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幸福

 俺は奴に止めを刺すと優樹の元に向かう。


「優樹、終わったよ」


 そう言いながら俺は彼女の体を抱きしめる。


 すると...。


「やっぱり...、和樹は凄いや」


 と弱々しい声を出してくれた。


 それが何事にも変え難いほどに嬉しくて涙を流すほど喜んでしまう。


「優樹...!!!」


 一時期は死んだかとも思われた彼女は生きていた事により感情の昂りが治まる。


『感情の沈静を確認しました。[【叛逆の意思】【弱者の怒り】【怒りの魔力暴走】【怒りの弱体術師】【嫉妬の悪魔】【恨みの連鎖】【憤怒と憎悪と嫉妬と恨みの杖】]を強制終了しました』


 俺の杖と鎧が元に戻っても俺の感情は爆発したままだ。


 俺はすぐさま【回復薬】を優樹にぶっかける。


「飲め! 少しでも回復するんだ! 優樹!」


 何本か【回復薬】をぶっかけるとみるみる内に傷が塞がっていき完全復活した。


「...んっ! もう大丈夫みたい。ありがとう和希!」


 その時だった。


「...なに?」


 彼女の手の中にヒーリングスタッフとは違う杖が握られていたのだ。


「えっと...『感情の昂りによりEXスキル【幸福の杖】を入手しました』? それに【幸福の回復術師】って言うEXスキルも手に入れたみたい」


「幸福...か」


 俺の漏らした声に彼女は「えっ?」と小さく反応した。


「いやな、この世界に来てからの俺とは相反する感情だと思ってな...」


 俺はこの世界に来てから一度も自分が幸福だと思った事がない。


 常にネガティブに物事を考えてしまっているのだと自分でもよく分かる。


 そんな事を呟いた俺に彼女はそっと微笑んだ。


「そうだったんだ...。そうだよね。でもさ、だったらさ...。これから私と一緒にこの世界の幸福を探しに行こうよ。約束だよ」


「...優樹」


 何故だろうか? 彼女のその言葉に僅かながらの幸福感を感じてしまうのは...。


 俺はそっと後ろを振り向き涙を見られないように隠しながら彼女に命令した。


「ああ、そうだな。その前にシュナとラカラを回復してやってくれ」


「うん! 分かった!」


 幼馴染の元気な声を聞いた俺は心が温かかくなるのを感じてしまい、いつもよりほんのちょっとだけ負の感情が和らいだような気がするのでした。



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