神父②
「【回復術師】様を追いかけなくて良いのですか? 私の仲間達が直ぐに王国まで直行させますよ?」
その言葉に若干戸惑う俺だったが平気そうな素振りを見せておく。
「大丈夫だ。それよりもお前が一緒に着いて行かなくてもいいのか?」
「ふむ、私には親愛なる教徒たちがいるのです。嫌われ者の貴方と違ってね...」
「...」
なんだかんだ言いながら恐らく奴も優樹と俺を接近させたくないのだろう。
多分だが転送用のアイテムを奴は持っていないのだと思う。
アレはかなり貴重な物らしく、【回復術師】である優樹にも少ししか配られなかったらしいからな。
そんな貴重な物をこいつが持っているわけ無いと判断した俺はニヤリと笑う。
「何がおかしいのです?」
「いやな、どうやって王国まで直行させるつもりなのかと思ってな...」
「..勘のいいガキですね」
見たところこいつの手駒はさっきこの場にいたシスター3人だけだろう。
あの教会はそんなに大きな建物ではなかったし、恐らく今回の件もこいつが1人で起こした暴挙だと思うと今までよりは対処がしやすい。
国ぐるみで隠蔽してくるような王国勢に比べればグループ程度であろう神父の行動など子供のお遊び程度だ。
今まで俺がどれだけ理不尽な目にあってきたのか知らないだろう? こいつは。
「いいだろう、この茶番劇に付き合ってやるよ...。だがな、俺は今腹の中が煮えたぎっているんだよ。どうなっても知らないからな...」
「そんな脅し程度で私が屈するとでも? 【弱体術師】は仲間がいて初めて本領を発揮できると知っていますからね。たった1人の貴方に何ができると言うのでしょう?」
そう言いながら槍を高く構えて俺に向けてきた。
(くるな...!)
俺も奴の突進を待ち構えていた時でした。
「【水魔法】!」
「なにやつ!?」
神父に向かって水の魔法が放たれたのは。




