体力の限界なもんで
夏真っ盛り
肌の露出が気になる季節です
登校中
いつものように椿と学校へ
「優兄っ」
「何だよ」
「嫌らしい目で女性を見るなっ」
「子供には分かるまい。これこそが健全な中学
生のあるべき姿なんだよ」
「アホか」
よくある兄妹の光景である
よくある光景か?
「てか椿、今週末は大事な試合だろ。またグロ
ーブのメンテしてやるよ」
一つ下の椿は近くのシニアチームのエース
男子顔負けである
「サンキュ。あとカーブが安定しなくてさぁ…
優兄、帰ったらフォーム見てよ」
「店が終わってからな」
「てか何で野球やんないの?一緒に練習してて
私的にかなり上手いと思うよ。前はボーイズ
でやってたって聞いたし」
「体力の限界なもんで」
「うんうん…って何歳だよ」
朝のホームルーム
何か様子が変である
「はい静かにしてー今日は転校生を紹介します」
担任の一言に生徒がざわざわ
「白石君、入って」
ん?
「白石琉之介です宜しくお願いします」
ん?ん??んーー?!
転校生に驚いてしまった。それもそのはず、
亡くなった琉兄に顔も声もそっくりである。
おいおいこんなことがあって良いのか?
「飯塚君の横が空いてるから使ってね」
「はい」
席に向う白石
次から琉之介と呼んでやるか笑笑
改めて
じーーっと見てしまう
琉之介が席に着いても
じーーっと見てしまう
「おい。何ずっと見てんだ」
それでもじーーっと見てしまう
「おい」
「おっおぉよっ宜しくぅ」
世界に3人は同じ人物が居ると言うが既に
2人目と言うことか
昼休み
職員室にて
「入部届は受理するけど本当に大丈夫?白石君
は硬式クラブチームに入らないの?全国でも
有名な強豪に所属してたんでしょ」
「高校は推薦で声が掛かっているので新たにク
ラブチームに所属するのは考えていません。
少し体を動かせればと考えている程度です」
「もう高校からは声が掛かっているんだね。凄
いじゃん。でも試験はあるから…って成績も
優秀ね。そう言う理由なら分かった。後で顧
問の先生に言っとくね」
「宜しくお願いします、失礼します」
放課後
グラウンドにて
「大体は担任から聞いたよ。うちは構わんが選
手権大会のメンバー決まってるから試合にも
出れんが大丈夫か?」
「監督、問題ありません。もし空いた時間に自
主トレーニングをさせてもらえれば幸いです。
ポジションはピッチャーをやっていますので
何か手伝えることがあれば言ってください」
「分かった。準備と片付けはやってもらうが、
あとは好きにやってくれ。硬球使う?」
「はい」
「だったらライト側の後ろを使ってくれ」
「ありがとうございます」
「アップが済んだら1時間後くらいにフリーバ
ッティングのピッチャーお願いしたいんだけ
ど軟球は大丈夫?」
「少しなら大丈夫です」
琉之介はアップを済ませ1時間後、早速レギ
ュラー陣相手に投げ込む。球速は120km
と中学生にしてはまぁまぁである
「結構速いねー。一巡したら変化球も投げてく
れ。練習にならないから本気で頼む。」
「監督、練習にならないと思います」
「だから本気で頼むー。??」
困った琉之介
仕方なく変化球を投げることにした
「知りませんよ」
下半身を固定させるためにワインドアップか
らノーワインドアップにチェンジ、コントロ
ールを中心に投げるようだ
シュート、、、左へギュン
スローカーブ、、、右下へギューーン
スプリット、、、下へシュッ
レギュラー陣はバットに掠りもしない
「…」
「…」
「…」
「…」
この反応は凄いってこう言うこと?
野球部一同黙り込んでしまった
「白…白…しぃらぁうしー…今日はストレート
だけで…良いかなぁ…」
そう言う監督は笑っているが動揺が隠せない
言っただろ?って顔の琉之介
「わかりました」
流石は全国区のピッチャーである。県大会2
回戦負けの軟式野球部が打てる代物ではない
「監督、投球制限のため失礼します」
「おっサンキュー」
去って行く琉之介を見て監督は
「レギュラーにするか」
唖然としている野球部一同
おいおいみんなの頑張りはどうした笑笑
下校中にて
何故かいつも帰りが一緒の椿
友達はおらんのか笑笑
「椿たまには友達と帰れよ」
「うるさいっ優兄が寂しいだろうから一緒に帰
ってやってんのよっ」
「てか朝より荷物が増えてない?」
「全教科の置き本がバレた…」
「自業自得ですなぁ」
「私は野球用品しか鞄に入れない主義なのっ。
何故なら信念だからよっ」
「はいはい」
そんな下らない話をしていたら野球部員が捕
り損ねた球が転がってきた。野球部員が叫ぶ
「ボール投げてくださーい」
大量の荷物で両手が塞がっている椿
「優兄、拾ってあげなよ」
「へいへい」
「ありがとうございまーす。投げてくださーい」
センターのポジションへ送球、距離40m
「距離長いよ…もう少しこっち寄ってよ」
と文句を言いながら投げる優太
ビュンッ
センター守備の頭上を通過、そのままキャッ
チャーの遥か左を通過しバックネットに到達
後地面に落ちる球。距離にして計約90m
「…」
「…」
「…」
本日2回目の沈黙。ごめんなさい野球部皆様
一部始終を見ていた琉之介と目が合う
嫌な予感しかしません笑笑
「優兄やっぱすごいよ。90mはあるよ」
「たまたまだよ」
「たまたまで90m投げれたら世話ないよ。
野球するべきだよ」
「いえいえ体力の限界なもんで」
「うんうん…って何歳だよ」
露出した肌が眩しく想う
健全な14歳である