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第1話 駆逐艦南風

宇宙戦争ものに手を出してしまいました。よろしければ、お付き合いください。

予備艦艇としてモスボール状態だった地球連邦軍宇宙艦隊所属の駆逐艦南風。その艦体の改修工事が終わり、現役に復帰してから既に二週間が経過していた。艦長の朝倉友雄少佐(46)は、航行中の南風艦橋にてキャプテンシートに座り、前方のスクリーンを見ている。


自艦の位置と速度から、後三時間ほどで宇宙艦隊司令部からの命令にあった友軍艦艇との合流宙域に到達する。その後、合流した艦艇と艦隊を編成し、Nー1スペースコロニー群の防衛任務に就く事になっていた。



土星のワームホールから突如として現れた異星人アムロイ。戦線布告も無く、一方的な彼等からの攻撃で始まった人類史上初の異星人との星間戦争。土星に駐留していた地球連邦軍の艦隊は、民間人を含む非戦闘員の脱出を援護して全滅した。それが二カ月前。


そして、アムロイの根拠地となった土星から地球圏に迫まるアムロイの艦隊を迎え撃つべく、月軌道艦隊を主力とした地球連邦軍の連合艦隊が編成され、出撃して行ったのが一カ月前だった。



友雄は地球連邦軍横須賀士官学校を卒業し、少尉に任官して以来艦隊勤務が長く、以前には駆逐艦の艦長を務めていた。自分が最も希望していた駆逐艦の艦長職だっただけに、軍事基地コロニーの居住区で家庭を守る妻や娘達に申し訳ないと思いながらも、その職を謳歌していた。


その後、昇任と共に基地司令への転属辞令が出たため、後ろ髪を引かれるように異動となったのだ。


「短けえ夢だった。」


がっかりした友雄は何度もそう嘆いたが、家族と過ごせる時間が増え、愛しい妻と共に娘達の成長を間近で見られるようになったのは、喜ばしい事であったが。


以前友雄が空母の航海長だった頃、戦闘機パイロットだった妻からの猛アタックで付き合い始めた。そして、三年の交際を経て自分からプロポーズして結婚したのだった。大柄で顔の堀が深く"朝熊"と揶揄される自分に似ず、美人の誉れ高い妻の容姿を引き継いだ可愛い長女と次女。家族との穏やかな暮らしに、いつしか艦長職への未練も薄れつつあった。


そうした頃に起こった異星人との戦争。俄かに転がり込んで来た、諦めかけていた駆逐艦の艦長職。今までの暮らしに未練を感じつつも、友雄が内心喜んだのは言うまでもなかった。


旧型駆逐艦と言えども、艦長は艦長である。しかも艦名の「南風」は、彼の実家が日本連合の横浜・湘南エリアで営業しているカフェチェーンと同じ名称であったため、友雄は大変気に入っていた。


しかし、駆逐艦南風の乗員は、艦長である友雄と機関長の徳永大尉を除けば、この戦争により召集された予備役が殆どであった。そのため、南風が現役復帰してからの二週間は月月火水木金金さながらな訓練に費やされ、現在では艦隊行動が出来るまでに練度が高くなっていた。


(老朽艦に、自分も含めた寄せ集めの乗員(クルー)。たった二週間でここまで仕上がれば上出来だ。)


友雄は自艦と乗組員の仕上がり具合に安堵した。


自艦と同様、二週間の訓練で戻った駆逐艦艦長の勘。友雄は航行中の自艦を取り巻く雰囲気に違和感を覚えた。(ふね)の周囲の宙域が、やけに静かなのだ。そして、胸騒ぎと共にやや速くなる脈拍。何処かで何かが起きていて、我が身にも及ぶ、そんな気がしてならなかった。


「艦長、どうかなさいましたか?」


友雄は不意に通信士から声を掛けられ、思考に耽っていた意識を戻した。


「いや、どうも周りが静か過ぎると思ってな。それにピリピリとした雰囲気も感じる。」


「おそらく、この宙域の民間船の航行や通信が制限されているからじゃないですか?それに、いくらここら辺が後方とはいえ、戦時下ですからねぇ。」


それを聞いた航海長が会話に加わった。自動航行中で退屈していたのだろう。因みに、航海長は召集前までは民間商船の航海士だった。


「まあ、それはあるだろうな。」


(だが、このうなじがピリピリする感覚はどうなんだ?)


友雄は航海長の意見を肯定しながらも、それだけでは無い何かを感じ、一抹の疑念を抱いた。



駆逐艦南風は訓練期間を終え、宇宙艦隊司令部からの命令に従い、合流予定宙域に間も無く到着し、友軍艦艇と合流しつつあった。






お読み下さり、有難う御座います。よろしければ、拙書『救国の魔法修行者』も、よろしくお願いします。

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