はじまりの指針
大魔王が納めるコノリア地区に住むジイさんである私は、転生者だ。
(唐突な自己紹介で申しわけない、とりあえず前世の話をしておこう。私の名前は、宇崎頼人といい。ホテルの最上階からだいぶし、死んだイケメンだ。俳優をしていたのだが、大空に羽ばたきたくなって、飛び降りて転生した。)
そんな私は、まぶしい王国が納めるカナリア地区の貧しい古民家で、生まれ、ネアンという名前をなずけられた。
(10歳のころまで、農作物を売って生活し、家の中でよくドブの臭いがするネズミが、大量発生することがあり、退治するのが、日課だった。二歳下の妹とよく外で、追いかけっこして、遊んでいた)
10歳になると、学校に通い始めることになった。
(簡易な構造の学校で、壁がなく風が通りやすいため、教科書がふきとばされ、砂埃が発生するため授業に集中するのは、至難の業だったが、百年前におこったまぶしい王国と暗闇大魔城の戦争についてだけ、興味深くきいていた。)
暗闇大魔城の王である11代目ザーサイ魔王が、王国を侵略しようとした戦争のことだ。
(二年以上も続く戦争になったのだが、まぶしい王国がわについていた賢者ヘラクレスが、ザーサイ魔王の娘コチュジャンをさらい。戦争を終らせる交渉材料にしたのは、有名な話だ。)
その交渉によって戦争が終結したのかどうか定かで、ないがその説が有力だとされている。
(あの戦争の立役者である賢者ヘラクレスの孫が、暗闇魔王城がおさめるコノリア地区に住んでいるという情報を手に入れた。)
私は13歳になり学校を卒業後、コノリア地区を目指して、旅にでる決心をした。
農家をしている父親の、デルタールに、このことを説明したときのことは、おぼえている。
「お父様、私は歴史学者になりたいのです。賢者ヘラクレスに会いに行き本当はどうだったのか、知りまぶしい王国の平和の備えとして、大魔城崩壊の糸口を模索しておきたいのです。」
(実際のところ、まぶしい王国の平和の備えというのは、口から出まかせだったのだが、必死に悟られないように振るまった。)
デルタールは、少し考え込んだ表情をした後、「妹のソワが、稀な魔力を保有していた魔術師だったこともあり、これ以上悪評がたつのは、この家にとってよくないことだから、許可することはできない」と言われた。
(デルタールは、おそらく長子である俺が、魔術師である妹をおいて出かけるのは、悪評が立つと考えたのだろう。それに、まぶしい王国は非魔力である人間が魔力を持つものに対抗するために築いた王国だからこそ、ソワの魔力は隠さなければならなかった。)
「お父様、私はソワも連れて行こうと考えております。跡継ぎのことなら、私の友である石工をしているセリヌンティウスの子供であるモンブランティウスが引き受けてくれました。」
(本当に前世で俳優という仕事をしていてよかった。モンブランティウスには悪いが、気兼ねなくうそがつける。おそらく進路に迷っていたし大丈夫だろうと高を括る)
デルタールはあっさりと、ソワと一緒に旅に出かけるのを許可してくれた。
デルタールに旅に出る許可をもらったネアンとソワは旅の支度をはじめた。
(歴史書と筆記用具を鞄に突っ込んだ後、久しぶりに学校へと行き先生に何が必要か聞きに行った。)
先生にコノリア地区に行くには、レノン街にある商店に売っている通行書を購入しないと、魔王城が支配している土地に渡ることができないと、おしえられた。
(なるほど、前世の世界でいうところのパスポートみたいなものか。しかしレノン街はここからだと、電車に乗って20分以上はかかる。)
ネアンはカナリア地区の最寄りの駅であるチベット駅に向かう道中、モンブランティウスの家によって、事情をせつめいしに行くことにした。
(石工をしている真っ最中のようで、邪魔になりそうだったが、なんとか生活スペースの二階へと行くことができた。)
長男であるショートティウスが、セルヌンティウスのもとで、修行をしている真っ最中だったのだ。
(こんな日にいきなり上がり込み、モンブランティウスの人生を勝手に決めてしまったと報告しにきたのである。)
「すみません、モンブランティウスはいますか。」
二階にある玄関ドアの呼び鈴をならすと、モンブランティウスの母親が出たので、要件を言った。
(かなりかわいい実年齢よりも、若く見えるきれいなお母さんではないか、セルヌンティウスさんよ、おぬし巨乳美女を妻にするとは、なかなかやるじゃないか。)
母親に呼ばれて、モンブランティウスがやってきたので、うちの農家の跡つぎになってもらえるよう交渉するつもりだった。
「デルタールさんからそのことは聞いた。もちろん友人の頼みだから、跡継ぎになろうとおもっている」
モンブランティウスの口から、そう言ってくれたことに、感謝して、涙を流しながら、「ありがとう」とさけんだ。
(モンブランティウスには、感謝している。いつになるかわからないが、土産ぐらい買ってやろう)
セルヌンティウスの家を出て、チベット駅から電車にのって、レノン街へと着いた。
(かなり活気のある商店街で、自分の商品を買ってもらいたい人たちが必死に客を呼び込もうとしている。)
レノン街をあるいていると、服を売っている店の娘とぶつかった。
(前を見ていなかった私も悪いのだが、小娘め、なんだか狙ってぶつかってきたようなきがした。ちなみにその子は、六歳くらいだ。)
私はその子に駆け寄り、「大丈夫」と声をかけると、「申し訳ないと思うのだったら、うちの店の商品かってくれる」と言われた。
(こういう商売をしているのか、つまり私はまんまと引っかかてしまったのだな、仕方がないかってやるか。)
その店は、冒険者にはうれしい防寒着や耐熱防護服などが売っている店だった。妹のソワの分もふくめて、いろいろ買った。
(そうだ、どこで通行書がうっているかきいてみよう。おそらくここらへんで商売をしていたら知っているはずだ)
通行書が売っている場所をおしえてもらい、購入した。とりあえず家に帰ることにした。