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手引き

「クラール!?」


「いいからこっちへ!」


 クラールが俺たちを呼び止めて誘導する。


 走りながら彼女はラカラに話しかける。


「まずはこれを渡しておく。そこのおチビさん用の道具だ」


 そう言われて【盗賊の鍵】を渡された。


「これって盗賊から誰もが夢見る【盗賊の鍵】じゃないか!  貰っていいの!?」


「ああ、いいぞ、そしてこっちもな」


 そう言いながら【ブーメラン】を渡してきた。


「私のお古だがそれで練習しときな。必ずその特技は役に立つ様になるからね」


「良くわかないけどありがとう!」


「この先で私の部下に馬車を待たせてある」


「クラールはどうするんだ?」


「なぁに...、ちょいと変装して奴らの目を欺いておくさ」


 そう言って俺そっくりに変装する。


「すごいな、どうやったんだ?」


「昔こう言う芸をやっていてね...。さあ! あの馬車に乗りな!」


「...この礼は必ず返しにくる」


「ああ、ボーヤならデート一回でいいよ」


「...ふん、考えておいてやろう」


 俺はそっけない態度を取りながらも「死ぬんじゃないぞ」とだけ呟いた。


「それを私に言うのか? 死ぬわけないだろう? 私はあのクラール様だぞ?」


 そう言いながら彼女は俺たちとは逆方向に走り出した。


「いたぞ! 【弱体術師】だ!」


 と言う声と共に他の兵士達も俺に変装した彼女の方に走っていく。


「あの人は確か...」


「そうだ、この前の戦争の時に俺たちを助けてくれた奴だ。思わぬ借りができたな」


「和希とデートって言うのは気になったけどさ。いい人そうだったね」


「ああ、話の分からない兵士長やこの国の王様よりもよっぽど話しやすい人物だよ。あいつは」


「また会えるでしょうか?」


「きっとな...」


 俺は優樹やシュナを宥めながらクラールの部下に馬車を走らさせる。


「いいぞ! 出せ!!!」


 俺は小さくなって行く盗賊の町を名残押しそうに見つめる。


(意外と居心地は悪くなかったな)


 王国に比べると圧倒的なまでの居心地の良さに驚いたほどだ。


 アイテム偽造と嘘やスリに気をつけていればあの町は意外と俺の性にあっているかもしれないな。


 もしも世界が平和になっても帰れなかったらあそこで暮らすのも悪くないかもしれない。


「ところで和希。クラールさんとはどんな関係なの? 昨日なかなか帰ってこなかったしまさか!!!」


「なんだよ優樹?」


 いきなり大きな声を上げる彼女にびっくりする俺。


「クラールさんデートしてたでしょ!」


「してないってーの!!!」


 勘違いも甚だしい幼馴染の誤解を解くのに凄く時間がかかるのでした。




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