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ジュリアーノの奪還



ジュノンが来て1週間…箱入りのお姫様だったのか、家事がまるで出来無い。アルとシャーが交互に家事を教えて居るが、効果の程は…アイツの母親もダメだったし、この世界のハイエルフは家事がダメなのだろう。


日課にしている娼館通いの準備をしていると、


「お父様!お母様が来ないのはおかしいです。迎えに行ってくれませんか!」


と、ジュノンが縋り付いて来た。異な事を言う。もう、奴隷にされていると思うのだが…


「アイツはここには来られない」


「なんで?」


なんでって、なんでだ?コイツ、社会構造を知らないのか?


「王家の表に出来無いことを知っているんだぞ。王家がアイツを解放すると思っているのか?契約を満了した瞬間に奴隷にされていると思う」


「なんで?契約を満了したら、自由になれるんでしょ?」


「成れる訳無い。もし、成れるなら、お前と一緒にここに来たはずだ。お前を先に行かせたのは、お前を逃がす為だ」


実際、王家の暗部が、ジュノンを取り戻そうと、ここを狙っているし。まぁ、うちのハンター二人が狩ってくれているので、被害は無いに等しいけど。


「約束違反だよ、そんなの!」


「100年前の約束を守ると思うか?約束した本人は既に死んでいるし」


「ぞんなぁ…お母様…」


ジュノンの目は真っ赤に染まっている。怒りとかでは無く、泣き腫らしているのだろう。


「アイツは子供を産んでいるので、エロフ堕ちはしない。なので、性奴隷として売れ無い。大方、城の地下に監禁されているんだろうな」


「お父様!」


ジュノンが僕の胸ぐらを掴んで来た。


「なんだ?」


「お母様を助け出してください」


親にお願いする態度では無い気がする。


「供物は何か有るか?供物無しでは願いは叶えられない」


ルール上、供物無しでの願いを叶えることは出来無い。


「実の娘の願いなのに…供物って、何?!」


「親子であっても、ルールを破ることは出来無い」


上司が五月蠅いし。過去に何度もルールを破って、その度に禁固刑を食らっている。今は、禁固刑を食らっている場合では無いのだから、供物無しとは無理なお願いである。


「じゃあああ!私の処女を上げる。それで、どうよ!」


それは近親なんとかでは?道義上ルールに抵触するのでは?


「別のルールに抵触するからダメだ」


なんか、抜け道は無いだろうか?


「父さん、ジュノンの身体を好きにする権利を貰えば、いいんじゃないかな?」


と、シャーロックから、素敵な提案がなされた。そうか!スキンシップ程度なら、セーフかな?


「それだ!でかした、シャー」


小一時間、ジュノンとスキンシップをして、娼館へと向かった。



王都の娼館、奴隷商を巡り、昔の仲間を引き連れて、王城の地下へ潜入した僕達。ジョブが遊び人の僕は、対人戦が苦手であるのだ。なので、アマゾネスで狂戦士のティオと、テイマーのラインバッハを連れて来たのだ。


地下は換気口以外、外部と通じる扉の類いは無く、餓死狙いの監禁刑のようだ。淫乱堕ちをしないハイエルフは人間では殺せないからだろう。神様達のダッチワイフと呼ばれている種族故、見た目以上に頑強な防御力、タフさを誇っているのだ。


「よぉ!生きているか?」


鎖で大の字状態に拘束されているジュリアーノに声を掛けた。


「遅いよ。一応、女房だよ」


「結婚した覚えは無い」


「お前との間に子供がいるだろ?」


「はぁ?お前なぁ~!いきなり100歳の娘が目の前に現れるって、あり得ないだろ?」


「サプライズだよ。楽しめたか?」


「実の娘相手には出来無い…」


僕とジュリアーノのジャブの撃ち合いの間に、ティオとラインバッハが、ジュリアーノの拘束を解いてくれた。


「で、勇者カイルは?」


ジュリアーノの首に嵌められている魔具『奴隷の首輪』を外して上げた。この魔具は、嵌めた相手を問答無用で奴隷にするアイテムである。


「その首輪のせいで、召喚できなかったのよ!あのクソ王めっ!」


怒り心頭のジュリアーノ。


『召喚 勇者カイル』


ジュリアーノが、英霊となった後に眷属したクソ勇者を呼び出した。


「やっと、呼んでくれたね?って…なんで、みんな怒っているの?」


元勇者で元王であったカイルに、みんなで怒りのオーラを叩きつけている。このクソ勇者は、勇者の証である聖剣を手に入れただけの勇者である。魔王戦の時、いきなり石化をされて、戦闘に加わっていなかった。その結果、僕が魔王を躾けたのだった。


「お前の子孫は、クソが遺伝しているんだが…」


「俺の子孫がか?それは嘆かわしい」


他人事のように答える元クソ勇者。


「ねぇ、契約満了後に、退職金代わりに奴隷の首輪って、酷く無い?」


「売れば、結構な金額になるんじゃないのか?」


未使用であれば、高額で売れるが…使用済みでは、二束三文にしかならない。


「カイルは相変わらずクソだな」


ティオが剣先をカイルに向けている。


「ふふふ、英霊となった俺は、ティオに負ける気がしない」


ティオの剣では英霊は斬れない。英霊は神もしくは英霊にしか斬れないのだ。


「ねぇ、責任を取りなさいよ!」


ジュリアーノがカイルに詰め寄っている。


「君の眷属だよ。眷属の責任はマスターにあると思うんだよ」


相変わらずのクソ思考である。このクソ思考の元王子を補佐する為に、ジュリアーノがカイルと100年の期限付きで、パートナー契約を締結したのだった。亜人であるジュリアーノは裏の正妻という立場で、表舞台には出ずに、王家、王国を支えることにしたのだ。この国では、勇者と賢者が異性である場合、結婚をすると言う馬鹿げた法律があったのだった。その為だろうか、ジュリアーノは僕に夜這いをし、子を得ていた。ハイエルフは除幕をした男性としか、性行為が出来無くなり、淫乱堕ちというプライド崩壊も起き無くなるそうだ。


「わかった。カイル、お前に罰を与える。この国の王に未来永劫、同化しろ!」


『強制同化吸収』


禁術系の呪文を唱えた僕。術が発動すると、目の前にいた英霊カイルは消えた。


「あのクソ王と同化したの?」


「王位を継承しても、次期王もカイルだよ。で、この国の王は、未来永劫、ジュリアーノの眷属になる」


「それって、オトク感あるの?」


「どうだろうな?カイルにとってはオトク感満載か?」


ラインバッハが笑いながら答えた。


「王がアレじゃ、この王国も永いことは無いか?」


ティオも笑っている。


「まぁ、うちの国に来てもいいよ」


二人に声を掛け、王城を後にする僕達。



森の小屋は、住民が増えたので、手狭になり、引っ越しをした。セントラル王国の隣国になるヨハネドブルグ円形都市国家にある僕の家にだ。五番街の高台にある僕の家は、空間拡張術で広くしてあるので、無限の広さを誇っていた。


「お父様、家の中で迷子になります」


ジュノンは方向音痴なのだろうか?家の中で、頻繁に迷子になっている。


「で、その子は誰?」


ジュリアーノに訊かれた。僕の服の裾を握りしめている少女のことだろう。


「ラインバッハから出物があるって…で、買ってきた」


「ふ~ん。見たところ、いいところのお嬢様っぽいわね」


見た目奴隷な少女。ジュリアーノは見た目で判断をしない。纏っているオーラで判断を下しているのだ。


「おかしいだろ?貴族の娘が奴隷堕ちってさぁ」


アルセーヌが少女に近寄り、優しく諭して、お風呂へ連れて行ってくえた。


「どこの家?」


「ベルと同じ、マクレガー公爵家のようだ」


「お家乗っ取りってことね?」


ジュリアーノが記憶を精査しているようだ。


「先代の公爵夫婦は領地で老後を過ごして、現公爵夫婦は王都で娘と暮らしているはずだけど…」


「ベルの母親は、僕が看取ったよ。暗部に殺されたんだ」


「そう…それが、本物の公爵夫人だろうね。現王は袖の下に弱いから、見て見ぬ振りしたんだな」


ジュリアーノが言い切った。僕もセントラル王国は終わっている気がする。トップから腐敗しまくっているし。今後のカイルによる斜め上の行動に期待するか。


「彼女の名前はどうするんだ?」


「名前も盗られたようだよ。なので、エマーアイズと名付けた。通称はアイズだ」


「どうにかしてあげるの?」


「供物のない成就は、ただのお節介になる。だから、家族の者に危害が及ぶまで、何もしない」


お節介な介入は、ルール的にアウトのことが多いし。


「学校はどうするの?」


「戦士養成学校には、ジュノン以外は通わせているけど…アイズも通わせるか」


ヨハネドブルグには、戦士養成学校と冒険者養成学校がある。この円形都市の中心にはダンジョンのある塔がある為だ。王国のような貴族養成学校や、平民の為の学校は無いが、ギルドと呼ばれる各業種の組合が読み書き計算などを安価に教えてくれる仕組みである。


円形都市は内円部と外円部に分かれており、内円部と外円部の境には小高い山が有り、国を2つに分けていた。内円部は王都と呼ばれ、塔を攻略する冒険者向けの宿や武器、防具屋など、冒険者向けの商業地区であり、外円部は一番街から十番街の10カ所の街が有り、冒険者や戦士を養成する施設や、高級住宅街などがある。


「学校行きたいなぁ~」


ジュノンがぼやいている。家事も戦闘もダメなコイツは、何になりたいんだ?


「この国には姫は要らないんだけど…」


「えぇぇぇぇ~!私、お姫様しか出来無いよぉぉぉぉ~」


ジュリアーノに泣き縋り、甘えているジュノン。どんな教育を100年受けたんだ?


「あれ?お父様、引っ越ししてから、遊び歩いていないよね?」


いいところに気が付いたようだ。


「この国でのジョブは大賢者なんだよ。ふらふら遊びに行ける身分ではないんだ。また王国に潜入するかな」


「うそっ!お父様が大賢者?大賢者って、勇者パーティーにいた、あの大賢者様?」


いつのことを言っているんだ?


「随分、昔のことだよ。あれは初代勇者の時かな。ジュリアーノ達の時は遊び人だったし」


「そもそもの疑問なんだけど、遊び人って、戦闘で役立てるの?」


不思議そうな顔をして、質問をしてきたジュノン。


「総てのジョブをマスターしないと、遊び人には成れないのよ」


どう答えようか考えていると、ジュリアーノが真面目に答えてしまった。


「えっ!総てのジョブをマスター…お父様って、そんなにスゴイの?」


まぁ、王国内では、見た目遊び人の生活してましたからね。








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