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最前線

 俺が降り立った場所は広い平原だった。


 後ろにクリスティアーノ王国の砦があるのでここが最前線なのだろう。


 遠くに魔王軍の行進が見えた。


 ドンっ! ドンっ! と大きな音を立てながら砂煙と共にこちらに向かってくる。


「怖かねぇぞ...」


 そう呟いて自分を落ち着かせていると。


「おやおやおや、【弱体術師】に選ばれた高坂和希君ではありませんか」


【勇者】である佐藤が嫌味らしくそう呟いた。


「...」


「おやおやおや? 何も言い返さないのかい?」


 石川もそれに混じって言葉を突き立ててくるのが腹ただしい。


 なので奴らに注意喚起をしておいた。


「今は目の前の敵を倒す事だけを考えろよ」


「ああっ!? 俺がわざわざお前なんかの緊張をほぐしてやろうと思って言葉をかけてやったんだぞ!? ありがたく思え!」


 いちいち鬱陶しい佐藤の大声に優樹が声を上げた。


「良い加減にしなさい! 佐藤も石川もこの世界に来てから調子にも乗りすぎ!」


 その言葉に「ああん!?」と声を上げる佐藤。


「小鳥遊? お前自分の立場わかって物を言っているのか? 敵にろくにダメージを与えられない【回復術師】の癖によぉ!」


 それを言われると少し動揺しかける彼女だったが、俺の知る優樹はその程度では崩れない。


「【回復術師】とか【弱体術師】だからってなによ! 私達はこのクリステアーノ王国を救うために召喚された勇者なのよ!? 喧嘩なんかしてる場合じゃないでしょ!!!」


 ごもっともな意見に舌打ちをする佐藤。


「チッ! わかったよ! 後で覚えておけよ小鳥遊!」


 そう言いながら剣を引き抜いて敵の方に向かっていく佐藤と石川に俺も続こうとした時だった。


「待って! 和希!」


「なんだ?」


「その...、はいっ!」


 彼女は俺に防御力アップの魔法をかけてくれた。


「絶対に死なないでね」


「...ああ!」


 短い言葉のキャッチボールだったが充分に彼女の気持ちは伝わった。


 それだけで充分なのだ。


 俺は大声を張り上げながら敵の部隊に向かってデバフ魔法をかけるのでした。



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