悪役令嬢、前世を思い出す。③
あの日、前世を思い出して気絶してから、私は3日間寝込んでいたらしい。4日目に起きた時は凄かった。パニックになる私と、泣きながら抱きしめてくる、今世のお父様とお母様、眼福すぎる美男美女に抱きしめられた私はまたもや昇天するとこだった。
加奈はミスコンに選ばれるくらい容姿は整っていたが、母親も父親もそれなりに老いていたし、父親に関しては、40代を超えたあたりからポッチャリし始めたので、こんな人外レベルの美男美女に抱きしめられるのはめちゃんこ嬉しかった。
前世の記憶と今世の記憶でパニックになっていた私は、とりあえずすぐ寝た。結局4日目もまともに動かず、ずっと寝ていた。
そして5日目、今日である。
時刻は6時、カナリアが毎日起きるのは7時だから、1時間早く起きてしまったらしい。
「今日から学校かぁ…。嫌われてる状況とか初めてすぎて怖いんだけど」
もう既に、カナリアの性格は前世の加奈に奪われていた。いっそ、昨日まで日本にいたくらいの感覚さえある。
トントン
「はぁい。」
「…!?カナリア様、お目覚めになったのですね…」
専属執事、クリス。同い年。私が起きたのめっちゃ嫌そう。いやまぁ仕方ないんだけど、カナリア、っていうか私は、事あるごとに使用人を罵倒してたから、私がいなかった4日間はさぞパラダイスだっただろう。ちくせう。
…うーん。しかし、イケメンだ。流石乙女ゲームだ、執事1人に対してもイケメン具合がレベチだ。パネエ。あの執事に世話されるなら、悪役でもなんでもなってやろうじゃん!くらいの気持ちもあるマジで。
「ご心配おかけしました〜ありがとね、クリス!」
ニコッ♡まぁとりあえず媚び売っとこう。今世の私はライバル悪役令嬢だけあって可愛いからね、今までは似合わない厚化粧とクソみたいな性格のせいでブスに見えただろうが、カナリアのスペックを活かしたら、相当化けるだろう。…多分。
「〜〜〜〜〜〜っ!」
なんだその驚愕の顔は。悪りぃか。そんな悪役令嬢の笑顔はヤバイか。まずぃ。計算が狂った。
「え、えっと、クリス、今日から学校に行くから、お父様とお母様に伝えといて…?」
必殺!上目遣い!これで前世のイケメンサッカー部、蓮クンを落としたんだ!
「…っ!はい…。」
え、顔真っ赤。なに?ちょっとまって、この執事、チョロくね。
「…あとでメイドを寄越します。朝食は8時です。」
少し顔を赤くしたチョロ執事クリスはそそくさと部屋から出て行った。イケメンサッカー部蓮クンよりチョロいぞ?大丈夫か?
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カナリアの我儘が始まったのは、10歳の時だ。
この国の決まりで10歳になったら、貴族も平民も全員自分のステータスを教会に測りに行く。
大体の場合、貴族は魔力が高く、平民は低い、公爵家や王族クラスになると、固有スキルを持って生まれる。
ラインボルト家も代々様々な固有スキルを持って生まれてきていた。
歴代でも特に優秀とされたお父様と、侯爵家の生まれで、高い魔力を持つお母様に生まれたカナリアは、幼い頃から優秀で真面目でとても優しい子供であった。
だから、周りの大人はカナリアは魔力が高く、固有スキルも素晴らしいものを持っていると思っていた。カナリア自身、その自信があったし、それが当たり前だと思っていた。
だが、実際、ステータスにかかれていた魔力は平民より少し低く、固有スキルはあったものの、用途が分からず、協会にも見たこともないスキルだと言われた。
カナリアは、その事実を受け止めることが出来なかった。努力することをやめ、塞ぎがちになった。
13歳になると周りの使用人を罵倒するようになって、15歳になり学園に入ってからはアンドレア殿下に執着し、今に至るのであった。
カナリアの父と母は、そんなカナリアを叱ることができなかった。周りの期待に押し潰され、殿下のことを拠り所にする我が子が可哀想で仕方なかった。
1人娘だからと親戚から連れてきた、カナリアの義弟のルークは、魔力も高く固有スキルも剣術という素晴らしいものだった。
幼い頃はいつも一緒にいた2人だったが、その時からカナリアは、一切ルークに近寄らなくなった。
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「って重いわ!!!!重すぎ!!!!いや、私の話だけど!!!!カナリア重すぎ!!!!」
あんなに期待されて、いざ、測ったら魔力も少なく固有スキルも使えないなんて…
前世を思い出してからは、冷静になれるけど、こんな悪役令嬢になるまで心が病むなんて。本当に真面目だったんだろうなぁ。
結局私の固有スキルってなんだったんだろう?
…。
…?いやまてよ。
固有スキル…って確か…。
「…通販、オープン」
そこには、いつも使っていたAmozonの画面があった。
「…って!ハァァァァァァぁぁぁ!?なんでAmozon!!しかも日本語で通販って!!転生チート!?これがあの転生チートなのおおおおお!?」




