悪役令嬢、学校へ行く。②
「申し訳ありません…取り乱しました。制服を持ってまいります。」
「はーい」
カナリアちゃんが通ってるジョセフィーヌ学園は、制服はあるが、校則は無いに等しい。
だ、が!
カナリアちゃんは、なんと、ワイシャツのボタンを上まで全部きっちりしめ、リボンはぴったりつけ、ブレザーは開けず、カーディガンは黒、そしてスカートは膝下10センチで白タイツ…って、は?人間捨ててない?華の15歳がそんなクソダサい格好ある?
制服は着崩すものであり、校則は破るもの。
斎藤加奈。座右の銘。
「…カナリア様。制服をお持ちしました。」
まずい、引かれている。1人で仁王立ちしながらブツクサ言ってるの聞こえたっぽい。恥ずい。
「…ありがとう。」
自分で制服を持つと、アンナは驚いた顔をした。
「ご自分でなさるのですか?」
まずい、そういえば、カナリアって自分でなにもできない系女子だった。いやでももう感覚は日本にいた頃に戻っちゃってるし、人になんでもっていうのはなぁ…
「えぇ、何事も勉強ですもの。1人でやりますわ」
するとアンナは目を見開いた後、嬉しそうに笑った。
「良いことです」
ワイシャツは第2ボタンまで開け、この無駄にナイスバディな胸を強調する、そしてリボンは少し下に下げてつけ、スカートは予備の短いやつに変えてもらい、3回おった。膝上20センチをキープ!カーディガンはそこら中を探し回り見つけた、薄い茶色。私が前世で使ってたやつと瓜二つ。そして白タイツではなく、黒の短くリボンのついた可愛い靴下、そして最後に前を開けてゆったりブレザーを着る。
か・ん・ぺ・き
どっからどうみてもリア充JK。ヤバイじゃん。良き良きじゃん。
またアンナが悶えてる。無視しよう。
「髪の毛はどうなさいますか」
「あー自分でやるわ、金髪縦ロールはもうやめるわ」
そして私は化粧台に戻り、最後の仕上げにとりかかった。
_
7時55分。朝食まであと5分、家族はみんな席に着いたらしい。
少し緊張する。
よし。
ガチャ
「おはようございます、お父様、お母様、ルーク」
この神メイクとチャラ制服ででニコッと笑った。どうだ!これで落ちない奴は居ねえ!…多分
「「「・・・・・・」」」
え。
なにこの空気。お父様もお母様もルークも何人かいる使用人も全員口開けてる、おら、ルーク、攻略対象なのにそんなアホそうな顔すんな。
「え、えっと、ご心配かけてごめんなさい。もうすっかり元気ですわ」
するとやっと正気を取り戻したのか、お父様に表情筋が仕事し始めた。
「そうか、なら良かった。私の大事なカナリアに何かあったら辛くて死んじゃうからね」
王都の女が全員惚れそうな笑顔でお父様が微笑んできた!ナニコレ!美形ビーム?!ムリ!ツライ!
「えぇ、今日のカナリアはとても美しいわ…本当に素敵よ。少しスカートが短い気もするけど…」
お母様も若干泣きそうになりながら、嬉しそうに言ってくれた。私今までどんだけやばい女だったの。
「ね、姉さん…いまルークって…、」
ハッ!そういえば、ルークのこと5年くらい無視してたんだっけ!ごめん!こんなイケメン無視するなんて!
「わたくし…倒れてから色んなことを反省しましたの…。我儘ばかりで、家族に迷惑かけて…使用人の人にも沢山嫌な思いさせて…許してほしいなんて言わないわ。これからはちゃんと変わるわ、この家にふさわしいように、頑張る。ルーク、今までごめんなさい、あなたの才能に嫉妬してたの。本当は私はルークが大好きよ。あなたとは、これから仲良しでいたい。今はダメかもしれないけど、少しずつで良いから、前みたいになれないかしら」
我ながら調子いいな…って、泣いてる!?お父様!?お母様!?ルーク!?それに使用人の人まで!?
この家甘く無い!?1回の謝罪でそこまで泣ける!?やばい!!罪悪感がやばいっ!!
「姉さんっ…!全然良いんだよ!姉さんの気持ちに寄り添ってあげられなくてごめんね…!これからはずっと2人でいよう。愛してる。貴方のために僕は生きるよ。だから姉さんも僕のために生きて」
…ん?
「え、えぇ、ルーク、私も愛してるわ」
「えへへ。嬉しいなぁ。姉さんに愛してるなんて言われたら、誰にも見せたくなくなっちゃうなぁ。いつも可愛いけど、今日は特に可愛いね。姉さん、僕の部屋で待ってなよ。学園もやめて。僕が一生養い続けてあげるね。だって僕が姉さんのこと世界で一番愛してるんだもの。そうでしょ?姉さん。」
…。
…え。
…もしかして、私は、
…義弟のヤンデレスイッチを押してしまったかもしれません。




