姫さん
俺達が全回復すると倒れている佐藤に目が行った。
「どうするこいつ」
「...そうだな」
正直言って佐藤はこの場所に放置して言って良いんじゃないだろうか? 仮にも勇者だし気絶したまま放置してても大丈夫だろう。
そう思いつつも薬草を使い少しだけ回復させておく。
目を覚さない程度にな。
「さてと」と呟きながら俺は姫さんの方を見つめる。
「な...なんですか?」
ラカラの姿をしている彼女と姫さんの姿をしているラカラを近づかせてから優樹に2人を元の状態に戻すように任せた。
「じゃあ任せたからな」
「うん! 任せてよ!」
【回復術師】である優樹が魔法を扱い2人の魂を交換する。
正確には元の状態に回復しているのだと言う。
しばらくするとラカラが声を上げた。
「よっしゃぁ!! 戻ってきた私の体ぁ!!」
子供のようにはしゃぐ彼女とは対照的に沈みかえる姫さん。
「ああ...。またお城での生活ですか...」
そう言いながら俺の方を見てくる彼女。
「なんだ?」
「私を【弱体術師】様の旅に...」
姫さんが言い切る前にはっきりと言ってやろう。
「ダメだ! 絶対着いて行くとか言い出してただろ! だいたい俺は嫌われ者の【弱体術師】だぞ!」
これだけの事を言っても彼女はこう続けてくる。
「先ほどの貴方と【回復術師】様のやりとりを見て貴方が噂ほど酷い人ではないと私なりに解釈いたしました。なので是非とも旅に連れて行ってください!」
結局言いやがったが俺には足手纏いをパーティに入れる余裕はない。
正直言って可愛いと言うだけでパーティを組もうとしていた佐藤の気がしれない。
だって一国の姫さんだぞ? どれだけ足手纏いになるか想像に難くない。
「馬鹿な事言ってないで行くぞ」
俺は【擬似幻影龍】を創り上げる。
それを見ていた姫さんが「格好いい」と呟くが気にしない。
おっとその前に騎士団長の死体からドロップアイテムを手に入れないとな。
『銀狼シリーズの素材を入手しました。騎士団長の装備品を手に入れました』
(うぇ...あいつの装備品かよ...。性能高いけど全部合成用だな)
俺は早速この2つの素材を用いて自分と皆の装備品を強化し始めるのでした。




