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悪役令嬢、前世を思い出す。②




「まじでどうするよ…」


塩顔イケメンを間近で見たことで、王道悪役令嬢こと、カナリア・ラインボルトは前世を思い出した。

否、どちらかというと、今世のカナリアを追い出すくらいの勢いで、前世の性格や記憶が戻ってきたのだった。




前世の名前は、斎藤加奈。日本に住む女子高生。

偏差値57の都内の共学、校則は緩く、全体的にチャラい。通称、ウェイ南。

その中でも、2年連続ミスコンに選ばれ、バスケ部の副部長であり、友達が多く、サッカー部にイケメンの彼氏がいた加奈は、学校の誰もが認めるリア充だった。

だけど17歳のバレンタイン、彼氏と池袋で遊ぶ予定だった日、池袋駅に着くことなく、無差別殺人に巻き込まれ、呆気なく死んだ。



「…はぁぁぁぁぁぁぁ。運悪いっていうか…なんていうか。」


前世はあんなにもキラキラしていたのに今世はなんとまぁ悪役令嬢である。


「こんなんだったら、かこちんの話、まともに聞いとけばよかったぁ…」


加奈は、生まれてから17で死ぬまで、乙女ゲームもラノベも全くと言っていいほど興味がなかった。当たり前である。現実に彼氏がいたんだもの。

それなのになぜ今世ですぐに、乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと分かったか。

それは加奈の幼馴染、かこちんのおかげであった。



_




「かこちーん。次の土曜日、中学のメンツ集まってプール行くんだけど、かこちんどうする?」


17歳の夏、部活が終わった後、加奈はいつも通り、かこの家でダラダラ過ごしていた。


「ムリ」

「え、なんで」


土曜日にバイトが無いと知ってた加奈は、かこちんに断られたのが少し意外だった。


「よくぞ聞いてくれた!土曜日は、〝薔薇と学園の彼方〟の発売日なのだよ…!フフフフフ…ゲームの予約が始まってからというもの毎日毎日この為だけに生きてきたようなもの…。そして土曜日からは夏休み…!バイトのシフトも入れてない…!速攻オールクリアよ!」


「へーどんなの?」


加奈は乙女ゲームにもラノベにも興味がなかったが、かこちんが話す話はとても好きだった。正反対のかこちんと加奈が、今でも仲良いのは、お互いに性格や趣味を尊重し合っているからだった。


「めっちゃ王道ものなのよ。庶民だけど光魔法を使えることによって伯爵家に引き取られた主人公フローリアと攻略対象が恋愛する話、もちろん私の推しは、アンドレア殿下だけど、今のところ1番期待されてるのは悪役令嬢カナリアの義弟ってとこかな。」


「へ〜、悪役令嬢が姉なのに義弟はまともなの?」


「なんか、昔は可愛がられてたのに、どんどん優秀になるにつれてカナリアから嫌がらせをうけるようになったのよ。大好きだったお姉さんの記憶と、悪役令嬢のお姉さんとの間で、どんどん心が歪んでいったから、ヤンデレ属性」


「なるほど、そりゃ期待だわ。」


「ね。」




_



記憶はそこらへんで飛んでいるのだが、まぁそれだけでわかる。私、絶対絶命。

かこちん曰く、だいたいの悪役令嬢は死ぬか国外追放か修道院か娼館行き。

悪役令嬢が前世を思い出して愛される話もあるらしいが、なんせ私が前世を思い出したのは今だ。

もう入学して半年も経っている、悪役街道を順調に進んでしまっている。

不幸中の幸いだったのが、カナリアが義弟を本格的に虐めるのは、学園に入って2年目から。今は私が一方的に嫌味を言うくらいで、義弟も病んでは無いと…思う。




「まー…でも、なんとかなるよね!」



こんな絶対絶命な状況でも、リア充JKは強かった。



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