いタイトル。
それでも作者は頑なにタイトルを変えず。
こんなタイトルでも中身は、驚くほど練り込まれた硬派かつハードなハイファンタジーで、かなり根強いファンがいる。
そして改題の提案もそのファンの中から出てくる。
タイトルはともかく、ここまで出来が良いと出版社から書籍化のお誘いが来るものだ。
そこでも起きたのが、改題問題。
それでも作者は決して譲らず。
そのまま【黄昏の落日】で書籍化。
タイトルはともかく本当に中身は良いので、トントン拍子に人気作品となりアニメ化。
アニメ化の際にもやはりタイトル問題が出たが、原作者権限で頑として変更を受け入れなかった。
そこまで来たら、もはやバカっぽいタイトルは不思議な魅力を放ちだし、気づけばスマホのソーシャルゲームではあるがゲーム化までされていた。
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とある森の中。
そこには、頭が2つに角が1対あるクマ並みに大きい体の巨大犬が数頭、小さなオンナノコの周囲で横たわっている。
『あんなバケモノ達に襲われて、それをまだ小さい女の子があっさり返り討ちにしてしまうなんて……。 キミは人類なのか?』
ははは。 いや、ソイツは神見習いですわw
…………おっと失礼。
今ちょっとスマホゲームをしてましてね。
【黄昏の落日(サブタイ略)】ってやつなんですけど、知ってます?
ええ、バカっぽいタイトルなのにやたらと骨太なファンタジーでおなじみの、アレです。
いやー、この作品の原作が好きなんですけど、少し前までゲーム版には手を出してませんでした。
だって原作付きゲームは大体が地雷じゃないですか。
……偏見? まあそうでしょうけど、今までの経験からその確率が極めて高いものだと確信がありますのでね。
まあその辺は置いときます。
それでですね、ネットで話題になったから知ったんですよ。
今開催中のコラボ企画で、大ブーイングが起きてるみたいだってね。
そのコラボだけど、同じ小説投稿サイト発のゆるゆるギャグハイファンタジー作品となんですよ。
【神様、オレを元の姿に戻してくれよ! 〜シリアス世界に転生? そんなの知らね〜】とか言うバカ作品。
お約束の異世界転生で神からアホみたいに強いチカラをもらい、放り出されたハイファンタジー世界で遭遇したシリアスさん達を駆逐する、理不尽ファンタジー。
ただしハーレムは無い。 そうなりそうな(シリアスな)空気は、残らず駆逐される。
こっちはこっちで妙な人気があって、
電子マンガ化→ドラマCD化→動画配信サイトでファンメイドのアニメ化→ネットのオモチャ
こんな流れ。
それで作者同士で交流があり、ビックリするほど仲は良好だとか。 今もしている作品の投稿で、前書きや後書きにお互いが仲良く〇〇したと書き合う位に。
何だコイツラ、夫婦か?
との噂も持ち上がるが、それらへの反応が全く無いので謎のまま。
そんな関係なので、スマホゲームにコラボとしてやってきた。
作風が180°違う作品とのコラボで、しかも【黄昏の落日】はシリアスシーンの連続。
このコラボは世界の空気を完全にブチ壊す、まるで酒蔵に納豆菌を持ち込むが如き悪魔の所業。
しかし原作者からの強いプッシュとゴーサイン有り。 更に原作者からコラボの開発費全額を出資するとまで言われては、もうNOとは言えなくなっていたとか。
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『押忍! オレは…………あ〜、ショウタってんだ。 訳が有って見た目は女児だが、中身は立派なバカヤロウだ。 男として扱ってくれ!』
そうそう、略して【神もど】はこんなノリだよ。 自分をバカヤロウと呼べる、突き抜けたバカヤロウ。
うむ、ちゃんとしてるな。
そこまでして強行されたコラボだが、評価はもちろんズタボロ。
コラボキャラで原作通りに飛び抜けて強いから『ゲームブレイカー』とか『失敗コラボ』とか『ゲームの寿命を縮めたキャラ』とか、散々な言われよう。
〚チクショウ、あのバカ女神め……。 見習い神の研修として、宣言通り神のチカラをある程度制限されちまってるな。 コレでどうしろってンだよ……〛
おや? こんなのは原作に無かったはず…………検索検索。
【黄昏の落日】作者のSNSに載ってるな。
……ああ、ゲームバランスが崩壊しすぎるのを嫌った開発運営に、しつこく言われて仕方なく入れた制限か。
ならば仕方ない。
でもどんな悪評だろうが俺はどっちの作品も大好きだから、それらがコラボするならって人生で初めてスマホゲームに手を出しました。
うん。 最の高です。
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それから1か月後の夜。
コラボイベントを完走して、スマホを近くのテーブルに置く。
「最高でした……」
コラボシナリオにボリュームはあまり多くなかったものの、難易度はコラボキャラに合わせて中々に高く、レベル上げだ何だで時間がかかってしまった。
オリジナルシナリオとして書籍版【黄昏の落日】の3巻あたりまでをダイジェストにした様なつくりで、それを【神もど】の主人公がシリアスブレイクしてシナリオブレイクもして、グッダグダにしていく爽快感は実に良い。
【黄昏の落日】で救いの無いシナリオを見て、〇〇だったら良かったのにとか思っていたのを見事にやってくれた。
やはり【神もど】も良い。
そしてラストに【神もど】の転生のきっかけになった女神と、その上司が降臨して『やりすぎだ!』と叱った上で【神もど】キャラを引き上げさせて全て“居なかったこと”になって【黄昏の落日】の史実通りに戻る。
これもまたコラボの後始末として正しいし、こんなオチも【神もど】らしい感じがして良い。
結論。
「最高でした!」
このままスマホゲームをやり続けるかどうかは分からないけど、目的は果たして満足だ!
その満足感のまま、眠りについた。
〜〜〜〜〜〜
それから。
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「ん〜〜〜……」
目覚める感覚があり、でも寝ていたい気持ちもあって、その眠気に従うつもりで寝返り。 仰向けから90°ゴロリン。
「……ん?」
ゴロリンと起きねばならない気持ちへの、必死の抵抗を行ったは良いのだが、どうにも違和感。
体の下が、いつものぬくぬくお布団ではない感覚だ。
何というか、初めてのキャンプでテントをたてて、寝袋も設置せずテントの中で寝転がったような……。
「…………」
どうにもこの違和感に負けて、目を開ける。
「……………………」
すると目に飛び込んできたのは、緑色。
「なんだ、これ?」
この変な状況の所為で、寝ぼけた頭が無理矢理覚醒しようと動き出す。
すると、全身を撫でる風の感覚もした。
「なんだ、これ?」
2度目。
このなんとも言えない変な事態に負けて、慌てて立ち上がる。
「なんだ、これ?」
3度目。
いや、何度もそう言いたくなるって。
だってさ、俺は詳しい植物知識は無いけどさ、ウチの近くで見ないような木が見渡す限りに植わってるんだもん。
「起きたら森の中でした。 ってなんだよ、マジで」
事態の把握ができずに、辺りをぼんやりと眺め続けてしまう。
すると、
ガサリ
背中の方の茂みから音がした。
「なんだ? 誰か居るのか?」
なんてのんきにしていたのが悪かったのかも知れない。
体ごと音の方へ振り向くと、そこには“頭が2つに角が1対あるクマ並みに大きい体の巨大犬”が数頭いた。
「へ?」
思わず変な声が漏れた。
だってこいつを、1か月前から画面越しだけど見ていたのだから。
……横たわっていたやつだけど。
「いや、コイツってリアルに存在してたの?」
コイツは化け物級の強さだと。 下手すりゃドラゴン種とも戦えそうな位に強いと【黄昏の落日】でも言っていた。
でも俺になぜか焦りは無い。 多分コレが現実ではないと思っているからだろう。
グルルルルルル……!!
「……へ? あ! ちょっと! ちょっと待った!!」
そんなのが俺に向かって複数で威嚇し始めれば、気持ちは変わる。
普通の犬の威嚇とは違って、声そのものに怖さを感じるのだ。
普通の犬なら……ほら。 これから飛び掛かられて、噛まれてしまう事を予感して怖くなるだろ?
でもコイツは違うのだ。 なんだか声そのものが怖いのだ!
「待って! お願いだから待ってくれよ!」
巨大な犬達? に向かって両手を突き出しキョロキョロと見回しながら、コイツらの動きを警戒する。
グルルルルルル……!!!
だがいくら呼びかけても無駄。
さっきよりも威嚇の声が強まっている様にも聞こえる。
これはマズい!
いつ飛び掛かってきてもおかしくない空気の中、俺は必死に頭を働かせて解決の糸口を見つけようとするが、俺のポンコツな頭ではどうにも期待が持てない。
ガサッ!
そんな時、ふと背後から何かが下生えの草を踏む音が聞こえた。
それに思わずビックリして、上半身を背後へグルリ!
ごっ!!
すると、回転中の手の甲に何かが強くぶつかる感触。
そして回った視界の端っこに映るのは、巨大犬が離れた木へ勢いよくぶっ飛び、そこで止まらずに貫通してもっと先へ飛んでいく姿。
「え?」
信じられないが、でもそう見える。 見えてしまう。
「なんだ?」
理解できないが、でも現実としてそうなっている。
「なんなんだ?」
分からないが、他に背後には何も無いかな? と見渡してから、正面へ上半身を戻す。
すると威嚇だけでなく、吠えだした巨大犬達。
なんだか今にも飛びかかって来そうだ。
だからといってここで逃げ出すと、この巨大犬達に追いかけられてガブガブされる未来しか思い描けない。
なので覚悟を決めて、俺も腰を落とし迎撃の構えをとる。 …………武術は習ってこなかったから、ナンチャッテだけど。
まあ良い。 そんな事より、今はこの巨大犬達をなんとかしないと、俺はここで死んてしまいそうなんだ。
やるしかない……!!
〜〜〜〜〜〜
思ったより簡単でした。
【黄昏の落日】の化け物じゃなかった……んだと思う。
だって俺ごときで簡単に倒せましたもん。
飛び掛かってくるのもハッキリ見えたし、その顔面を素人パンチ如きで対応できた。
しかもワンパンで沈みましたよ。
「なんつー見掛け倒し!」
今までの緊張は何だったんだ!
そんな気持ちを込めて叫んでみたら、なんか背中の方から声が聞こえた。
…………いや、今日の起きてからだけで、なんど背中から物音がしているんだろうね?
ちょっと異常だと思う。
そんな俺の気持ちを知らず、聞こえてきたのはこうだ。
「あんなバケモノ達に襲われて、それをまだ小さい女の子があっさり返り討ちにしてしまうなんて……。 キミは人類なのか?」
ん? んんん?
そうだった!
俺は【神もど】の主人公から死んだと告げられて、その後に見習いの仕事が面倒だから代わりにやってと、チカラと共に仕事も押し付けられて【黄昏の落日】世界へ来たんだった!!
蛇足
主人公
【黄昏の落日】のスマホゲーム世界に来たのか、小説等の原作の方に来たのかは未設定。
ただ【神もど】からのコラボ出演と言う形で【黄昏の落日】世界へ参戦!
なお主人公は本文の直後に【神もど】の主人公になっていると分かり、とても慌てる。
本当の【神もど】の方の主人公キャラ
元はどこにでもいる普通(笑)の男子だったが、アレな女神によって女の子としてファンタジー世界へ転生する。
転生時にもらった神のチカラのカケラと相性が余程良かったみたいで、体に馴染みまくっていつしか神そのものに成っていた。
のに気付くのは、原作の終盤。
それまでは、異常に強いだけで普通(笑)の女の子にされた元男子って認識だった。
なお女神のチカラに馴染んだので、当人も女神になった。
コラボで制限をかけられたのは能力だと言ったが、それは“シリアスブレイク”能力もそうである。
コラボシナリオ中は存分に暴れたけど【スマホゲーム版 黄昏の落日】の本編シナリオでは一切シナリオブレイクしない。
どころか、戦闘等には参加しても、シナリオには登場すらしない。 させてもらえない事から、分かる事である。
コラボで出演したのは、既にチカラに馴染んで女神となってしまった後の原作タイミング。
なぜ主人公が【神もど】の主人公になったのか
2本の〜〜〜〜〜〜の間に それから と書かれた所があったと思うが、実はそこで【神もど】の本当の主人公に「働きたくないから変わりに行ってきて」と分身扱いにされて、送り込まれる描写が有った。
有ったけど、それをするとネタバレになるので伏せた次第。
本文の後の展開
【黄昏の落日】の原作通りにいかないと思われる。
なにせシナリオブレイク、シリアスブレイクの化身が居るので。
ゲームのコラボじゃなく、現実。
しかも能力に制限が掛けられていない状態で。
こんなの……グッダグダになる未来しか無いじゃないっ!!(悲痛な叫び)
【黄昏の落日】と【神もど】の作者の関係
不明。
ただ、よからぬ噂が業界に浸透するほど、本当に仲がいいのは確か。
しかしどんな仲なのかは、本当に本当に不明。