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6能力者の巣窟

「もしかして、あなた方も能力者、ですか?」


 つい、言わなければならないことをそっちのけで、思ったことを口に出してしまう。受付には三人の女性がいたのだが、三人に猫耳と尻尾が生えていた。突如、猫娘が三人現れた。


 じっと彼女たちの耳と尻尾を見つめてしまう。さすがに視線に気づいたのか、彼女たちがようやく私の存在に気づいてくれた。しかし、雨水君や九尾たちに向けられたものとは違い、なんだかそっけない態度を取られてしまう。


「ああ、確かに雨水君は女性が一人面接にくると言っていましたね」


「そうでした。ドウゾオハイリクダサイ」


「ダイヒョウガオマチシテイマスノデ、イソイダホウガヨロシイカト」


 一人目の女性はまだ普通の反応をしてくれたのに、残りの二人はなぜか、片言の日本語になり、さっさと面接に行けと圧をかけてきた。


 それにしても、自分たちの頭とお尻に猫耳と尻尾がはみ出しているのに、彼女たちはまったく動じることがなかった。私は能力者たちが集まる場所に連れてこられたのだと改めて実感した。一体どんな能力を彼女たちは持っているのだろうか。ウサギや狼、狐のケモミミを持つ能力者には出会ったことがあるが、猫耳は初めてだ。興味深いが今はそんなことを考えている場合ではない。


 さて、なんにでも頭とお尻にケモミミと尻尾をつけて萌える人もいるのだろうが、私はそうではない。ケモミミがついている女性だからと言って可愛いとは限らない。黒猫と白猫、三毛猫みたいな耳と尻尾で、一人一人、個性があるようだ。しかし、私としては大人の女性が生やしていても、まったく興奮しない。彼女たちはおそらく、20歳はとうに越しているだろう。



「わかりました。丁寧にご説明ありがとうございます。ですが、どこに代表がいるのか教えていただかないとわから」


「オレが代表のいるところまで案内するよ。代表はいつもの部屋にいるよね?」


 女性たちの圧がすごくて、今すぐこの場を離れたくなったが、どこに行けばいいのかわからない。仕方なく、代表とやらがいる場所を聞こうとしたら、雨水君に遮られる。雨水君が私についてきてくれるらしい。


「そ、そうですけど、別に雨水君が案内しなくても、他の者に案内させれば」


 しかし、女性たちは私の付き添いに雨水君がついていくのが気に入らないらしい。とはいえ、彼が案内してくれるのなら、そちらの方が私は気が楽だ。


「ありがとうございます」


 とりあえずお礼を言いつつも、そもそも雨水君が私をここに呼んだのではないか。だったら、案内してくれるのは当然だと思いなおす。




「ふむ。では、蒼紗のことはお主に任せて、我たちは外で待っているとしよう」


「賛成。ねえ、ぼく、お腹が減ってきちゃった。何か、食べに行こうよ。お金なら、心配しなくても大丈夫」


「そうですね。僕たちがここにいる必要はないですね。蒼紗さんをここまで送ってきたことだし、席を外しましょうか」


「お腹が減った」


 私たちが代表と会うと言っているのに、九尾たち人外は私たちを放って食事に出かける算段を立てていた。まったく、薄情な奴らである。しかし、彼らに人間の常識を当てはめるのは無駄である。そもそも、彼らに食事は必要ないのに、なぜわざわざお金をかけて食事をしようとしているのか。


「領収書はちゃんともらえよ」


 驚いたことに、雨水君は彼らの意味不明な行動を認めるようだ。ポケットから財布を取り出して七尾に放り投げる。


「サンキュー。それでこそ、僕のしもべだ!」


 財布を見事キャッチした七尾が嬉しそうに中身を物色し始める。


 財布を受け取った七尾を先頭に九尾たちはそのままビルの外に出て行った。私と雨水君はビルの最上階で待つ、代表に会いに行くためにエレベーターに乗り込んだ。


 私と一緒にいる雨水君、ビルを出ていった九尾たちに熱い視線を向けていた彼女たちのことは気にしないことにした。




「わかっていると思うが、朔夜とオレの関係は大学の同級生だった。それだけの関係で、それ以上のことを言わないで欲しい」


「この組合が西園寺に関わり始めたからですか?」


「それも関係している。オレは朔夜の能力に気付いて組合に誘った。それだけだ」


「ワカリマシタ。雨水君がそういうのなら、そう言うことにします」


 エレベーターに乗っている間、雨水君が話しかけてくる。大学の元同級生というのは事実だが、それだけで代表とやらは納得してくれるだろうか。そもそも、すでに唐洲という男のいカラスに九尾たちの姿は捉えられているので、今さら隠しても無駄な気がする。


「あいつらは自由を奪われるのを何よりも嫌う。だからこそ、西園寺家には特に注意を払っているはずだ」


「でも、私の家に謎のカラスが来てしまいましたよ?あれでは九尾たちの居場所がばれるのも時間の問題では?」


「それもそうか。でもまあ、あいつらは所詮、オレ達とは違う人外の存在だ。唐洲に目をつけられたところで、朔夜の家に組合の人間が押し寄せてくることはないだろう」


 しばらくすると、エレベーターが停まり、目的の最上階に到着した。


 エレベーターを降りて最上階のフロアの廊下を歩きながら、これから私が受ける面接についての注意事項を雨水君が説明してくれた。


「くれぐれも、朔夜の家に西園寺家の狐の神様がいることを気取られるなよ。西園寺復活のために、彼らは必死に九尾や七尾を探している。ばれたら何をされるかわからない」


「だったらなぜ、私をここに呼んだのですか?九尾たちのことがばれたくないのなら、その彼らを居候させている私を組合に加入させる理由がありません。私たちごと隠していればいい話では?さっきも言いましたが、すでに唐洲とか言う男に居場所が……」


「隠し切れなくなったから、お前を組合に加入させるしかなくなった」


 雨水君の言っていることは矛盾している。よくわからないことになっているが、それでも、彼が私たちを西園寺家にこれ以上関わらせないように努力していることは伝わってくる。


「まあ、いざとなれば、関係者全員に私の能力を使えば済む話ですが」


 私の言葉に雨水君は苦笑するだけで特に何も言わなかった。能力者の集まる組合に紹介されるという時点で、私も雨水君たちと同じ能力者である。


 能力と呼べるのは二つ。言霊を操る能力と予知夢を見ることができる能力。文字通り、私が操りたい対象の目を合わせて強く念じながら言葉を使えば、対象は私の言うことを聞いてくれるという便利な能力。それと未来の一部分を夢に見ることができる能力。この二つを持ち合わせているが、さらに私は普通の人間にはないありえない体質持ちである。そのせいで、私は現在二度目の大学生活を送ることができている。




 私たちは廊下の一番奥にある会議室の前までやってきた。そこで雨水君が足を止めるので私も同じように立ち止まる。


「コンコン」


 雨水君が今までの親し気な雰囲気を切り替え、真面目な表情で扉をノックする。


「どうぞ」


 部屋から男性の低い声が聞こえる。私たちは部屋に入ることにした。


「失礼します」

「し、失礼します」


 緊張しながら部屋に入ると、ソファに腰かけている男性がいた。


「緊張しているみたいだね。とりあえず、ソファに座ってゆっくり話そうか」


 ソファを勧められたので、どうしようかと雨水君を見ると、素直にソファに座ったので、私も同じように雨水君の隣に腰かける。私たちが座ると、さっそく面接が始まった。



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