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後日談、高機動戦闘

 ミスリル級冒険者の大歓声に見送られつつ、大空へ繰り出す俺とガルーダのコンビ。標的となるのは、山岳地帯下層から飛来する、働きバチ(ワーカー)だ。


 現世でも総じて蜂は、様々な虫を肉団子にして巣に持ち帰る。この事から肉食の凶暴な存在、と思われがちであるが、実際に肉食なのは幼虫の方だ。この幼虫が爆食いするので、大量の肉を必要としている。


 実際に蜂を観察した事がある人なら分かると思うが、その胴体は固形物が通らない。一メートル級の大きさと言っても、その胴体のつなぎ目は細いままだ。

 

 では何を食べるのか。答えは、肉団子を与えた見返りに、幼虫が出す液体。現世人間世界で例えるなら、一種のエナジードリンクを経口補給していると考えて貰って良い。


 そして、その巨体故に。幼虫にも大量の餌が必要となる。知っている人も居るとは思うが、実は人類種。人間の体脂肪率は、他の動物と比べて、最もおいしいと感じられ、食用に適する。と言う話だ。


 故に、抵抗手段も無い人間は、ビッグホーネットに取って単なる餌でしかない。そして、その餌を回収する為に、多くの働きバチが出動して居ると言う訳だ。


「アレだ! ガルーダ!」

『承知!』


 魔力探知を、アクティブからパッシブに変えて索敵の他、ガルーダ由来の鷹の目により、周囲の警戒をしていると、やがて遠方に飛翔するビッグホーネットを確認。


 即座にガルーダと、思念連携で位置を確認し急行する。相手も巨体であるが、俺を載せたガルーダも巨大な怪鳥とも言える存在。ビッグホーネットも即座に戦闘態勢を取り、此方へ全力で飛翔を開始。


「換装、ブレーカーユニット」


 ――瞬く間に互いの距離が詰まる。俺は右腕のバケットアームを、ブレーカーユニットに換装し、左腕の排土板シールドを構え近接戦闘の態勢で待ち構える。


 前に対峙した時から、バケットアームによる物理打撃は効果が薄い事が判明して居る。これは実際の蜂でもそうなのだが、特にオオスズメバチに至っては、同じスズメバチと戦う為に強化された装甲は、他のスズメバチの毒針を通さない堅牢さを兼ね備える。


 だから俺は、打撃よりも一点集中で、装甲を打ち貫く装備に換装した訳だ。ブレーカーユニットは、パイルバンカーの様な使い方がメインとなる武装。これで貫けない装甲は、存在しないッ!!


「ガルーダ! すれ違う様に接近、一撃で決める!」

『ウム!』


 俺の誘導に従い、ガルーダが急旋回を繰り返しビッグホーネットへと肉薄する。重力、慣性の法則を無視したガルーダの動きに、ビッグホーネットは追従し切れず混乱している。


「そこ! ブレーカーステーク!」


 混乱するビッグホーネットへ、すれ違い様にブレーカーステークを叩き込む。純粋に威力だけでも倒せるが、ガルーダによる超加速を加えられた一撃は、ソニックブームを巻き起こす。


 結果として、バラバラになったビッグホーネットは、文字通り木っ端微塵となり、粒子を巻き散らすかの様に大地へと吸い込まれて行った。


「魔力探知、アクティブ!」


 それと同時に、俺は魔力探知を再起動。今までパッシブ、受動状態だったものを、アクティブへと変更する。受動状態はこちらの存在を悟られない様に、ひっそりと探すモード。


 アクティブ状態は、自らから魔力を発信し、その反射で敵を索敵する状態。これにより、索敵すると同時に、この空へ出撃しているビッグホーネットのヘイトも、強制的にこちらに向ける。


 少なくとも、受動探知の状態では、上空を舞っているのはこのビッグホーネットのみと言う事も判明している。


 そして俺の予想通り、此方へ向けて急接近するのは、魔力の波長からビッグホーネットである事も間違いない。もう少し距離が縮まれば目視も出来るが、間違いなくビッグホーネットだ。


 一部関係の無いモンスターも含まれているが、飛行型は存在しない。陸上から俺達を見上げるような反応を捉えるが、今は無視。どちらにしてもこの上空へ、地上モンスターが攻撃をする術は無い。


「獣型か……下手をすればあいつらさえ、ビッグホーネットの餌になる訳だ。弱肉強食の世界、とは言え、虫が動物を捕食すると言うのも、どうなんだ?」


 食物連鎖。自然の生態系はこれで成り立って居るが、モンスターが存在するこの異世界では、純粋な弱肉強食と言う事になって居る訳だ。悲しい事に、この中に人類種も含まれる。


 確かに命を落とす冒険者も居るが、やはり一番の被害者は何の力も持たない一般人。ならばこそ、ここで叩く。人の味を知った獣を屠るのと大差はない。


「来い、来い、来い! 片っ端から撃ち落としてやるぜ!!」


 俺の言葉が通じたのかは分からないが、ビッグホーネットは重低音を響かせながら、空を切り俺達へと向かって来る。その数、数十匹――!


「行けぇ!」


 次々に襲い来るビッグホーネットを、片っ端からブレーカユニットで撃ち落として行く。時折連携する編成も飛来するが、その程度俺にとってはどうと言う事も無い。


「エアインパクトステーク!!」


 俺はガッツポーズをするかの様に、ブレーカユニットを構えると、空中へ衝撃波を巻き散らす。本来は神装衝角グランブレーカーによる必殺技である。


 だが、現状の火力でも十分と判断したので、通常技として使用。結果として、ビッグホーネットの編成は纏めて撃墜する事が出来た。


「ガルーダ、数は?」

『今ので四十七。少なくとも索敵に掛かった奴は、落としただろうよ……いや、もう一匹いる様だ』


 そんな事を言うガルーダに合わせ、再び魔力探知を行うと……一際大きな反応が返って来る。そして何より、先の働きバチ(ワーカー)とは比べ物にならない程、高速だ。


「速いな。けど、問題無いだろう?」

『フ、任せよ……振り落とされるなよ、我が主よ!』


 その言葉を聞いた直後、今までの戦闘以上の高速で移動を開始するガルーダ。俺も少々腰を落とし、右腕をスッと引いた状態で待機。またすれ違い様にブレーカーステークを叩き込む構えだ。


「打ち抜け、ブレーカーステーク!」


 ガルーダの超速度のまま突っ込み、正拳突きの要領でブレーカーステークを放つ。決まった、と思った直後、左腕の排土板シールドへと衝撃を感じる。


「っ、まさか回避して来るとはな……」


 俺の攻撃は外れ、相手の攻撃は届くと言う失態。決して舐めていた訳では無いが、油断大敵と言う事だと思い知らされたな。


「だが、二度目は無い! ガルーダ!」

『承知だ。我もまさか抜かれるとは思わなんだ……少々本気になるとしようか』


 その直後、先程を超える超速度。超機動でビッグホーネットを追い詰める。確かにこの個体は速い。だが、ガルーダの全力の前には児戯に等しい。これで、終わりだ。


「見切った、そこ!」


 急接近するガルーダ。俺の射線から逃げる様に上方へ移動するビッグホーネット。だが、それを見越した上での偏差攻撃。ブレーカユニットは的確に着弾し、甲高い打突音を鳴り響かせる。


「撃破!! ガルーダ、次の目標を探すぞ!」


 降り注ぐビッグホーネットの破片を回避しつつ、次なる目標を探すべく飛行を開始。まだまだ先は長い。


 少なくともこの撃破で、四十八匹のビッグホーネットを撃墜したが、この時期設営させる巣の全貌からすれば、まだ一割にも至って居ない。


 今の内に少しでも多く倒し、地上のミスリル級冒険者の援護とする。これが今の俺の任務だ。


 もう二度と、あんな悲劇は繰り返させない!





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