野営セット設置
大分日が落ちてきたので俺たちは野営セットを設置し始めた。
「優樹、そっちを持っててくれ」
「OK!」
「ラカラ! 遊ぶな! こっちを手伝え!」
「遊んでないよ!」
ラカラがトンカチを使い杭を打ち込んでいるのだが、上手くハマらないようだ。
「全く...、いいか? こうやってだな」
俺がトンカチの扱い方を教えると程なくして俺より上手く扱えるようになった。
流石は盗賊、器用さが高いだけはある。
シュナは...。
「今日の獲物を狩ってきました」
と頼まれてもいないのに草食獣を取って来てくれていた。
「流石だな」
「いえいえ、では僕が料理を振る舞いますね。これでも父様に花嫁修行もとい花婿修行と称して仕込まれていましたから」
そう良いながら火打ち石を器用に扱い火をつけ、その横に程よい石を2つ置いて金網を敷く。
そして解体した草食獣を器用に焼いていた。
(シュナって確かレベル1だったよな? って事は敵は倒していないけど優男が倒して来た獲物を焼いてたって事か? 行商とかしている間に)
シュナってあんまりお嬢様って感じがしないよな。
ああ、男だからお坊ちゃんか?
俺は彼と出会ってからずっと彼の事を成金のお坊ちゃんだと思った事がない。
むしろ逆だ。
ある程度の事をそつなくこなす優等生っぽい感じでシュナの事を見ている。
そうこうしているとようやく野営セットが貼れた。
「疲れた〜!」
早速テントの中で伸びているラカラを見て俺はこう呟いた。
「おいおい、今からまだお前には働いて貰うんだからな」
「ええ〜? 何をするのさ〜」
「まあ見張りだな」
「見張り〜? そんなのいる?」
文句を垂れる彼女に俺はこう答えた。
「いるに決まっているだろう! ど阿呆が!」
野生動物もそうだが、あのクズ王が直にでも兵士を寄越してくるかもしれない。
咄嗟の状況に対応できるように俺達の中で1人は起きていなくちゃならないのだ。
「見張りでしたらあっしが...」
と運転手の盗賊が名乗り出てくれたがダメだと答えた。
「お前が常に万全の状態じゃないとここから動けないだろう? だからお前は夕食の後は明日の朝までやすんでもらう。そして夕食後最初の見張りがお前だラカラ。2時間ほど経ったら俺を起こしに来い」
「え〜!? いきなり私〜!?」
不満たらたらな彼女に俺は言ってやる。
「分かってないな。最初が一番楽なんだぞ? 最初だけ見張って後はぐっすり眠れば良いんだからな」
俺がそう呟くと彼女は手を叩いて「そっか!」と了承してくれたのでチョロい。
肉の焼ける良い匂いが立つ込めてくると夕食の時間になるのでした。




