プレイボール
嫌な予感は的中した
まさか野球の試合に出ることになるとは
球場にて試合当日
「監督、連れてきました」
「おー助かるよ」
野球のユニフォームを着る時が来るとは…
「飯塚もサンキュー」
「どういたしましてー」
太々しい態度の優太
「飯塚は優しい奴なんで問題ありません」
更に太々しい態度の優太
嫌味野郎だ白石琉之介
「ポジションなんだけどピッチャー経験者1人
も居ないんだよ…白石、軟式だけどピッチャ
ー頼めるか?」
「少しなら構いません」
「俺は?」
「飯塚はライトお願い出来るか?」
「はいよー」
比較的に球は飛んで来ないとみた
ラッキー♩ラッキー♩
味方チームと敵チームが中央に集まり整列
審判の掛け声と選手の大きな声が鳴り響く
全国中学軟式野球大会
奈良予選一回戦のスタート
味方陣営の後攻で試合が始まる
しかし、いきなり問題発生
「監督ーキャッチャーいませんよー」
「ん?キャッチャーお前だろ?」
「僕キャッチャーなんかしたことありません」
「お前どう見てもキャッチャー体型だろ?」
おいおい決め方が間違ってるだろ監督
「困ったな…」
「監督、飯塚ならキャッチャー出来ます」
「本当か?時間もないしそれで行こう」
数分後、防具に身を纏い…
比較的に球は飛んでくるとみた
アンラッキー♩アンラッキー♩
投球練習を済ませサインの確認
「球種はストレート、スライダー、カーブ、ス
プリット、シュートだ」
「てか何で俺かキャッチャーなんかしなきゃな
んねーんだよ」
「子供用グローブ」
「だからぁ」
「子供用グローブ」
「…分かったけど、やったことないんだけど」
「アウトローにしか投げないこら安心しろ」
「聞いてます?てか偉くコントロールには自信
があるようですな」
「帽子のツバを触った時だけインハイだ」
「分かった分かった」
ゴホンッ改めて試合開始
「ズバンッズバンッズバンッ」
三球三振三者凡退、初回表わずか5分
コイツやっぱり凄いです汗
しかしそのピッチングフォーム
琉兄にそっくりである
ベンチに戻り攻撃に備える
「おい白石」
「なんだ?」
「安心しろじゃねえだろ。変化球が曲がり過ぎ
なんだよ。オレはキャッチャー初心者」
「結果的に捕れてるなら問題ない」
「いやいやオレはキャッチャーじゃなくピッチ
…いやいやだからー」
「オレはピッチャーか?」
「いやだから…」
「あの遠投なら間違いなくピッチャーだろうな。
誰もが憧れる剛腕ピッチャー像だ」
「だから野球はやってないし」
「体力の限界だろ?まぁオレ的にはお前みたい
な奴が野球をやらない方が好都合だ」
そう言い残し琉之介はネクストサークルへ
相手ピッチャーは立ち上がりが悪く1番2番
と四球、ノーアウト一塁二塁で次は琉之介
1球見送り2球目のインコースの球を
カキーン
腕をコンパクトに畳んでライト方向に引っ張
る。そのままスタンドイン
「おかえり」
「ただいま」
ホームランとは琉之介様お見事です
バッターボックスに向かう優太
琉之介に続きますかっ
1球見送り2球目のインローの球を
カキーン シュッ バシッ
引っ掛けてショートゴロ
「おかえり」
「ただいま」
「芯に当たればホームランだ」
「そりゃどうも」
チェンジ3-0
2回3回とパーフェクトピッチング、味方の
援護もあり4-0
4回表も難なく凌ぎ4回裏の攻撃
「ふー疲れたー」
「暑苦しいから離れろ」
「お前、高校は野球するんだろ?」
「だったらなんだ?」
「かなり上手いみたいだからさぁ野球で高校行
くのかなぁって」
「ああそうだ」
「どこ?」
「弁天学園だ」
「甲子園常連校、しかも3年前に全国制覇」
「詳しいな」
「一応はスポーツ用品店の息子だからね」
「弁天学園は年に10人しか部員を取らない」
「そこから推薦とは上手いわけだ」
「弁天学園は県内9名と県外を1名しか取らな
い。初めは県外からの候補に上がっていたが
ダメだった。住民票を移し改めて県内枠で選
んでもらった」
「お前ってどこから引っ越してきた?」
「神奈川だ」
「関東ならそこまでせんでも強豪校あるだろ」
「お前には関係ない」
「へいへい関係ありません」
「お前みたいに温室育ちに分かるまい」
「へいへい。次お前の打席みたいよ」
ネクストサークルに向かう琉之介
見送る優太
「温室育ちね」
そう見えるなら今の生活は悪くない
と言うことだろう