悪役令嬢、学校へ行く。①
「嘘でしょ…。」
固有スキルが通販であることに気付いた私は、とりあえずいつも使っている化粧品類を買ってみた。
そしたら、少しの光とともに紙袋が現れ、中にお目当ての化粧品が入っていた。
近くにあった財布を確認すると、5万Gくらい入ってた気がするが、1万Gくらいになっていたから、この世界のお金で日本の通販が使えるらしい。理屈はわからない。解せぬ。
ちなみにこの国のお金は、円ではなくG、だけど相場も数え方も日本と一緒だ。さすが乙女ゲー。便利だ。
カナリアの固有スキルは、私の転生チートのせいでAmozonだったらしい。ある意味めちゃめちゃ使えるが、前世を思い出してないカナリアちゃんにとってはなんのこっちゃ、だ。
神様も殺生な…。
「カナリア様、準備に参りました。」
いつのまにか7時近くになっていたらしい。Amozonのせいでだいぶ時間をロスしてしまった。
JKの朝は戦争なのだ。
「あ〜お願い〜ありがとーう!」
とりあえず私はベットから飛び降り、部屋についてある洗面所に向かった。いいな、前世みたいに朝から兄貴と洗面所の取り合いする事もない。サイコー。
「え!か、カナリア様!?やっぱり、クリスが言ってる通り、今日は変なのかしら…」
メイドの言葉は、聞こえないふりをすることにした。
…今までの私ってどんな感じだったっけ…。
とりあえずハト○ギ化粧水と洗顔と美容液とコテを買い、JKの時にやっていた簡単7分スキンケアを終わらせてからアンナの元に戻ってきた。
「カナリア様、肌がモチモチですのね。」
メイドのアンナ(22)(独身)は、私の肌を見てビックリした。そりゃそうや。日本製やぞ。
「え、そうかしら。学校…じゃなくて学園のお友達に王都で流行ってる化粧品と美容液を分けてもらいましたの。」
っていう設定で通そう。流石にAmozonなんてオーバーテクノロジーすぎるし、商売とかやるつもりもないしね。自分のために使おう。Amozon、末長くよろしく頼む。
「そうでしたの、では化粧品をお貸しください」
まずい、アンナは前の私の希望通り、あのクソださメイクをしてしまう。それはまずい、あんな塗りたくっていればok!みたいなメイク、学校にして行ったら死刑宣告だ。居場所無くなる。JKって結構シビアだから。マジで。
「いえ、メイク方法を教えてもらいましたので、今日は自分でやりますわ」
「カナリア様が、ご自分で?」
アンナ、めっちゃ驚いてる、いやまぁそうだよな、今まで何人にメイクさせても、納得するのはごく僅か、気に入らなければすぐ罵倒し、カナリア自身のセンスは最悪。
そんな悪役令嬢が自分でメイクとか、確かにありえない。
だがしかし、前世を思い出した今、メイクの楽しさを知ってしまっている。
メイクは自分でやるから面白いのだ。
人にやってもらうのもそりゃ楽しいけど、私は絶対、自分でやりたい。
だから、公爵令嬢といえど、絶対私がやる。
「…わかりましたわ。今後の為に私はそばに控えさせていただきます。」
「はいよー」
部屋にある趣味悪いピンクの化粧台の前に座り、私はいつも通り軽く髪を結び、近くにあったバレッタで前髪を止めた。
公爵令嬢になってまでもプチプラの下地を塗るのは、どうかと思うけど、やっぱり人間慣れている化粧品がいいよね。
そしてここからは怒涛の追い上げを開始する!
JKの朝を舐めんなよ!
色の薄い眉毛の形を整え、茶色目のアイシャドウをカナリアの濃い顔に合うようにつける。
韓国コスメで涙袋を書き、プチプラのアイライナーで濃くならないくらい程度に塗り、まつげをあげてマスカラをしてあとは整えて、デパコスの口紅を塗り…完成。
…。まじか…。
いや…絶対化けると思っていたが、予想を遥かに超えていた。
くっきりとした平行二重に、カラコンぶち込んでるような色素の薄い瞳、高い鼻に形の良い唇、そしてなんといっても顔の小ささ、前世の私と比べるのもおこがましいくらい、カナリアは可愛かった。
って思うと今までのツタンカーメンメイク、相当ヤバいだろ。カナリアの素材を活かすためにJK時代に比べて少し薄メイクだが、これはもう国宝レベルじゃ無いだろうか?
鏡を見ながら自分には見えなかった。
「…カナリア様…!と、と、とても美しいです…た、食べちゃいたいっ!」
アンナが顔を真っ赤にして悶えている…。えっと…大丈夫かアンナ。




