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26向井さんの家に行く日①

更新を再開します。よろしくお願いします。

 今日は日曜日。向井さんの家に行く日である。もしかしたら、彼女の曾祖母である私の幼馴染、荒川結女に会えるかもしれない。昨日は予定が急きょキャンセルになったため、向井さんの家に行くための心の準備をする時間は充分あった。


「すいません。急に予定が入ってしまいまして。三つ子たちにも電話で予定が入ったことを伝えました」


 車坂から連絡があったのは、土曜日の朝だった。三つ子たちの能力を知ることができるために、少しわくわくしている部分もあったが、同時に私たちの事情に巻き込んでしまったという申し訳ないという気持ちもあった。そのため、車坂の方から予定をキャンセルしてきたときは、正直、ほっとしていた。


 とはいえ、車坂に予定が入ったことが妙に気になった。車坂は死神であり、彼に急に予定が入ったということは、この近辺で何か事件が起きて死人が出てしまったのかもしれない。そう思うと、ただのんきにほっとしてもいられなかった。


「でも、車坂が予定を教えてくれるわけもないので、気にしないことにしましょう。何より、今日、私が気にしなくてはいけないのは」


 何十年ぶりとなる幼馴染との対面について考えることが、今の私にとって最も重要なことだ。他のことは別の日にでも考えることにしよう。車坂の予定については、頭の隅に置いておくことにした。



「なんだか、ずいぶんと嬉しそうな顔をしているが、今日は何かの記念日か?」


「蒼紗さんがうれしそうなのは、僕たちのこの格好のせいではないですか?」


「オレ達の本来の年齢は、完全に忘れ去られているな」


考え事をしていたら、九尾たちの声が近くで聞こえた。私は今、自分の部屋で今日、向井さんの家に来ていく服の最終確認をしていた。彼らはベッドに並べられた私の服を見て、自分たちの恰好を見ると、嫌そうな顔をする。どうやら、私が彼らに与えた服装が気に入らないらしい。


「その格好を容認しているのは九尾ですよ。ああ、それにしても、可愛い。私は今日、このまま死んでもいいくらいです」


 年を取らないという体質であり、実質不老不死体質の私がそんな言葉を吐いたところで冗談だと一蹴される。最近、彼らは私に対して妙に辛辣なことがある。


「この服、いったいどこで買ったんですか?今時、こんなフリフリの服なんてあまり見かけませんよ」


「アイドルで見たことがある。最近は男のアイドルでも、ピンクとかのパステルカラーの衣装を着ている」


「我たちもアイドルになった、ということか。まあ、蒼紗にとって我たちはそういう存在でもあるか」


「まあ、いつもの蒼紗さんの大学で着ている衣装を見れば、僕たちの服の調達なんて、簡単なのかもしれないですからね」


『はあ』


 九尾たちは自分の恰好を改めて確認して大きなため息を吐く。嫌そうな顔から、疲れたような表情に変えた。せっかく私が気合を入れて探して手に入れた服である。もっと嬉しそうにしてもいいものではないか。ため息をついてはいるが、文句を言わずに着たのは彼らである。九尾たちが向井さんの家に私と一緒に行きたいと言い出したので、その服をわざわざ私が手配したのだ。


 余談だが、私がいつも大学でテーマを決めてコスプレ衣装を着ているが、それはネットで探している。決して手作りしているわけではない。そもそも、私は裁縫が得意ではない。今時は便利な世の中で、テーマの後に、衣装などと打ち込めば、いろいろな服が出てくるので、とても重宝している。




さて、九尾たちに文句を言われているが、私は彼らに似合う服を用意したに過ぎない。ケモミミ美少年に似合う、とっておきをネットで探してきたのだ。狐とウサギと狼の耳を生やしたケモミミ美少年に合わせたので、少々可愛らしい気がするが、問題はない。


 九尾には黄色、翼君はピンク、狼貴君は白のフリルの付いたブラウスに紺色の半ズボン。いわゆる制服姿にしてもらった。ご丁寧にサスペンダーもつけてもらった。これなら、小学生高学年の児童に見られること間違いなし。


「でも、こんなに可愛らしいと、よこしまな犯罪者が手を出しそうですね。やはり、いつも通りの格好に戻した方が」


『どうでもいい』


 私の言葉を九尾たちはバッサリと切り捨てる、先ほどまで嫌そうな顔をしていたのに、今度は呆れた表情で私を見つめてくる。まったく、素直じゃないツンデレな彼らに私の心はときめいてしまう。


「さっさと支度をしろ。そろそろ家を出ないとまずいんじゃないのか?」


慌てて部屋にかけられた壁時計に目を向けると、確かにこうして悠長に話している時間はない。私は急いで灰色の長袖のパーカーとジーンズを身に着け、家を出た


「行ってきます」


 急いではいても、しっかりと誰もいない家に向かっての挨拶は忘れなかった。そして、待ち合わせの大学の近くのカフェに急ぐのだった。



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