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25組合での噂

 玄関のドアを開けると、そこにいたのは予想通り、雨水君だった。どうにも急いで私の家に来たらしく、息が切れて苦しそうだった。


「わるいな、突然、連絡もなしにやってきて。どうしても、お前にいいたい、ことが、あって」


「いいですよ。すでに七尾が私の前に現れましたから。気にしないでください。私の家に来る連中はみんな、私の予定なんてお構いなしですから」


 外は相変わらず、すごい雨が降っていた。しかし、なぜか雨水君と私がいる玄関前には雨が吹き込んでこなかった。まるで、雨が彼のことを避けているかのように見えた。


「なんか、便利なんだか便利じゃないのかわからない能力ですね」


「何かいったか?」


「いいえ」


 無意識に心の声が口に出てしまったようだ。能力については、触れられたくない人もいるだろう。きっと、彼もそうに違いない。


 私は雨水君を家に招き入れる。驚いたことに、外があんなに大雨にも関わらず、彼はそこまで濡れていなかった。多少、髪や服が湿ってはいたが絞れるようなほどでもない。やはり、雨は雨水君が降らして、彼自身には当たらないようになっているのだろう。


 濡れていないことが幸いして、私はタオルを渡すだけで済んだ。リビングを覗くと、九尾たちの姿はなかった。そのため、私は自分の部屋に雨水君を案内することにした。



「遅いぞ。僕たちを待たせるなんて、言いご身分だな。人間」


「七尾。お前だって人のことは言えないだろう?ここは我の家だ。勝手に入ってくるのは不法侵入という奴になるそうだ」


「まあ、それを言ったら、僕たちだって不法滞在みたいなものですよね。むりやり、居候させてもらっているし」


「でも、ここを出たら住む家がなくて困る。三人だけで生活するのは嫌だ」


『それは同感だ(です)』


 部屋に入ると、ケモミミ美少年たちが私たちを見て騒ぎ出した。しかし、すぐに静かになり、七尾が話を切り出した。




「それで、僕の話なんだけど、おまえ、あいつらに何か吹き込んだのか?」


「七尾。朔夜はこの件については何も知らないし、関係ない。むしろ、被害者みたいなものだ」


「そうは言っても、少しくらい知っていても、いや知るべきだったはずだ。自分がどんな立場にいる人間なのか。その周りにいる人間に及ぼす影響を」


 突然、何を言い出すのだろうか。七尾と雨水君の会話に首をかしげる。雨水君に説明を求めるように視線を向けると、私にわかるように説明してくれた。


「実は、組合の受付をやっている女性たちから妙な噂を聞いた。西園寺家復活のために、西園寺家からいなくなった神を連れ戻す。その神の弱みを握ろうという話が出ている」


「それで、我の居候先の人間ではなく、あえてその周りの人間を探し出しているということか」


 九尾の言葉に頷く雨水君。それに補足するように言葉を続ける。


「ケモミミ少年も絶賛捜索中だが、朔夜の大学の後輩の件もあるだろう。それで、次に組合が目をつけたのが」


「ジャスミンたちも、人探しの対象になってしまったということですか」


 説明の途中で、つい口をはさんでしまった。自分の立場はわかっているつもりだった。私の平穏な二回目の大学生活は、西園寺桜華と出会ったことで壊された。その彼女を殺したともいえる狐の神と私は居候している。しかも、その神とやらは西園寺家の存続に大きく関わっていたという、重要な存在だった。


 そんな神の近くにいることで、危険が伴うことは承知の上だ。しかし、私の周りの人間に及ぼす影響を考えていなかった。いや、考えていたかもしれないが、いつの間にか、私の周りの人間たちに甘えていた。今までの二人の会話から、そのつけが回ってきたのだと理解した。

「ジャスミンたちの身に何かあったのですか?」


 思わず、七尾の襟首をつかんで問いただしてしまった。もし、そんなことが起こっていたとしたら、私はどう責任を取ったらいいのか。彼女たちの身の安全を確保するために、私は何でもするつもりだ。


「く、苦しい」


「やめておけ。こいつがのんきに我たちのもとにきているということは、大したことはないのだろう。こやつは我を怒らせるようなことはしない。そうだろう?」


 九尾に諭されて、慌てて七尾の首から手を離す。いきなり支えるものがなくなり、七尾はぐったりと床に倒れこむ。



「あ、当たり前だ。僕はもう、西園寺家にも九尾にも縛られたくはない。だからこそ、こうやって有益な情報を持ってきているんだろう?」


「もしかして、ジャスミンたちの挙動不審な行動は、組合と関係があるのでしょうか」


 七尾は床に倒れたまま、不機嫌そうにぶつぶつと何か言っている。しかし、私の頭の中にはジャスミンたちのことで頭がいっぱいだ。心の声が口から出てしまったことに気付かず、そのまま思考を続ける。


ジャスミンたちは、私に隠し事をしているように見えた。そして、向井さんに早く会いたいと催促してきた。彼女たちの共通点と言えば、私と知り合いという点である。そうなると、やはり組合が関係しているとみて間違いなさそうだ。


「朔夜の言葉を信じるとすると、すでに組合は彼女たちに接触した可能性がある」


 私の言葉を裏付けるように雨水君が決定的な言葉を口にする。


「ジャスミンたちに確認してみます」


 雨水君の用事は、ジャスミンたちの身に危険が迫っているかもしれないというものだった。その件を話すと、彼らは帰っていった。


 今日は一度、頭を整理する必要がある。明日以降、ジャスミンたちに真実を問い詰めることにした。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

小説のストックがなくなってしまいました。


ストックをためて完結までの見通しが立ちましたら、連載を再開します。

もしかしたら、今までの投稿分の内容を少し変更するかもしれません。


内容は決まっていますので、何とか完結まで頑張ります。

よろしくお願いします。


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