白銀の影
「...」
騎士団長の呪文は聞こえない。
いや、正確には聞こえてはいるのだが何を言っているのか全く分からないのだ。
(奴め何をする気だ!?)
「シュナ! 奴が詠唱を終える前に叩く!」
「分かっています!!!」
シュナは俺の号令と共に大きく飛び上がり奴に【キャットスタンプ】を決めた!
「どうだ!」
若干よろめいたものの呪文を止める気配はない。
「ラカラ! 追撃だ!」
「うん! 【クロスブーメラン】!!!」
投げたブーメランが十字架を刻み奴を切り裂いた!
やはり攻撃は通じているが倒れる気配がない!
「まだ倒れないのか!? タフすぎるだろ!」
「どいてろ! 俺が決めてやる! 【勇者の一撃】!!!」
先ほど見た電撃の技を奴にぶつける佐藤。
(なかなかの威力だが...)
これで騎士団長を倒せるのかと言われると不安が残る威力だった。
黙々と煙が上がって行き、その中から現れたのは...!
「なっ!?」
化け物と化した騎士団長だった!
四肢は妙に膨れ上がり人間の物とは思えないほどの太さを持つ!
体は白銀の体毛が浮き出てきてまるで狼男のような容姿となっていた!
「人狼って奴か!?」
ゲームや漫画で度々出てくる有名な化け物の名前を出す俺に奴は答える。
「人狼? 違うな。この姿こそが神より祝福された人間の変異能力だ! こうなってしまったらもう先ほどのように優しくはないぞ!」
グレイスは咆哮を上げながらこっちに向かってきた!
(早い!)
バフのかかったシュナと同程度の素早さを誇る人狼の一撃など考えたくもない!
「させません!」
そう言いながらシュナが俺たちの盾となるが...。
「退け! 子猫風情が!」
ただの突進攻撃であのシュナが一蹴されてしまった!
(嘘だろ!?)
しかもそのまま俺の方にやってくる!
「【幻影剣】→【幻影乱部】! 【束縛】!」
俺は慌てて奴の足元に拘束魔法を次々と展開した。
黒き剣の乱舞が奴の全身を突き刺し、その上で魔力でできた鎖達が奴の動きを封じるのだが...。
「この程度か? 【咆哮】!!!」
奴の雄叫びで俺のデバフ達が掻き消されてしまった!
急いで拘束魔法をかけ直そうとしていると、奴は目にも止まらぬ速さでラカラの方に向かう!
「まずい! 【幻影盾】!!」
俺はラカラの影から影でできた盾を作るのだが...。
「こんな物ぶち抜いてやる!」
奴は拳に力を込めて一気に解放した!
「【ホーリーシャウト】!」
聖なる気の流れが盾を貫通しラカラを襲う!!!
「うああああ!!!」
「ラカラ!」
彼女の悲鳴が聞こえた瞬間に奴は俺たちの方を見てこう呟いた。
「後3人...」




