シャーロックとの出会い
シャーロック視点です
高校を卒業し、窓から綺麗な満月が見える晩、俺と義妹は結ばれた。義妹の身体を感じ、彼女と会話していたのだが、気づくと知らない場所に居た。俺の口の中には大きな乳首があり、ソレを力強く吸っていた。俺は俺の置かれた立場を考えた。これは夢?現実では無いだろう?窓から見える月は2つあるのだけど…
その後、何度目が醒めようが、俺の置かれた立場は変わらなかった。俺の身体は赤子であり、言葉が話せないばかりか、周囲の者達の言葉が理解出来無かった。これって、異世界転生か?って、俺は死んでいない。いや、あの状況で死んでいるとしたら腹上死か?
俺の置かれた状況が理解できはじめると、義妹のことが心配になってきた。彼女はどうなったんだ?
離乳食になると、俺は騎士達に連れられて、どこかへと連れて行かれた。この騎士達は何者なんだ?その日を境に、俺は剣術を仕込まれた。自立歩行出来無いのに剣術って、無理だと思うのだが、歩行器に座らされ、来る日も来る日も剣を振らされた。
言葉が理解できはじめると、魔法の勉強が加えられた。剣と魔法…英才教育というか、スパルタ式教育法で、食事は流動食主体で、睡眠と鍛錬と勉強だけの毎日を送ることになっていた。
下の毛が生え始めた頃、俺はお風呂に入れられて、汚れを落とされて、王の前に連れ出された。
「今世の勇者でございます」
俺の左手甲にある文様みたいなアザ、それが勇者の証らしい。
「いつ出発出来るのだ?」
「後2,3年ですかね」
俺を見る王族やその臣下達の目つきは鋭い目つきである。
「神託では直ぐにでもと言われているが…」
無理だろ?
「わかりました。寝る間を惜しんで鍛え上げます」
何を無茶言っているんだ?
王様の無理難題により、俺から睡眠と食事の時間が減らされ、意識を失う度に、電撃を食らい、回復魔法をかけられるようになった。魔王に殺されるのがオチだと思う。なんで、俺はこんな目に遭わないといけないんだ?
◇
二度目の王との謁見の後、俺は魔王の元へ届けられた。魔王の間に付くまで戦闘は一度も起きずに、魔王の前に運ばれた俺。俺も魔王もオリに入れられ、お互いにオリから解き放たれて、魔王の間に俺と魔王だけになった。意外なことに、目の前にいる魔王…いや魔王と呼ばれる存在は、俺の知っている人物だった。
「お義兄ちゃん…どうして?」
どんな冗談だ?愛しい義妹が魔王だと?まさか、仕組まれたのか?この世界の神に…怒りが湧いてくるが、俺は義妹の元へ近づき、彼女を抱き締めた。その途端、俺の身体が燃え始めた。愛しい女性とは言え、魔王である。勇者とは言え人間である俺が直に触れれば、燃え上がってしまうようだ。
「お義兄ちゃん…お願い!私を殺して…」
義妹の目はあの日のままである。俺を愛おしく見つめていた。俺に出来ること…聖剣を鞘から抜き、義妹の背中に突き刺し、俺の身体をも貫く。
「これで、もう離れなくていいよな?」
「うん…お義兄ちゃん…」
義妹の感触を感じながら、意識が遠くへと旅立って行く。
◇
意識が覚醒していく。俺は義妹と身体を合わせていた。あれは夢だったのか?トンでもない悪夢だな。ふと窓に視線を向けると月は見えず、月明かりに照らされた木々が見えた。どういうことだ?
「お前達は生き返ったんだよ。人生のやり直しをさせてやる。二人で思う存分愛し合えよ」
背後から知らない男性の声がした。振り返ると、ソファに座り、俺と義妹の行為を見ている青年がいた。
「お前は誰だ?」
「君達の父親だ。君の名前はシャーロック、妹の名前はアルセーヌだ。因みに、君達は人間では無い。ホムンクルスと呼ばれる人造人間に、君達の魂を定着させた。その行為は、妹としか出来無い。君達には、他の者との行為は望んでいないだろ?」
人造人間だと?義妹の身体は人間と遜色ない。
「なんで、こんなことをした?」
メリットも無しにするか?いや目の前の青年はマッドサイエンサーなのかもしれない。
「メリットは、僕の従属になってもらうことだ。君達のスキルやの力は魂に付随している。元魔王と元勇者であるが、これからの鍛錬次第で自由に使いこなせるようになるぞ」
また、あんな鍛錬をされるのか?
「どんな鍛錬だ?う~ん、まぁ、鍛錬は自主的にやって貰う。僕は強制が嫌いだからね」
自主鍛錬だと…
「そもそも、お前は何者だ?」
うさん臭い青年。人造人間を作れ、魂を弄ぶ技量…ラスボスでは無いのか?
「僕は通り縋りの遊び人だよ。クソみたいな神を見つけて、始末しただけだ。君達をあの場に送り込んだヤツラも始末しておいたよ」
神を始末出来る遊び人だと?うさん臭いにも程があるだろうに。
◇
自称遊び人である父と、妹と森にある小屋で暮らす日々。彼の言うように、鍛錬は強制されない。質問すればアドバイスをくれる。一体、何者なんだ?妹と毎日愛し合える。俺にとっても、妹にとっても、これ以上の幸せは無い。なので、父の言う通りに生きる事にした俺達。
「なぁ、魔王ってどんな存在なんだ?」
何気なく訊いたのだが、
「この世界の魔王は、神の末席だった」
神の末席?遊び人である父が、何故知っているんだ?でまかせか?
「ウソじゃない。僕はウソが吐けないスキル持ちなんでね」
ウソが吐けないスキル?なんだ、そのスキルは?
「で、君達に悪さをした神は、元魔王だった神なんだよ。魔王を魔王らしくこなせれば、神になれる。勇者と魔王の決戦は、末席である神の昇級試験に過ぎない」
え?なんだ、それは…
「勇者が魔王を倒せなくても、この世界の行く末は変わらない」
俺と妹は殺し合わないでも良かったようだ。神の末席では無い妹には、その昇級試験は無意味だったのだから。
「あの神は、異世界への出張中に、君達を見つけたようだよ。そこで閃いて、君達を魔王と勇者にしてどうなるかを見ていたんだ。本当にロクでも無い神だった」
「異世界転生したのはどうしてだ?」
父は何もかも知っているのか、即答で答えてくれた。
「あのクソ神は、死神の鎌を使って、君達の魂を狩り取り、赴任地である、この世界で転生させたんだ」
腹上死確定のようだ。
「お父さんは、なんで知っているの?」
妹であるアルが訊いた。
「僕もアチラ側の者だからね。僕の本来の仕事は、クソ神を見つけてロストさせることだ」
父さんは神様サイドらしい。
「なんで、そんな人が遊び人なんかしているの?」
「僕は名の無き神なんだ。僕を奉る神殿、祠は無い。神は奉られないと神として生きて行けない。だから、僕は遊び人なんだよ。そもそも、僕は僕が神であることを否定している。全知全能なんてクソくらいだしな」
なんか、スゴイことを言っている父さん。
「なんで?全知全能ってスゴイことでしょ?」
アルの瞳がキラキラ輝いているみたいだ。全知全能な存在って、人間にとって憧れの存在であるしなぁ。
「いい機会だ。教えてやる。全知全能の真実をなぁ」
いつになく、父さんの目つきが真剣になっていく。
「全能って、何でも出来るってことだ。それは、一人エッチして、一人で子作りをすることを意味している。そんな能力を得たら、女を抱け無いだろ?!一人エッチで満足しちゃいそうだしなぁ」
斜め上の解釈。そんなことの為に全能になることを拒否しているのか?
「全知に至っては、もっと酷い。総てを知るって、目の前の女性の感度や感触なんかを、やらずして知ってしまうんだ。これって、抱きがいが無いと思わないか?!」
熱弁を振るう父さん。なんとなく、遊び人を自称する意味が分かった気がする。
「お父さん、それって、全知全能に1つずつ足り無いだけ?」
アルの指摘に、頷く父さん。それって、神に最も近い遊び人になるのか?
「シャー!正確に言うと、遊び人では無いんだよ。僕、人間でなくてバケモノだからね」
バケモノ…どう言葉を掛ければいいんだ?
「お父さんはお父さんだから」
アルが父さんに抱きついた。
「ねぇ、お父さんの種族って、何になるの?」
「鬼と天使のハーフだよ」
鬼と天使のハーフ?鬼は闇属性で、天使は聖属性だったな。
「シャー、正解だ。僕は聖闇属性の身体を持つんだよ」
弱点になりそうな属性が無い気がする。聖剣で斬りつけても、魔属性では無いのでアドバンテージにはならないし。
「父さんの弱点って?」
「決まっているだろ?好きな女性の一言だよ」
バケモノの割にメンタルが弱いのが父さんのようだ。